なぜ世界各国の神話とギリシャ哲学は違うのか〜宇宙創成(上)

2020.03.09 (月)

 

「君は小宇宙を感じたことがあるか?」

 

 

これはアニメ聖闘士星矢の次回予告の後に流れる、主人公星夜のセリフである。毎回、アニメ聖闘士星矢はこのセリフとともに、余韻を残しつつ終わっていた。「小宇宙」と書いて「コスモ」と呼ぶ。「聖闘士」と書いて「セイント」と呼ぶ。「聖衣」と書いて「クロス」と呼ぶ。

 

 

僕の祖父がまだ生きていたころ、祖父は新聞のテレビ欄の「聖闘士星矢」の文字を見て、「せいとうしせいや」と読んでいたのだが、それが当時の僕には意味がわからなかった。なぜ「セイント」でなく「せいとうし」と読むのか。なんのことはない。祖父は極めて普通に「聖闘士星矢」の文字を読んでいただけだ。

 

 

聖闘士星矢の面白さの一つは、宇宙や星座や神話をテーマにしたことだと言われている。聖衣は星座をモチーフにしたものだし、聖闘士は遥か神話の時代からの職業(?)だし、必殺技は宇宙からインスピレーションを取ったものが多い。流星拳とかスターダストレボリューションとか。

 

 

この壮大さが、聖闘士星夜という闘いもののストーリーに奥深さをつけ、絵は血なまぐさいのに、どこか優美なお話、それこそ神話を読んでいるかのような高揚感を読者にもたらすのだ。

 

 

さて、僕は哲学関係の本を読む際に、いつの頃からか気になっていたことがある。それは、「神話とギリシャ哲学の違いは何だろう」ということだ。というのも、紀元前500年頃にソクラテスが出てきた辺りで、古代ギリシャ哲学は始まったとされている。が、プラトンの対話編を読むに、どうもその時代の人たちは神話の神々を信じていたようだ。

 

 

プラトン対話篇の「饗宴」では、男たちがベッドに寝ながらエロ談義を花を咲かせるという真面目なストーリーが展開されている。登場人物のひとりひとりが、エロスについて持論を展開させていくのだ。もっとも、この場合のエロスとは神話に登場する愛の神エロスだが。

 

 

神話は世界各国で花開いている。古代中国でもあるし、北欧でも神話があるし、もちろん日本にも神話がある。おそらく神話というのは、どこの世界にもあるものなのだろう。古代の人々が、自分たちの身近なものを題材にして、「世界はこう作られた」というお話を好き勝手に作るったのだ。もちろん、今の僕たちからすると「なにそれ? ぶっ飛びすぎ。さすが古代人の妄想だね」と思うようなものばかりだが。

 

 

けれど、紀元前500年ごろから始まった古代ギリシャ哲学は何か違う。世界各国に散らばる神話と違って、それは確かに今の僕らから見ても「遅れ」を感じさせないものなのだ。もちろん、学校で科学を勉強した僕らからすれば「間違っている」のはわかる。

 

 

が、それは他の地域で花開いた神話とは異質なものだ。今現代の科学に通じるもので、今の常識をさかのぼっていけば、間違いなく「古代ギリシャ哲学に通じる」と思わせるものなのだ。

 

 

けれど、どうしてこんな現代的な雰囲気をギリシャ哲学には感じるのだろう。他の神話とは違う何か。「万物の根源は水だ」と言ったり、「宇宙は回転から始まった」と言ったり。この科学的な、現代的な感じは、どうして神話とは違うのだろう。

 

 

以前、「フェルマーの最終定理」を読んだときから、僕はサイモン・シンの虜になった。僕は本というものに対して崇高さを感じているし、本を作り出すすべての人、本に携わっているすべての人をリスペクトしている。文筆家の人なんて憧れである。が、もしも本に「読む価値のあるもの」と「読む価値のないもの」があるのなら、サイモン・シンの本のようなものこそが「読む価値のあるもの」だと思っている。

 

 

それほどまでにサイモン・シンの本は価値が違う。面白いし、確実に血肉になる。

 

 

今回読んだ宇宙創生のなかで、この神話とギリシャ哲学の違いが明らかになっていた。ここまでピッタリと疑問を解決してくれるように言葉を紡がれると、なんだか著者、というよりは翻訳家の青木さんに驚異すら感じる。

 

 

17ページに「神話にもいくつかの共通する特徴がある」と書いてあって、「おおっ! そこだ」と思った。それこそが、なんとなく僕が思っていた疑問、開けられずに閉じられている扉を、開ける道に通じる文章だったからだ。

 

 

「(神話は)宇宙創造を説明するにあたって決定的な超自然的な存在を、少なくともひとつは必ず持ち込んでいる」

 

 

なるほど、言われてみればたしかにそうだ。神話には、大地を作った巨人だったり、国を作った神だったりが存在する。それに対してギリシャ哲学には超自然的なものが存在しない。ギリシャ哲学では、「太陽はガスが燃えてできた火の玉だ」と言ったり、「大空に開いた穴から天の火が漏れている」と言ったり。それは、ギリシャ神話の太陽神が云々という想像とは、明らかに異質なものだ。正解ではないが、合理的に考えられる範疇である。

 

 

さらにどうしてこういった合理的な考えが古代ギリシャで出てきたのかというと、それは、アイディアを批判し、比較し、改良したり捨てたりする雰囲気があったからだそうだ。古代ギリシャの世界では、色々な説を吟味して、違うものは「違う」と言い、「それよりもこっちの方がまともじゃない?」と説得力のある説を選ぶ文化があったのだ。

 

 

ギリシャ哲学以外の神話というのは、宗教の教えのようなもので、信じなければならないものだった。「なんかおかしいな」と思っても、口に出して「それはおかしい」ということが、雰囲気的にできなかったのだ。

 

 

神話と古代ギリシャ哲学の違いは、「議論できたかどうか」だったのだ。「議論をする」という土台が、神話ではない、科学に通じる哲学を花開かせた。自分の言うことを相手に無理に信じ込ませたりすることなく、相手の本音を聞いて、自分の考えをアップデートする文化が、現代の科学に通じる土台をつくったのだ。

 

 

僕は神話と古代ギリシャ哲学の違いに注目してこの本を読んだが、この本の大本は、「どうやって宇宙はできたのか」「現代の宇宙観はどうやって出来上がったのか」「そこにはどんな人たちが関わってきたのか」である。きっと読者の期待を裏切らない、面白い本である。ぜひおすすめする。

 

 

 

 

 


 

 

 

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