非行と子どもの家庭環境
1 子どもが非行に走る家庭の共通点とは
ニュースや新聞を見て、世の中の人の多くがが想像を膨らませると思います。「この犯罪の背景には、どんなものがあるのだろう」、「この犯罪に関する統計はどんな風に集められた数字だろう」、「あの裁判の判断には納得できないが、世の中の人はどう思っているのだろう」、そして「世の中の非行少年の家庭環境はどうなっているのだろう」。
だけど大部分の人が、これらの膨らませた想像を結論まで持っていくことはできません。「どうなっているんだろう」で終わってしまいます。調べようと思えば調べられるのかもしれませんが、おそらく膨大な労力が必要でしょう。
犯罪の背景や、世の中の統計も情報として伝わってくるのかもしれませんが、それもやはり人やメディアを介してのものであって、直接自身で手に入れた情報でない以上、疑問や不信感が残るはずです。犯罪に詳しいその道の研究者が、「犯罪の背景には◯◯がある」といったとしても、その言葉はその研究者の言葉であり、その研究者の考えです。
自分は少なからず、疑問を持った後にその結果を自分の目で見て、それに対してどう思ったのかまで経験しています。犯罪や非行といった、おそらく人間の心理に関わるような、誰でも疑問に持ち、興味を持ってしまう現象の背景に接してこの目で見てきた経験があります。
非行に走る子どもの家庭環境は、実に様々です。「こういう家庭だから非行に走る」とか「こういう家庭だから子どもは非行に走らない」というイコールで結ばれるような方程式はありません。
その中には「こういう少年の家庭環境は、やはりこうなのか」と、予想ができて、実際に会って納得できるものもあります。しかしある時は「あ、意外とこんな家庭にいるのか。」と意外性を突き付けたれたこともあります。またある時は「世の中にはこんな家庭があるのか。」と、自分の想像の枠外の家庭環境を突き付けられたこともあります。
それでも実際に非行少年やその家族と会い、家庭に赴き話す中で、「非行少年には、割りかしこういう家庭が多い」という、見えてくるものがあります。
(1)規範意識が欠如している家庭
まず、規範意識が欠如している保護者の家庭があげられます。親が素行不良であったり、社会性に欠ける親であったりするケースです。人に威圧感を与えたり、下品に目立つことをかっこいいと思っている親。非行少年の家庭環境には、このような親がいる場合が多いのです。
このような親がいる家庭で育つと、歯止めが利かなくなるのだと思います。本来、他者と比較して自分を優位に見せたいというのは、人間の本能です。「自分をかっこよく見せたい」とか「向こうの家庭より、うちの家庭のほうがいい」という思いは、誰しもが持っているものです。
だけど社会で生きていく中で、それらの思いは削らなければなりません。自分がいかに金持ちかとか、自分がいかに格好いいかを周りの人に触れまわっていたら、嫌われてしまいます。
人と付き合うなかでは、自分を良く見せること以上に相手を持ち上げることが必要です。相手を持ち上げることが巡り巡って自分を優位にさせてくれることを、社会で生きて行くなかでみんなが勉強します。角がとれていくのです。本当はみんな自分に素直に、自分をアピールして生きたい。だけど、自分本位で考えていたら自分の立場が悪くなります。
人権についても、社会の中で勉強していきます。人にはそれぞれ権利があり、権利は不当に侵害されるものではありません。そうやって人々が法や自由を学び、現代社会はうまく歯車が回っているのです。
相手を身体的に傷つけたり、精神的に追い詰めたりしてはかわいそうとも思います。だから、相手に不快感を与え自分を必要以上にアピールするような行いは徐々に抑えることを、社会の中で学ぶのです。
だけど親の規範意識が低いと、子どもは歯止めを学ぶことができません。「ここまでやっていい」という限界の基準が、親の基準になってしまいます。結局は親がしていることを、子どもは繰り返すのです。
規範意識が低い親は、他人に威圧感を与えることを好みます。大げさな装飾品、派手な車、横柄な態度。
「かっこいい」との判断基準が難しいところではあります。人気と実力があるスポーツ選手が、派手で威圧的な格好でメディアに出る姿をみると、本当に「かっこいい」と「規範意識がない」の判断基準が難しいと思います。
基準スレスレのところをどこに持ってくるのかは難しいところです。はっきりとした線を引いて「ここまではいい。ここからはダメ。」なんてできません。だけど言えることは、規範意識がない方に大きくぶれてしまったら、まちがいなくそれは悪であるし、子どもにも非行という悪い影響を与えます。
これらのものは、刑法や各種の法律で明記されていたり、明記されずとも、道徳や倫理として、社会に受け継がれているものです。
これらのルールを守ることを規範意識と呼びますが、多くの非行少年の家庭では、規範意識が低いのが実情です。
(2)家庭内不和の家庭
家庭内不和で両親が頻繁にケンカしていたり、血の繋がっていない不仲の父親がいたり、家庭をうまく回せない行き詰まったシングルマザーの家庭では、子どもが非行に走りやすいです。
確かに世の中は、きれい事だけでは済まされません。一度好き合って結婚したにも関わらず夫婦仲に亀裂が入り、頻繁にケンカをするに至るには相当に複雑な過程を経ているのだろうし、離婚してシングルで子どもを育てる道を選んだ人には、そうせざるを得ない理由があるのでしょう。さらに子どもとの血の繋がっていない人間を子どもの親として迎えるには、相当悩んだ末の選択であったと思います。
だけど多くの非行少年の家庭環境を見ていると、父親がいて、母親がいて、両親の中が良くてその間に自分がいて、というのが理想なのだと思います。型にはまった家庭でないと、やはり無理がともない、家庭に歪みが出てきてしまいます。
子どもは離婚を望んでいないのに、子どもの気持ちを無視して、親が勝手に離婚してしまったり。再婚した父親と子どもが不仲で関係を再構築できないほど壊れていたり。そこに子どもは「なんでこうなんだ」と反発してやりきれないものを募らせてしまいます。家庭の歪みをうまく乗り越えて適応できればいいのですが、社会性の未熟な子どもがうまく適応できるものではありません。
積もった反発の矛先は自分や家庭、学校や社会へと向いてしまいます。親から叱られて家出、むしゃくしゃして学校の友達とケンカ、警察官から注意されて世の中が嫌になる。という風に、反発が反発を招き、より大きな反発へと発展します。
(3)貧困な家庭
貧困といっても、戦後日本のような「食べ物を買えなくてお店の商品を盗む」ケースはありません。これも上記説明した家庭のように、どこか生活に歪みがあるのです。ただその原因が、家庭不和ではなく、貧困なのです。
経済的に余裕がないと、その分を補おうと無理をするため、やはり生活に歪みがでます。経済的な負担を補うため、母親が夜遅くまで仕事をして、帰って来るのは夜9時。それから子どもにご飯を食べさせて寝かせて・・。なんてことをしていたら、余裕のある生活なんてできません。当然、親には子どもをしつける余裕だってありません。子どもにとって一番身近な存在であるはずの親から、社会について学ぶ機会がないのです。
2 子どもの非行を防ぐための家庭での3つのポイント
警察官をしていると、いろいろな家庭を知ることになります。警察の仕事をする中で知る家庭の多くは、マイナスの方向に針が振れている家庭です。
「110番通報」とは「SOS」です。人生がうまくいってプラスの方向に針が振れている人は、まず110番通報をしてきません。それは家庭内の問題も例外ではないのです。
110番通報で駆けつける多くの家庭は、うまくいっていない家庭です。それも、ある程度のレベル以上の、です。
110番に至るには、ある程度我慢している期間もあるからです。ある程度我慢して、もう我慢できない…というところで多くの人は警察を呼びます。警察官をしていて知った家庭の多くは、崖っぷちだったのです。
駆けつけた多くの家庭を思い返すと、やはり共通点は見えてきます。これらの共通点は、当たり前といえば当たり前のことなのですが、当たり前すぎて誰もしっかりと認識していないのではないかとも思うのです。
子供が非行に走るかどうかを問い詰めていくと、どうしても「家庭」と言う単位に落ち着きます。家庭という考えが崩れて様々なライフスタイルが見直されている昨今ですが、まだまだ子どもに多大な影響を与えるものです。
非行を防ぎ、素直な子どもに成長させる基地として、「家庭」という単位は未だにないがしろにできない存在なのです。
1 経済的に無理をしない
まず、経済的に無理をしないことです。所得の大きい少ないに関わらず、身の丈にあった消費をするべきです。経済的に負担がかかると、他の場所でも歯車が狂い始めます。
お金を無理できないとなると、体も不健康になります。考えにも余裕がなくなり、視野が狭くなります。精神的にも不安定になります。
少し具体的に言うと、住まいにお金を掛けるのは控えるべきでしょう。家人が身の丈に合わない家に住んでいる家庭は、家に入った瞬間にわかります。住人と家が不釣り合いなのです。
確かに良い家は魅力的です。家は生活の土台なので、憧れが出るのもわかります。ですがその家に住むためにウン千万の借金を背負うことが果たして見合うことなのかどうかです。
時代は次々に変わります。新しいものはすぐに古くなります。新しい価値観、新しいライフスタイルは、あっという間に出ては消えます。隆盛が激しいものに資源を集中投資する事は正しいのか、後から振り返って後悔しないか、今一度考えるべきなのでしょう。
2 怒らない
次に、怒らないことです。子どもにも怒るべきでないし、夫婦間でも怒るべきではありません。穏やかに、おおらかに、寛容的に、が望ましい家庭です。
怒っている人が家庭内いると、空気がよどみます。マイナスの要素が家庭に入り込むのだと思います。
他人の家庭を見ていて思うのですが、しつけで怒るべきではないのだと思います。子どもを怒れば、その子どもの行動は治りますが、その分、必ず歪みが出てきます。子どもの心が親から離れたり、子どもの集中力がなくなったり、子どもの気持ちが不安定になったりです。
短絡的に怒って子どもの行動を変えようとしても、失うものの方が大きいはずです。ゆったりと構えて、少々のことには目をつむる、心の広さが必要なのです。
3 リテラシー
最後に、リテラシーを身につけることです。リテラシーを身につけるには、まずは知ることです。どのようなリテラシーがあるのか、どのようなリテラシーが自分たちに必要なのか、どのようにすればリテラシーが身につくのか。それらを知らなければ始まらないので、情報に敏感にならなくてはなりません。
アンテナを高くして、新しい情報、多くの情報、それまでの自分の価値観とは異なる情報を得ることに敏感になることです。いつまでも古い価値観を持ったまま「自分にはこれが合っている」「自分にはこれしかない」と思い込んでいては、非常にもったいないです。
例えば買い物です。今は中古市場が非常に活気付いているようです。中古品に対する汚いなどのネガティブなイメージは、どんどん薄れています。状態の良い安価な商品が中古市場には出回っています。アプリなど、自分にあっている中古商品を簡単に見つけられる方法も出回っています。
「子どもに買い与えるものを新品で揃えなければならない」という発送を捨てられない人が未だにおり、多大な損をしているように感じるのです。
例えばインターネットに関する知識です。「個人情報を抜き取られる」「漠然と信用ならない」などの不安から、現金主義だったり、現物を見なければ安心できない人が未だに多い現状です。
インターネットに関する少しの知識があれば不安が後退し一歩踏み出せるはずなのに、知らないが故に踏み出せないのです。インターネットやモバイルを使いこなすことは、メリットの方がデメリットを上回ることに未だに懐疑的な人が多いのです。
知らないが故に不便、知らなかいが故に損、知らなかいが故に我慢、をしている家庭が非常に多いです。こだわりを捨て、次々に自分の価値観を変えていきましょう。その過程で、それまででは出会えなかった新しいものと出会えるはずです。
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