電子書籍出版「人に優しくなれる発想法」
今回、電子書籍で本を出すことになりました。ぜひ多くの人に読んでいただきたいと思います。タイトルは、「人に優しくなれる発想法」です。想定されると読者は、主に子ども相手にイライラしてしまうお父さんお母さんですが、仕事やプライベートでのイライラする人間関係が気になっている方にも読んで欲しい内容となっています。
警察官が、イライラの感情という素朴で身近な、ともすれば大きくなりがちな分野で語ることはないのではないでしょうか。というのも、警察官は感情をなくして機械的で形式的な仕事をする人間だし、そうであることが求められがちな職業だからです。この本では、元々警察官をやっていた人間が、その時の経験を元に、実は警察官に身近な感情であるイライラについて、そのイライラをなくす考え方を紹介します。
実は、警察官にとってイライラというのは、最も身近な感情です。というのは、警察官がイライラの矢面に立つ仕事だからです。職務質問をすれば「どうして名前を聞かれるんだ!」とすごまれます。車の取り締まりをすれば「今のは違反じゃないだろう!」と文句を言われます。町の中をパトロールして警察署に帰れば、「警察官の態度が気に入らない」「警察官として如何なものか」と苦情が入ります。
警察官は、スポーツでいうと審判と同じで、フィールドにいる人間のアラ探しをする仕事です。フィールドでプレーしている人間にとって、「アラがある」と言われるのは心外だし、プレーを制限されるのでアラは指摘されたくありません。当然、アラ探しをする審判の存在は邪魔になります。スポーツマンシップという言葉でアラ探しにも従うことが健全だと広まっているスポーツの世界はまだいいのかもしれませんが、現実の社会にはスポーツマンシップなる言葉はありません。スポーツマンシップに反する行為も、現実の社会では許容されているし、スポーツマンシップに則る行為かそうでないかは線引きがはっきりしていないので、警察官に対してイライラをぶつけることも、決して稀なことではないのです。そもそもスポーツマンシップという言葉があること自体が、審判がイライラの対象であり、イライラの矛先に立つ存在だという証かもしれません。
イライラという風当たりの中で仕事をしていると、自分たち警察組織の中にも、いつの間にかイライラは根を張ります。感情が伝播するように、イライラは警察組織の中にも蔓延するのです。パワハラ、マウンティング、八つ当たり。年々、「風通しのいい職場環境を」という声は高くなっていますが、それでもまだまだ「厳しさこそが愛情だ」「うむを言わさない上下関係こそが警察官のアイデンティティーだ」という雰囲気はぬぐえません。警察官は外でもイライラを受け、さらには自分たちの組織の中でもイライラを発し、受けているという、イライラの循環の中で仕事をしている人たちなのです。
今回、私がイライラについて書こうと思ったのは、実はこのイライラこそが、社会から犯罪をなくし、スポーツマンシップにのっとったプレーしやすい世の中を作るために必要だと考えたからです。
ハインリッヒの法則というのがあり、「1件の大きな事故・災害の裏には29件の軽微な事故・災害があり、29件の軽微な事故・災害の裏には300件のヒヤリ・ハットがある」とされています。これは労働災害における経験則であり、工事現場などの事故や災害が発生しそうな現場で言われているものですが、これは犯罪にも言えることだと私は考えます。「1件の犯罪の裏には29件のトラブルがあり、29件のトラブルの裏には300件のイライラがある」というのが、私の経験則です。
警察官という職業の周りに蔓延している数え切れないほどのイライラ。この中のごく一部が、相手に自分の内のイライラをぶつけて実際にトラブルになり、さらにそのトラブルの中のごく一部が、法律的な一線を越えて犯罪となるのです。三層のピラミッドのようになっており、下から順にイライラ、トラブル、犯罪です。犯罪の土台にはイライラがあるのです。
ハインリッヒの法則では、「大きな事故・災害をなくすには一つ一つのヒヤリ・ハットを潰していくことだ」との教訓に行き着いており、犯罪も一つ一つのイライラをなくすことで、社会からなくなります。「イライラの感情とどう向き合うか」という発想が、犯罪の芽を潰し、スポーツでいうプレーしやすいフィールドを作ることなのです。
この本に記載されている内容は、私一人の目を通してみた世界から得られた教訓であり、広い社会の中の、元警察官というごく一部の人間の頭を介して書かれた内容です。が、子育て中のお父さんやお母さん、部下との関係で悩むビジネスマンなど、応用範囲は広く、イライラしてしまう人、イライラをどうにかしたいと思っている人全般の助力になるものだと思っています。
ぜひ本書を読んで、イライラとの付き合い方、人に対して優しくなる発想法を身に付けていただければと思います。
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