脱・オレオレ詐欺の服装。良い読書感想文を書くための肝

子ども特有の現象だろうか。
子どもが書いた読書感想文を読んでいて、特に違和感を感じる表現がある。自分を卑下する表現だ。
「だと知っておどろいた」
「驚愕した」
「衝撃を感じた」
大げさな表現、誇張された表現。読書感想文を読んでいてこれらの表現が目から入ってきた時に、「ん?」とつまづく。それまで流れていた文を追う目が止まってしまう。
というのも子どもたちが読んでいるのは、たかだか本だ。子どもが読んでもわかるような内容で書かれた図書である。それらを読んで「おどろいた」だの「驚愕した」だの「衝撃を感じた」だの、そんなことがあるだろうか。
子どもたちは読書感想文を書く際に、「自分たちは大人に満たない存在だから」という一歩引いた姿勢をとるのではないだろうか。「謙虚な気持ち」と言えば聞こえは良いが。そこには書き手の打算が見て取れる。いやらしい謙虚さだ。本心ではない。こう書けば相手はいい気になるのではないだろうか。こんな表現にすれば相手を持ち上げることになるのではないだろうか、という算盤を弾いたような計算高さだ。
何度も言うように、僕たちが読んでいるのは、たかだか本なのだ。そこから「知っておどろいた」だの「驚愕した」だの「衝撃を受けた」だの、そんなことはあり得ないだろう。
新しく社会人になった人間特有の勘違いに似ている。彼らは上司と接する際に、「相手を持ち上げればいい」という安易な考えを持つ。相手をコントロールした気になっている。けれどその実、コントロールしようとしていることを相手から見透かされている。
打算的な謙虚さ、嘘っぽい腰の低さ、狡猾的な遠慮深さ。
新社会人の上司に対する接し方と同じように、子どもが書く読書感想文の大げさな表現には、わざと臭いへりくだりを感じる。
これは、安易に言葉を選んだ結果である。
読書感想文は書くのが難しい。急に読書感想文を書こうしても、付け焼き刃では上手くいかない。常々、気持ちを文章で表現する行為を積み重ねていないと、なかなかできるものではない。うまく書けないと書き手はどうするのかというと、安易に言葉を選んでしまうのだ。大げさに自分をへりくだる言葉を選んでしまう。
読書感想文を書く時に、「本から自分がどれだけ変わったか」や「自分がこの本を読んでどんなに影響を受けたか」を書くと手っ取り早い。そのへりくだりは読書感想文の本懐と合っている気もする。
読書感想文の本懐とは、変わった自分の変容度合い、影響を受けた自分の代わり具合を表現することだ。それらを表顕しようとして、仰々しい表現をつかってしまうのだ。
けど実際には、本でそこまで変わることは無い。確かに本は面白いし、面白さの基本は知らなかったことを知ることだ。それでも、「驚愕した」とか「衝撃を受けた」のように、本の主張をそのまま素直に受け取る形で影響を受けることは皆無だ。
本当は
「自分の中に迷いが生じた」
「まあ、それもあるかもと思うようになった」
「気になった」
そんなところなのではないか。
文章を書くときの肝は、自分の言葉で表現することだ。それがもっとも大切だし、それがもっとも難しい。学生向けの読書感想文の本ではなく、一般向けのライティングの本を開くと、自分の言葉で文章を紡ぐことの大切さを説く内容が必ず入っている。
「形容詞を使わない」とか「常套句を使わない」というのがそれだ。ライティング技術を磨こうとするいい大人ですら、自分の言葉で表現することは困難なのだ。難しい。
難しいと同時にもっとも大切な部分でもある。これが文章を書くことのコアなのだ。自分の言葉で表現する。もう既に世の中にある言葉で無く、以前に誰かが使った表現で無く、社会に定着している語句で無く。
完全な無から、つまり全くのゼロから言葉を作り出すことは無理だとしても、モヤモヤしていてはっきりしない心情を言葉という媒介に当てはめていく作業。これがライティングの肝なのだ。決り文句でなく、自分で言葉や文章を組み合わせて文句を作り上げること。誰かが使っていた既視感のある言葉でなく、自分が今この文章を書いているが為にこね上げられた言葉。それを使ってこそなのだ。
それによって、自分の心の有り様がわかってくる。非力な自分の言葉に力を与えていく。しっかりと筋道を立てた考える論理力を育む。
文章を書くとは、創作活動の連続だ。2,000字なら2,000回。5,000字なら5,000回の創作活動の機会がある。決して他人の表現をつかって紡ぐだけが文章表現ではない。
読書感想文を描く際は、常に「それは自分の本心か?」ということに気を使ってほしい。今から使おうとしている、今から書こうとしているこの表現は、本当に自分の心情を表しているのだろうか。もしも他人から借りてきた言葉であるならば、自分の気持ちを目一杯に表していることにはならない。気持ちは個性そのものなので、他人と一緒であるわけがない。
どこかで見たことがある表現をしている限り、それは自分の体型に合わない服を着ているようなものだ。どこかに不自然さがある。周りから見れば違和感を感じる。
オレオレ詐欺の犯人には若者が多い。銀行マンや役所の人間を演じて年配者から現金を受け取るために自分に合わないスーツを着ていることがほとんどだ。
他人の言葉を使っているとは、オレオレ詐欺の犯人のようなものだ。不自然なので読んでいて(見ていて)違和感を感じる。
違和感を読み手に感じさせないためには、借り物の衣装をやめることだ。面倒くさいだろう。頭を使うだろう。エネルギーを使うだろう。けれど諦めずに、少しでも自分等身大の表現になるように考えることだ。
良い文章とは読みやすい文章だと言われているけれど、読みやすい文章とはは引っかかりが無い。違和感を無くせば引っかかりも無くなる。自分に合った等身大の服を探すことだ。
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