「本を読んでの感想」から抜け出そう。読書感想文を指導するときに気をつけること

2021.02.07 (日)

 

子どもに作文を書かせようとする場合、どこをどうすればいいのか。

 

 

僕は作文に必要なのは、個性だと思っている。個性的な文章。書き手の個性が見える文章。書き手の考えの癖とか隔たり。そんなのが文章からチラッとでも見えると、「読んで良かった」と思うし、文章をもっと読みたくなる。

 

 

というか作文のみならず、表現に必要なのは個性だろう。マンガを描くでも楽器を引くでも、最終的に目指すところは個性の発揮である。確かに始めのうちは、ただただ上手くなることを目指す時期がある。そんな時期には個性なんて言っていられない。人の真似をして、うまい先達の道を同じようにたどって、自分の技量を上げることに専念する。

 

 

けれど十分にうまくなったなら、目指すべきは個性を発揮することのはずだ。というか、目指す先に個性の発揮という空間があるから、手前にある真似るという苦しい空間を耐えることができる。「うまくなればもっと自由に弾ける」「練習すればうまく個性を発揮できるようになる」というのがわかっているから、苦しさを我慢して進むことができる。個性の発揮が求められていない段階をも投げ出さないで練習することができる。

 

 

目指す先には個性があるのだ。文章をジャズ・ピアノに喩えてみたい。ジャズピアノの魅力とは、即興性にある。言われたことをたどるのではない。決められた楽譜通りにピアノを弾くのではない。決まった道を進むのではない。

 

 

そこにあるのは極めての自由。その瞬間に自分が感じた、感性が閃いた衝動にしたがって指を動かす。音が出る。紙芝居のように、時間は瞬間瞬間できられている。「ああしよう」とある一点で未来を決めているわけではない。「ああしたらか、こうしよう」と、現在があるのを過去のせいにしているのでもない。

 

 

今は今。過去も未来も関係ない。今この時に感じた気持ちを音に表している。それのみ。それがジャズピアノであって、即興性の魅力。

 

 

文章の個性もこれと同じだ。その時その時に感じた感覚を言葉に変えて表現する。どんな言葉が出てくるのかはわからない。自分でもわからない。あらかじめ指導者から「こう書くといいよ」とか「こんなことを書けば?」と言われたものでない、自分の素直な気持ちを即興的に書く。

 

 

その瞬間に感じた気持ちは、自分一人のものであって、他の人に真似できるものではない。自分の素直な気持ちを表現すれば、自然とそれは個性的なものになるはずだ。それは子どもと言えども同じ。子どもだって様々考えている。親の道徳的にとらえようとする感覚とは別の感覚を持って世界を生きている。

 

 

なのに「考える読書」。この読書感想文集を読むと、ほとんどの子どもが同じように考えている。確かに一部ではヒュンと光る個性的な言葉で綴っている感想文も見られる。けれどほとんどの読書感想文は、道徳的な切り取り方に支配されてしまっている。

 

 

子どもがこんなに道徳的な感覚をもつか? 子どもがこんなに大人でも安心して読んでいられるような感想をもつか? 子どもは親が見ていてハラハラして不安定でしょうがない存在。それは公園で子どもが遊ぶ様子を見ていてわかる。

 

 

あっちを走ったかと思うと今度はこっちで遊んでいる。一人でジャングルジムを登ったかと思うと今度は他の子どもと一緒に滑り台を滑っている。そんな見ていてシーソーのようなグラングランさが、子どもの素直な感性であるはずだ。

 

 

なのに文章にした途端、子どもの不安定さがなくなっているのはどうしてか。「考える読書」では、安定した文章ばかりが選ばれている。危なっかしい文章は選ばれていない。それは大人の目線で子どもの感性を切り取っているということだ。子どもの個性を無視して、大人が見てわかりやすい言葉を出すようにしている。

 

 

「びっくりした」

「だとわかりました」

「すごい」

 

こんな言葉が並んでいる。確かに子どもから言葉を取り出そうとすると、こういう言葉しか出てこないのかもしれない。思考がよく発達していない子どもがあえて自分の気持ちを表現しようとすると、このような言葉にならざるを得ないのかもしれない。

 

 

けれど、それは大人がそのように取り出そうとしているからなのではないか? 大人自身がわかりやすいように、理解しやすいように、子どもの感性を型にはめ込もうとしているだけではないか? 大人が自分の視野を使って切り取った言葉がそうなのではないか?

 

 

子どもは大人には理解のできない気持ちで動いている。そこを文面に表現させてやるのが大人の仕事だ。指導だ。それが子どもの個性を活かす。

 

 

とりわけ大事なことは、いくら読書感想文だからといって、読んだ本にこだわらないことだ。「読書感想文」というと、「本を読んで考えたこと」「本を読んで思ったこと」を書かねばならいことだと解釈されがちだ。そこが甘い。

 

 

だから絞り出そうとする対象が「本を読んで考えたこと」に限定される。それでは個性は発揮されない。子どもが読む本など、課題図書だとして大した内容が書かれているものではない。そんな限りある本を読んでひねり出した感想など、他と似たりよったりで当然。むしろ違うコトを書くほうが難しい。

 

 

だから、「読んで考えたこと」にこだわらず、普段から考えていることや思っていることを際限なく広く、書く内容の対象にしたほうが良い。だいたい、本を読んだ影響なんてのは、思考の中に沈殿しているものだ。その沈殿物を「これ」と言ってわざわざ見せてくれなくたって、広く浅く水をとってもその沈殿物は色濃く影響を及ぼしている。

 

 

考えたこと、思ったことを広く。読んだ本にこだわらずに頭に浮かんだことを片っ端から表現していったらいい。読んだ本の影響は自然とにじみ出る。あるいはキーワードをちらっと載っけてやるだけでいい。さらには共通点や似ている点を指摘してやるだけでいい。

 

 

そんな、書く対象を広くとった読書感想文にこそ個性は宿る。面白みが出る。読み手を「読んでよかった」と思わせることができる。

 

 


 

 

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