子どもの教養の育て方 〜 非行や子育てについて考えるためのブックレビュー
「頭のいい子、勉強のできる子、やさしくしっかりした子はどうやって育つのか」について書かれた本です。社会で生きていくためには共感力、寛容心、人間力が必要であり、それらを身につけるには教養が必要です。教養の大切さ、育み方についても書かれた本です。
本書の中では、家庭学習や受験勉強や情操教育などについて対談形式で書かれていますが、知の巨人・知の怪物と呼ばれる著者の主張はだいたい、本を読むということです。どのような本を読んだらよいか、どのように本に読んだらよいかなどについて、子育てという視点から書かれています。
私が特に勉強になったのは、「自由」について書かれた部分です。著者は自由の特徴について「愚行権」の尊重だと言っています。他人が愚かなことをすることを認めること。他の人から見て、愚かなことをしているように見えても、放っておくことです。
そこで禁止されていることは一つ、「他者危害」です。自由だからと言って、人を傷つけることは許されません。
難しいのは危害と迷惑の境界線です。例えばタバコ、覚せい剤、携帯電話をしながらの運転。これらは、迷惑という範囲にとどまらず、他人に危害を加える可能性が高い、だから禁止されているのです。
子育てではよく「子どもを自分の延長に置かない」ことが重要視されています。いくら「自分の子ども」と言っても、一人の人格を持った自分とは別の人間として接することです。
社会ではモンスターペアレントも問題となっています。これは、子どもを自分の延長に置いてしまっているが故に、子どもの問題が自分の問題に置き換わっている、と著者は説いています。
親としては教育やしつけと束縛の境界にいつも悩むものですが、「自由とは、他者危害でない限り、愚行権を認めること」が、境界についてのひとつの基準になるのだと思います。
知の巨人は子育てについてどのような考えをもっているのかと興味を持ち、買いました。他の著者の本と同様に、本書の中でも色々な本を紹介しているので、芋づる式で読みたい本が出てくるのが長所でもあり、悩みどころでもあります。
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