子どもへのイライラを解消する〜プチ哲学
子どもは何回注意しても時間に対してルーズですよね。朝は時間通りに起きないし。いつまでも着替えないし。いつまでもご飯を食べないし。言わなければ宿題しないし。いつまでも遊んでいるし。ずっと寝ないで起きているし。
そんな子どもを見ているとイライラがつのります。「なんでこの子はいつまでもわかってくれないんだろう」「なんでこの子は計画性がないんだろう」「なんでこの子は将来のことがわからないんだろう」「なんでこの子は親の愛を理解できないんだろう」
ですが冷静になって、今一度考えてはどうでしょう。時間どおりの生活とは、絶対的にしなければならない事でしょうか。周りを見渡せば、無理して時間に合わせて生活している大人がたくさんいます。眠い目をこすりながら朝起きて、憂鬱な気分になりながら職場に行って、ひどい思いをしながら通勤電車に揺られて、職場では無理に他人に時間を合わせて、いつまでも退社できずに職場に残って、家では放送時間に合わせてテレビをつけて。
私たち現代人は、時間に対する主導権を奪われすぎではないでしょうか。本来は自分のモノであったはずの時間。それをいつの間にか、ペースを自分以外に取られてしまっています。「自分がやりたい時にやりたいことをする」それが理想の時間の使い方のはずです。
そう考えると、時間にルーズな子どもに対して「時間通りに生活する事」を強いることはどうなのでしょう。むしろ子供の方が、本来の時間の使い方をしているのではないでしょうか。子どもに時間どおりの生活を強いることは、自分の時間を生きている子どもから、時間を奪うことにならないでしょうか。
この本は、そんな子どもの一見マイナスに見える面を「むしろ大切にすべきではないか」「間違っている方は、正そうとしている自分の方ではないか」と思わせてくれる本です。時間に対する怠惰の他、暴力性や学業の面での遅れなど。本書を読めば、すべて「本当はどっちが正しいの?」「自分の方が見えていないんじゃないか」と疑問を持ってしまいます。
この本は、この様に内容もさることながら表現も素晴らしい。具体と抽象のバランスが一品です。文章は具体と抽象の往復です。伝えたいことを様々なレイヤーの具体度(抽象度)で表現するものです。たとえば具体例を持って表現したり、たとえばたった一言で表現したり。本書は、その組み合わせが見事なのです。
本書は1から31までのテーマに分かれており、それぞれのテーマはたったの4ページから6ページほどで構成されています。初めのページにタイトルを書いて、次に2ページから4ページを使って挿絵を用いた具体例を示して、最後の1ページで「このテーマで言いたい事はつまりどういうことか」を説明しています。
私は、各テーマの具体例が、主張に対してピンポイントで的を射ていると思うのです。絶妙な具体例だと思います。他の本などでよく見るのは、具体例をいくつか示してテーマを補強する、というものです。具体例を3つ4つ示して補強材料とします。それに対してこの本の具体例は、たったの1つだけでテーマをうまく補強しており、その具体例の目の付け所が非常に言い当てたものだと思うのです。
上で出した時間厳守の話も、この本の8つ目のテーマのところです。具体例のところで時間にルーズなネズミが登場します。読む側は「このネズミは時間にルーズだな、どうしたんだろう。」と疑問を持ちます。そして最後のページで、「何が言いたいのか」「実はこういう事です」を説明するのです。このような巧みな表現方法を用いているからこそ、この本は内容が光って読者に刺さるのだと思います。
著者は、NHKのピタゴラスイッチを生み出した方です。「さすがピタゴラスイッチ!」と唸らせる様な、ピタゴラスイッチに負けないくらいシンプルでしかも深い内容の本です。ピタゴラスイッチと似ているのは、「わかりやすい」ところです。
挿絵も説明文も、一つ一つがとても簡素に表現されています。だから取っ付きやすい。本書のタイトルに「哲学」と入っているのに、堅苦しさが全然なく、子ども向けの絵本のような感覚で読み進めることができます。
タイトルも水と油の組み合わせで絶妙ですよね。堅苦しいイメージの「哲学」に、ライトで砕けた感じの「プチ」をつける。本来は相容れない組み合わせ。「マイ(自分の)ブーム」「ゆる(際立っていない)キャラ」に似たものを感じます。
番組ピタゴラスイッチを見ている感覚なので、本書を読んでいる間は自然と子どもの事が頭に浮かびます。故に本書で得た教訓を、子どもに当てはめてしまう。まさに子どもへの悩みを解決する本。子どもへのイライラを解消する本です。
プレゼントの無料小冊子を更新しました。「子どもの非行を防ぐための素直な頭のつくり方」です。
非行に走る子どもは自己中が多いです。頭が固く、自分の価値観に固執しています。周りの人間の価値観や考えを受け入れられず、自分を通そうとします。自分以外の価値観や考えがあること自体が、見えていないのです。自分が正しくて、自分以外の考えは間違いだという先入観から抜けられない状態です。
子どもは周りから吸収する度合いが強いので、子どもの成長は周りの大人次第の側面があります。「周りの大人が自己中から脱し、素直な頭を持つ事で、接する子どもにも好影響を与えよう」というのが、この小冊子の狙いになります。
頭の柔軟性があり、状況や相手に応じて変化できる事。自分だけでなく、相手の考えも認める事ができる事。一つ上から全体を俯瞰できる事。そんな「素直な頭」をつくるための気づきを、この小冊子から得ていただければと思います。
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