知性のある女性は悪妻となる〜悪妻論
夫婦関係は人類共通の悩みだ。誰もが夫婦関係で苦悩しているし、誰もが夫婦関係を良好なものにしたいと考えている。
夫婦関係の難しさは、ベストセラー本「嫌われる勇気」でも解説してある。どうして夫婦関係が難しいのか、それは夫婦関係が二人の間の問題だからである。僕たちは自分ひとりの事、それと三人以上の関係については、小さいころから「どうすれば良好な関係を築けるのか」を考えてきた。
自分一人しかいない状況では、どうすれば自分が幸せを感じられるのかを自問自答してきた。1人でも退屈しないように、1人でも寂しくならないように、趣味を持ったり特技を作ったりして、自分自身と対話してきた。
それから僕たちはもれなく、いずれかのコミュニティに属しているので、自分のコミュニティのことも考えてきた。どうしれば自分のコミュニテイが発展するのか、平和でいられるのか。皆んなが幸せになる方法である。
でも夫婦間というのは、「自分ひとりの幸せ」とも「皆んなの幸せ」とも違う。それは「2人の間の幸せ」なのである。
自分ひとりの幸せを願うのであれば、自分だけを考えればいい。その際に優先されるべきは自分自身であって、自分自身は最前線に出ることになる。
皆んなの幸せを願う場合は、自分は後ろに引っ込むことになる。誰もが「自分が」「自分が」と言っていては収集がつかない。皆んなの幸せを願う時は、一歩引いて自分を前に出さず、押さえつける態度が必要だ。
どちらとも違うのが2人の間の幸せである。自分だけが前面に出るのでもなく、自分を後ろに押さえて相手を前に出そうとするのでもなく。2人が前面に出なくてはならない。「どちらが」ということではなく、2人ともかけがえのない存在として、2人の幸せを願わなくてはならない。どちら側に触れるでもなく、微妙なさじ加減が求められる。だから夫婦間というのは難しいのだ。
警察をしていても、夫婦の不仲という場面には頻繁に遭遇する。夫婦喧嘩、家庭内トラブル。そんな10番通報だ。「夫が包丁を持ち出した」とか「子どもの育児方法でケンカ」とか。夫婦というのは対立に事欠かない。
あるインフルエンサーが言っていたのだけれど、結婚という制度が時代に合わないのだという。結婚という制度時代を考えた方がいいというのだ。確かに結婚は、僕たちに利益以上に害悪をもたらすのかもしれない。性格や意見が合わない相手と同じ住居で一緒に暮らし、価値観が合わないのに共に子どもを育て、能力に差があるにも関わらず運命共同体を形成している。
こんな風に僕たちは夫婦という現状に嘆き、どうすればより良好な夫婦関係を作れるかに悩んできた。今現在の状況を「改善すべきもの」として認識している。
けれど坂口安吾の「悪妻論」を読んでみると、今現在の状況を「改善すべきもの」として認識している前提そのものを否定している。坂口安吾は、不仲な夫婦関係を「改善すべきもの」として認識していないのだ。「そんなものはしょうがないじゃないか」「むしろその方がいいじゃないか」と言っているのだ。
いはゆる良妻といふものは、知性なき存在で、知性あるところ、女は必ず悪妻となる。
Ango Sakaguchi. Akusairon (Japanese Edition) (Kindle の位置No.42-43). Kindle 版.
確かにそのとおりだ。頭がいい人は、男でも女でも、夫であっても妻であっても自分の意見を持っている。「もっとこうした方が良い」というのが見える。だから素直に相手に従ったりしない。相手の言動の至らないところが見える。ゆえに相手の言うことややることをそのまま受け入れたりはしない。
職場でだって、ダメな上司がいたら誰だって口ごたえするだろう。そのまま従っていたらもっと悪い状況になるのがわかっていて、何もせずに流れに身を任せる者はいない。滝に向かって船が進んでいるとわかれば進路を切り替えようとするはずだ。
だから夫婦間でもトラブルが起こるのだ。お互いに口ごたえだってする。相手が全面的に良くないことが見える。自分たちの船が滝に向かって進んでいるのがわかる。そういう知性のある女性だから、夫のすることに反対する悪妻となるのだ。
人はなんでも平和を愛せばいゝと思ふなら大間違ひ、平和、平静、平安、私は然し、そんなものは好きではない。不安、苦しみ、悲しみ、さういふものゝ方が私は好きだ。
Ango Sakaguchi. Akusairon (Japanese Edition) (Kindle の位置No.30-32). Kindle 版.
でもって、この苦しみという状況こそが人生の花なのである。人生はには様々な状況がある。それは楽しいことや嬉しいことばかりではない。苦しいことだって起こるし、悲しいことだって起こる。勉強や仕事がうまくいかないことだってある。うまくいくと思っていた予想に反して失敗することだってある。大事な人がなくなることだってある。
そうした不安をいだき、実際に苦しみを味わい悲しみを感じる。そんな感情の振れる幅こそが、どちらに振れるにしろ人生という舞台の面白さなのだ。悲しみや苦しみや不安を味わわずにいる方がよっぽど不幸である。
また、坂口安吾はこんな当たり前のことも言っている。
あらゆる人間を知つての上での選択ではなく、少数の周囲の人からの選択であるから、絶対などといふものとは違ふ。
Ango Sakaguchi. Akusairon (Japanese Edition) (Kindle の位置No.55-56). Kindle 版.
考えてみれば初めからわかっていたことだ。世界中には何億という異性がいて、大方その誰と結婚しても良いことになっている。それなのに、それまでの決して多いとは言えない人生経験の中から一生に1人の伴侶を選ばなければならないことになっている。
現代はインターネットが発達している。交流の機会は格段に上がっている。異性との出会いだって、結婚後にいくらでもある。結婚相手よりも魅力的に見える異性と出会うことだって往々にしてある。「これ以上の相手はいない」と一生思っていられるものではないのだ。
夫婦間に悩んだら「悪妻論」を読んでみるといい。夫婦関係を一歩引いたところから見られるようになる。「どうにかしなければ」と思っていた悩みが、「そんなものか」「これでいいのかもな」と軽く思えるようになる。悩んでいた自分が滑稽に思えるようになる。「一歩引いて軽く見られる」のは、悩みの解消方法としては正しい方向である。
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