どうして他人を「雑魚よばわり」するのか。マウンティングとは一般化する行為である〜問題発見力を鍛える

2020.12.17 (木)

 

 

僕はこの著者の本をすべて読んでいるが、この「問題発見力を鍛える」も本当に面白い。オススメである。

 

 

「具体と抽象」という視点の提唱者だけあって著者自身、文章を書くにあたってコアメッセージと具体例の部分をうまく使い分けて書いている。著者のコアメッセージそのものは以前から変わらない。コアメッセージは「具体と抽象」「主観と客観」「既知と未知」といったもので、それをいかに日常に応用するかである。「具体と抽象」といった抽象度の高い(つまりわかりにくい)概念を、ビジネスシーンや人間関係、それから人生論などに応用する方法が、具体例を交えて書かれている。

 

 

この具体例が以前の本と違うものだから(当たり前だ。具体例まで同じだったらなにも違わないことになる)、新しく書かれたこの本が同じコアメッセージでも新鮮味を感じるのだ。つまり、一貫性と目新しさを持って読むことができる。

 

 

読書というのは本に魔法をかけてもらうような作業で、本を読むことでそれまでと違う自分になれる。勇気をもらったり、知性をもらったり。けれど残念なことに、この魔法はそれほど長く効くものではない。

 

 

読後は「よし、やるぞ」と勇気を持って行動できても、何ヶ月後かに「やっぱり自分にはダメかも」と思えてきたり。読後に「違って見えていた」はずの周囲の世界が、数週間でまた元のように薄闇かかってしか見えなくなったり。本の魔法には時間制限があるのだ。だからコンスタントにこの著者が本を出版してくれるのは、僕にとってはありがたい。

 

 

僕は「具体と抽象」という概念が好きなので、違う具体例を用いて「具体と抽象」の話を読むことができるのは、面白さの再チャージである。現象はいくらでも世の中に転がっているので、その次々に現れてくる現象をつかって具体と抽象を説明してくれるのは、「切りがない」「永久に」という意味で核燃料のように読んでいて飽きない。

 

 

「他人と自分のギャップ」の説明なんて逸品だ。僕は警察官をやっていたので、トラブルとかケンカを人一倍経験してきたけれど、人間どうしのトラブルとは、まさに具体と抽象のレベルの違いで説明できる。トラブルになっている二人の相手には、見ている世界のギャップが存在している。

 

 

上司と部下、現場と本部など。同じ事実を同じ感覚をもって見ていても、抽象度がズレているために意見が対立してしまう。

 

 

事実が1つであるにも関わらず、話がなかなか噛み合わない。人の数だけ主観というのは存在するから、客観という事実が1つであるにもかかわらずスレ違いが起きてしまうのだ。

 

 

たとえば「あの人は〇〇だから」というレッテル貼り。これは他人を一般化する行為である。人間というのは一人ひとりが個性を持っている。けれど世界中の一人ひとりを認識していっては時間がかかりすぎるし、いつまで立ってもできるものではない。時間もエネルギーも大幅に食う。

 

 

だからレッテル貼りという作業が必要なのだ。クラスに分ける、区域に分ける、同じものどうし・似たものどうしでカテゴライズする、という作業をとおして、人間は省エネで物事を理解できるようになるのだ。

 

 

けれどこのカテゴライズとは、個性を無視する行為でもある。人それぞれせっかく持っている違うものを、「そんなの同じだよ」と一括りにしてしまう。十把一絡げにする。一般化される方としては面白くない。だから、人は他人を一般化する割りに、いざ自分が一般化されると途端に不快感を感じてしまう。

 

 

職場では「あの人は〇〇だから」と噂し、テレビを見ては「政治感は本当に〇〇だ」と揶揄し、ネットを見ては「アメリカ人は〇〇だねえ」とか「中国人は〇〇だな」とか。

 

 

けれど、自分が職場で他人から「あなたは〇〇だね」なんて言われると腹が立つ。自分の職業や職種を指さされて「あの職業(職種)は〇〇だから」と言われうと「わかってないなあ」と思う。「日本人は〇〇だから」と評価されている記事を読むと「そんなに単純じゃない」と感じる。

 

 

誰でも「自分は特別だから」と自身を特別視したいものなのだ。他人に対して「あの人は〇〇だから」と上から目線で評したいものなのだ。つまり、マウントしたいものなのだ。「あの人は〇〇だから」というと、どこか自分の方が上にいるような気分になる。固有のものを持っている自分が特別で、汎用的なものしか持っていない他人がザコに見える。

 

 

人気アニメ「弱虫ペダル」の怪物レーサー御堂筋翔(みどうすじ あきら)は他人をよく「ザク」と評していたけれど、これは「どこにでもいる汎用品」という意味だ。特別なものを何も持っておらず、替えのきく存在として「ザク」と呼んでいた。アニメ「ガンダム」に登場するモビルスーツ「ザク」と「雑魚」を掛けていたのだけれど、つまりはそういうことなのだ。

 

 

人は他人を一般化してカテゴライズしやすいのだけど、それは汎用品扱いしたいということなのだ。自分を特別だと思いたいし、他人を一般化して相対的に自身を絶対視したいということなのだ。世の中にごまんと溢れているマウンティングの意味を、「具体と抽象」から読み取ることができる。

 

 

 

他にも本書では、問題発見を「『変数を』決定する行為」だと書いてあった。よく製品の比較表というのをAmazonのサイトなんかで見るが、そこでの比較項目の全体が変数の集合体。最適化とはそれらのバランスをとって優先順位をつけること、なんて書かれてあった。著者の本としては、これまでにない具体例である。

 

 

というわけで、「問題発見力を鍛える」の感想だった。ビジネスにも役立つし、人間関係にも役立つ。エンタメ本としても面白い。ぜひ読んでほしい。

 

 


 

 

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