アリさんとキリギリス 〜 子どもの非行を防ぐためのブックレビュー
この本は、擬人化されたキャラクターであるアリとキリギリスの考え方の違いについて書かれた本です。アリは勤勉、組織、安定を信条としたキャラクターです。キリギリスは自由、個人、変化、を信条としたキャラクターです。
「アリ的思考の人間はこう考える。」「キリギリス的思考の人間はこう考える。」というのを、それぞれの場面場面で説いているのが本書です。
著者は、アリ的思考の人間とキリギリス的思考の人間、どちらが悪でどちらが善という話をしているのではないといいます。世界がアリ的人間ばかりになっても、キリギリス的人間ばかりになっても、どちらになっても成り立たなくなるからです。
ですが、時代はキリギリス的思考の人間を求めています。キリギリス的思考の人間がスポットライトを浴びる機会が、今後は増えそうです。科学技術の発達、資本主義の行き詰まりという社会環境の変化から、アリ的思考ではだめだと考えるのが、今の時代の流れだと思います。
また、人はアリ的思考、キリギリス的思考にバッサリと割り切れる訳ではありません。一人の人間でも、革新的な考えをする時と、保守的な考えをする時があるのです。
何かを決断する際、大きな選択をする際、人生の分かれ道に差し掛かった際、「キリギリスならこう考えるだろう」という本書の思考が役にたつと思います。
アリ的集団の中にいながら、キリギリス的思考になろうと頑張っている人も多数いると思います。普段は組織の中で仕事をしつつ、いつかキリギリスの様に生活したいと、日々水面下で発信している人たちです。
そんな隠れキリギリスたちに考え方の指標を示すとともに、今一度勇気をモチベーションを与えるのが本書です。キリギリスの様に生活したいとは考えれども、一度アリの巣の中に入ってしまうと、なかなか羽ばたけるものではありません。本書が、キリギリス的思考への道しるべになるはずです。
私が本書を読んで疑問を持ったのは、「知識教育に思考力の教育を加えることが誤解である」という部分です。
思考力というキリギリスの武器を身につけるためには、一度ストック重視の知識であるアリの価値観を破壊して更地にしなければならないのだそうです。アリの価値観の上にキリギリスの価値観は作れないのだそうです。
キリギリス的価値観を身につけるにはどうすればいいのか。部下にキリギリスの武器を与えるにはどうすればいいか。子どもにキリギリス的思考を育むにはどうすればいいのか。についての記述がほしいと思いました。
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