子どもの習い事や部活には「信念ある自己流」が必要だから、親は口を出さないで放っておくことだ

2020.08.13 (木)

「信念ある自己流は、信念なき正統に勝る」

 

 

往年のアメリカのプロゴルファーにアーノルド・パーマーがいる。僕はゴルフをやらないから、いまいち分からないのだけれど、プロ勝利数95で優勝数歴代5位という成績は、おそらくすごいのだろう。ウィキペディアに書いてあった。

 

 

アーノルド・パーマーはテレビが世に出た時代のゴルファーだったこともあり、ゴルフを大衆に知らしめる役割を果たしたらしい。彼のプレーを見てゴルフに興味を持ったアメリカ人がたくさんいたに違いない。彼には熱狂的なファンの集団がついていて、そのファン集団はアーニーズ・アーミーと呼ばれていたという。ネーミングのゴロが良い。

 

 

「信念ある自己流は、信念なき正統に勝る」というのは、そんなアーノルド・パーマーの言葉とされている。自己流というのは揶揄の対象とされがちだけれど、誰かに言われたまま気持ちも入らずにしているよりかは、よっぽど効果があるのだろう。

 

 

ゴルフもそうだけど、特にスポーツの世界は研究が進んでいて、どうすれば勝ちやすくなるのか、どうすればより上手くプレーできるのか、というセオリーがガチガチに出来上がっている。正統が確立されているのだ。そんな世界で、正統とは真逆の自己流を貫いても、どこか遠回りをしているように思えるかもしれない。

 

 

けれど違うのだ。何の考えもなく、他人が言った正解に従っているようではスポーツだってうまくならないし、勉強だって仕事だってうまくならない。そこに自分の信念がなければ上達は見込めない。自分が「これだ」と思えるような入れ込む気持ちがあるからこそ、人は上達するし成長する。

 

 

スポーツでもなんでも、やっているのは人間なのだ。機械ではない。心があって魂がある。心にしろ魂にしろ、その分野の研究は全然進んでいない。いくら効率的にうまくいく方法を追求したところで、しょせんは対象が心や魂のない機械だったらの話で、直に人間に当てはめられるものではない。

 

 

心や魂というものをうまく扱えるようにならなければ、本当の意味で「何が正解か」なんてわからない。正統はあくまで正統であって、それをやったから一番になれるわけではないのだ。

 

 

これは子育てにも言える。

 

 

親というのは、子どもを気にかけがちである。子どもが野球を始めたとあらば、野球の上達の仕方を調べて、あるいは経験からはじき出して子どもに教えたがる。子どもがパソコンに興味を持ち始めたとあらば、うまく人生や成績やキャリアとパソコンが結びつくような方法を調べて、あるいは経験からはじき出して子どもに教えたがる。

 

 

そりゃそうだ。だって親は子どもがかわいいし、子どもには一番になってほしいと思っている。親は子どもの惨めな姿なんて見たくない。

 

 

だから野球でもパソコンでも「自分の子どもには俺が教えてやる」と言わんばかりに、自分が調べて探した成果を教えてやろうとするんだけれど、そこで思い出してほしいのが、アーノルド・パーマーの言葉。「信念ある自己流は、信念なき正統に勝る」である。

 

 

子どもは果たして、親が教えようとしているやり方がいいと思っているのだろうか。嫌がる子どもに無理に「これが一番いい方法だ」と言って教えようとしていないだろうか。

 

 

たとえば野球部に入った子どもに対して、無理に素振りを強制したり、パソコンに興味をもった子どもに対して無理にプログラミングを強制したりしていないだろうか。

 

 

素振りもプログラミングも、たしかに正統ではある。野球がうまくなりたかったら素振りをするのは正統だろうし、人生とパソコンを結びつけるのも、プログラミングを勉強するのが王道ではある。

 

 

けれどそこに子ども自身の気持ちが入っていなかったら、その正統や王道には何の意味はない。単なる親の自己満足で終わってしまう。大事なのは信念であって、子どもがすることにも子ども自身の信念がなかったら、素振りにしろプログラミングにしろ、表面上の形式で終わってしまう。親が思い描いているような上達や成長は見込めない。

 

 

親が子どもと距離を置いたほうがいい理由はこの辺にあって、親はどうしても子どもに正統を強制したがるからだ。

 

 

正統を強制したって、そこに子ども自身の信念がなければ意味がない。子ども自身の信念はどうすれば育まれるのか。おそらく自分で見つけることだろう。自分で探して、自分で「これだ」と思えるような方法を見つけたときに、そこに信念が宿る。あるいは失敗を繰り返しながら探して、「これでもない」「これも上手くいかない」という試行錯誤の先に、信念がいつの間にか宿っている。

 

 

信念のある方法を見つけたいと思ったら、それは決して他人から与えられるものではないのだ。子どもに信念のある方法を見つけてほしいと思ったら、それは決して親が与えるものではないのだ。

 

 

親と子どものいい関係とは、親から見れば、距離を置くことである。親は子どもがかわいい故に、距離を見誤ってしまう。どうしても距離が近くなってしまう。親の側から子どもに近づきすぎてしまう。それ故に正統を無理に教えたがる。

 

 

子どものためを思うのであれば、距離を置くことだ。距離が近ければ、信念なき正統を与えようとしてしまうから。

 

 

自己流でなければ信念は宿らない。信念のある方法を子どもに見つけてほしかったら、自分で見つけられるように親は距離を置くしかない。親が口を出すものではない。子どもは放っておくに限る。

 

 


 

 

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