非行を防ぎ、素直な子どもへ

子育てもテスト勉強と同じように答えがあればいいのだけれど、正解は無い。

各家庭で状況は違うからだ。家庭の構成員、つまり家族もそれぞれだし、収入にも差がある。住んでいる場所も各々で、健康状態だって一様ではない。何より生き方、目標、価値観がばらばらなのだ。

これでは１つの正解など出せようはずもない。

しかも価値観は表面に出るものではない。価値観なんてものは、いくら言葉にして表そうとしても過不足無く表現できるわけではない。ここにアドバイスの虚しさがある。

アドバイスは他人が他人にするものだけれど、アドバイスされる側の価値観がはっきりしないのに、適切なアドバイスなどできるだろうか。できるわけがない。

アドバイスする側は、アドバイスされる側が自分と同じ価値観であることを前提にしようとする。けれど、だからといって価値観の相違が前提として含まれたアドバイスがされるかというと、そんなことはない。

たとえ「アドバイスされる側は自分とは違う生活をしている人だから」と頭にあったとしても、価値感の相違は意識の外からやってくるからだ。「えっ、そっち？」という想定外からやってくる。フィールドで野球をやっていて、観客席からボールを入れられるようなもの。想定できるのは「想定できない」ということだけだ。

アドバイスされる側はアドバイスに従うだけではなくて、なされたアドバイスの中からどれを採用するかの目利きができなければならない。たとえアドバイスされたとしても、それでも必要なのは自分で掴み取る意志なのだ。自分で道をかき分けることが要るのであって、自分で前に進む力、主体的に物事を見ようとする目、自身の頭を回転させようとする積極性だ。

「子育てが楽になる１００の質問」は、自分で答えを出す。子育てとはつまるところ、どう生きるかの問題である。自分の価値観、己のライフスタイル、個人的な目標によって幅広く答えが変わってくるものなのだ。

答えが変わってくるというか、主観が定まってはじめて答えが決まる。思考実験「シュレディンガーの猫」のようなもので、箱の中にある時はまだ答えが決まっていない。箱のフタを取る作業、主観が入ってはじめて正解が決定する。

はじめに定めるべきものは、自分なのだ。どういうライフスタイルをもって生活したいのか。自分が大事にしている価値観は何なのか。家族にも伝えたいほど大切にしているものは何なのか。それら主観が決まってはじめて子育ての正解も決まる。

もしも子育てについて迷うことがあるならば、自分を振り返ることが必要である。一見、まどろっこしく遠回りをしているようだけれどそんなことはない。もしも自分で出した答えであるならば、自身を持って進むことができる。他人の当てにするロスが無いので、他の悩みにもすぐ答えられるようになる。応用が効く。

「子育てを楽にする１００の質問」で提供できるのは樹の幹の部分であって、花の部分ではない。けれどここを抑えるだけで楽になる。どうして楽になるのか。幹がしっかりするからである。応用幅の広い自分の価値観が心に根付けば、椅子に寄りかかる背もたれのように、疲れた時により掛かることができる。

子育てはシュレディンガーの猫。主観があってはじめて正解が決まるのだ。