人にはなぜ、わからない事があるのか〜バカの壁
人間の「わかる、わからない」と言う認知について書かれた本です。本の冒頭で、妊婦のビデオを見た男女の違いについて触れられています。同じビデオを見せられた医学部の男性と女性、それぞれ違う反応を見せたといいます。
女性は「勉強になった。得られるものがあった」と言う前向きな感想。それに対して男性は「今までも勉強でわかっていたものだ」と言う反応。大学の医学部という、同じ環境で生活し、知的レベルもほとんど同じ、にも関わらずです。
妊娠を自分ごとと捉える女性に対して、男性は妊娠を自分ごとと捉えていなかった。情報に対して前向きだったか、そうでなかったか。前向きなものに対しては得られるものが大きいし、そうでないものに対しては情報を遮断してしまっている。これも1つのバカの壁だと著者は言います。
結局われわれ人間は、自分の頭の中に入るものしか理解できません。人生、生きていれば、わからないことにはたくさん、ぶち当たります。その際に、「バカの壁は誰にでもある」と言うことを思い出してもらえれば、ひょっとすると気が楽になって逆に理解できるかもしれません。色々な見方、捉え方があって構わないのです。
著者はNHKがあまり好きではない様で、NHKの「公平・客観・中立」と言うモットーが信じられないのだと言います。「あり得ない。どうしてそんな事が言えるのか。お前は神か。」だそうです。
ですが、それもしょうがないんですよね。社会がNHKに「公平・客観・中立である」と言う理想を押し付けているのですから。NHKは、自分たちが「公平・客観・中立を演じているだけ」と言うのをわかっています。本当の芯の部分では自分たちが公平・客観・中立ではない事はわかっているのでしょう。
ですけど、波風が立たない様に、なるべく省エネで世の中を渡って行くには、公平・客観・中立であることを演じる事がベターだと考えているんでしょう。NHKに限らず公共の立場というのは、そういうものです。
他にも本書では人間の認知をとおして、万物が流転する事、イスラム原理主義などの宗教、自身の大学教授の経験からの教育観、などについて書かれています。ぜひ読んで見てください。
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