北極の北はどうなっているか〜宇宙創成(下)
僕は文系の学部を卒業している。
どうして文系を選んだのか。特に歴史が好きだったわけでも、国語が好きだったわけでもない。おそらく文系を選ぶ人の大半がそうであるように、僕が文系を選んだ理由も、「数学が苦手だった」からである。
ゆえに僕は今でも理系コンプレックスを持っている。理系を選択しなかったことの後ろめたさ、数学が人よりも劣っていることの自信のなさ、子どもに算数を教えるときの心もとなさ、である。
生活の至るところで、理系コンプレックスが出てくる。実際はそう簡単なものではないのだろうが、「数学をもっと勉強していれば、いい人生がおくれたのかな」とか「物理がわかれば、もっと有利な人生を歩めたのかな」なんて後ろ向きな思いがときどき、水のように湧き出てくる。
だから、なんとなく数学が関係してそうな本や、物理がわかっていなければ理解できなそうな本に対しては敬遠しがちである。「わからなかったら嫌だな」「時間とお金のムダにならないかな」と、マイナス思考から入る癖がある。
「宇宙創成」を読むときもそうだった。「面白さがわからなかったらどうしよう」という気持ちがあった。が、そんな気持ちはムダであった。生粋の文系の僕でも、この本の面白さは理解できた。といっても、おそらく「わかった気になっているだけ」なのだろう。けどそれで十分である。深く入っていこうとすれば、底は切りがないのと同じ。面白さを理解する分には、理系の下地がなくても、この本に関しては十分に通用するものだった。
おそらくそれは、この本が人間ドラマを主軸にストーリーを展開しているからだと思われる。
僕らの周りには、無機質なモノがたくさん転がっている。周りをざっと見渡しても、本を収納する本棚があり、文章を書いたり動画を視聴したり刷るノートパソコンがあり、コーヒーを飲むコーヒーカップがあり、移動するために荷物を入れるリュックがある。
これらのモノは無機質である。つねったところで「痛い」とは言わないし、いくらヘビーに使っても「疲れた」とは言わない。けれど、これらのモノの背景には、濃い〜い人間ドラマがあるものなのだ。僕が使っているノートパソコンはMacBook Proだが、このモデルが出るには、有名な人から無名な人まで、たくさんの人と失敗と苦労があったに違いない。スティーブ・ジョブズやジョナサン・アイブの話など、表面的でしか無い。
初めにインターネットなるものが形を表してきて。このインターネットだって、あっちに行ったりこっちに着たりで、ぶつかりもまれながら形を表してきたに違いない。その後でコンピュータが出てきて。そのコンピュータがパーソナルコンピュータになって。それからサイズがデスクトップからラップトップに小さくなって。アップルはデザインもこだわって。
それぞれの過程に、たくさんの人の血と汗と涙の物語があって、MacBook Proができているはずである。たとえ無機物であろうと、その後ろには多く人間ドラマがあるはずなのだ。
本書は、そんな人間ドラマを主軸にしてストーリーが展開していく。ストーリーの舞台は、宇宙である。文系が一番拒否反応を起こしやすい、ある意味で理系の最高峰である。けれど面白かった。理系に後ろめたさがあっても面白さを感じさせて読ませてくれるのだから、著者や翻訳家の方の力量に感服である。
この本は、ビッグバン理論をめぐる人間ドラマであって、主人公はビッグバンである。にも関わらず、最後は「ビッグバンの前には何があったのか」という問いになっている。僕たちは普段生活している限り、空間も時間も無限のように思えてしまう。確かに地球は丸いが、その周りに広がる宇宙はどこまで行っても宇宙である。
だいたい宇宙に限りがあるとしたら、その先はどうなっているのか。宇宙のもっと先がなくてはならなくなってしまう。時間にしてもそうだ。時間とは、目で見えない、手でもさわれない、ただの概念である。「いつできた」とか、そういう類のものではないように思える。
ところが、時間も空間も、ビッグバンによって始まったのだ。針の先よりも小さいサイズから始まった大爆発が、何十億光年おいう大きさに、途方も無い時間をかけて広がったのだ。
「ビッグバンという言葉はともかくも大爆発を意味し、実際、爆発を思い浮かべるのはそれほど的外れではない。しかしビッグバンは、空間の中で何かが爆発したのではなく、空間が爆発したのである。同様に、ビッグバンは時間の中で何かが爆発したのではなく、時間が爆発したのである。空間と時間はどちらもビッグバンに瞬間に作られたのだ」
「限りがある」ということは、「それよりも以前または以後がある」ということである。本書を読んでビッグバンの概要がわかると、今度は「それ以前は」と自然と考えるようにある。が、それ以前は、物理学では扱えないのだそうだ。
というのも、ビッグバンで時間も空間も生じたのだ。「ビッグバン以前」という言葉は意味がない。本書ではこれを、北極に例えている。「北極の北はどうなっているか」と考えるようなものらしい。
ということは、ビッグバンよりも話を進めようとすると、形而上学的な話になるのか。またしても哲学や神学の出番である。哲学や神学とは別の道を歩み、数字を使って世の中を解明しようとしてきた科学。実際、科学によって世の中の大部分は解明されてきたのだが、最後の最後になって、扉を開けるとまたしても形而上学的な展開が待っていたのである。
哲学と神学に「この先はオレに任せろ」と言って、勇んでダンジョンを通ってきた科学であったが、ダンジョンの奥の奥の扉。ラスボスに通じる扉は、哲学や神学でなければ開けることができない作りになっていたのである。というか、ラスボスに通じる扉を開けたら、入り口で別れたはずの哲学と神学が既に待っていた、という感じか。
これまで科学で宇宙を見てきたが、この先は科学だけではどうにもならない領域のようだ。
読書は切りがない。まだまだ読まなかればならない本、知らなければならない分野は山のようにある。今回の「宇宙創成」を読んで、またさらに読書対象の分野は広くなった。「時間とは」「量子論とは」など、本当に終わりがない。自分の小ささ、人生の短さを感じた。
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ようやくできました。「妄想スナイパー理論」です。タイトルは「インパクトがある方が人目につくかな」と思って、こんなタイトルにしていますが、中身は「犯罪と非行をなくして、思いやりを育む方法」になります。
思いやりってけっこう、掴みどころのないものだと思うんですよ。昔から「思いやりを持ちなさい」とか「思いやりが大事です」なんて周りから言われることは多いと思いますが、「それって何なの?」「それってどういうこと?」と聞かれた場合や、「どうやって持つことができるの?」と疑問に思ったときに、うまく答えられないと思うんです。
そこで、一つの具体案として、「思いやりとはスナイパーのようなものだ」というのを示したいと思います。スナイパーとは、遠くから銃で相手を狙う、狙撃です。思いやりとは、スナイパーのようなものなのです。もちろん、思いやりは頭の中のことなので、実際に銃なり狙撃なりはしませんが、遠くから狙うすスナイパーと思いやりは、似ているんです。
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