操舵を握る船長になるか、船員のままか〜2020年6月30日にまたここで会おう

2020.06.16 (火)

 

社会はブロガーで著者のちきりんさんが以前、本かツイッターで言っていた。「自分でハンドルを握るか、それとも助手席で座っているか」と。

 

 

大抵の人は、助手席に座るだけで人生が終わってしまう。行き先は運転手頼りだし、行き先どころか、いつ出発するかも、どこで休憩をとるかも、どんなルートを走って目的地まで行くかも、助手席に座る人が自分で決めることはない。運転手がいなければ移動することは出来ないし、何も決められない。

 

 

ちきりんさんは言う。「そんな人間になるな」と。

 

 

人生のハンドルは自分で握らなければならない。自分で行き先を決めて、ルートも休憩場所も出発時間も、すべて自分で決めるのだ。もちろん決めるのは容易いことじゃない。リスクを背負うことになる。適切な出発時間を設定しなければ、目的地に時間まで間に合わないかもしれない。もしくは時間が余って無駄なことをしてしまうかもしれない。そんなことをすれば同乗者のひんしゅくを買って責めれれることも予想される。同乗者に説明して、うまくまとめなくてはならない。

 

 

ルートだって、間違ったルートを選んでしまうかもしれない。遠くて時間がかかるルートを選んでしまうかもしれないし、そのせいで当初予定していた休憩場所にたどり着けなくなり、計画を変更せざるを得なくなってしまうかもしれない。

 

 

それでも僕たちは運転手であることを目指すべきなのだ。ハンドルを他人に握らせずに、人生のハンドルは自分で握るべきなのだ。計画を立てて、選択して、決定して、他人に説明して、人前に立って周りを引っ張って、それでいて責任を負って。そんな人生を歩むからこそ、人生は意味あるものになる。

 

 

多少の僕の解釈が入っているかもしれないが、以上はちきりんさんが言っていたことだ。

 

 

本書の200ページから最後までも、似たようなことを言っている。ここで著者が引用しているのは、「ボン・ヴォヤージュ」というフランス語。これには「よき航海をゆけ」という意味があるらしい。船の船長どうしの挨拶で、操舵を握る船長にしかこの挨拶は許されていない。航海の責任のすべてを任される船長だからこそ、お互いに「よき航海をゆけ」と言えるのだ。

 

 

面白いのは、船がすれ違った時に、例えば向こうの船の行き先に嵐が待っていることが予想されたとしても、挨拶は「ボン・ヴォヤージュ」のみになるらしい。余計なことを言わないのだ。「向こうには嵐が待っているので行くのはヤメといた方がいいですよ」とか「あなたの計画は間違ってますよ」とか、そんなアドバイスは言わない。

 

 

僕の解釈だと、これは正解は誰にもわからない、あるいは世の中に正解はない、という信念が土台にあるのだと思う。細谷功さんの著書「具体抽象トレーニング」の「はじめに」に、次のような言葉が書いてある。

 

 

 

 

「その人やその状況において、その人が『最善だと思う選択肢』のみがあり、それをどこまで自分で信じられるかどうかで、それが『正解』になるかどうかが決まる」(本文より引用)

 

 

学校で勉強する授業や受講するテストには正解と不正解があるが、社会や人生で直面する問題に、正解は無い。どの選択肢を選んでもうまくいく人はいるし、うまくいかない人もいる。たとえ一般的には不正解と思われる選択肢を選んだとしても、それをやり遂げることができれば、それは正解になるという。

 

 

「航海していった先に嵐が待っている」という状況は、一般的に言えば失敗の航海である。けれど、失敗だからといって引き返すか、回り道するか、それともあえて突っ切るか、いずれも正解になりうる道なのだ。

 

 

突っ切るのも正解である。古代ローマの哲学者セネカが「摂理について」で言っていたけれど、世の中にハードルがあるのは、僕たちが経験値を上げるためである。

 

 

 

 

完璧である神がつくった世界に厄災が存在するのは、僕たち人間を成長させるためである。「ダメだあ」とか「失敗だあ」なんて思っても、それを経験値を上げるためのハードルだと考えれば、途端に厄災だってウェルカムになる。キラーマシンだって、メタルキングに化けるのだ。

 

 

嵐の中を進むルートを選んだ航海だって、失敗とは限らない。「このルートを進むんだ」と腹をくくって、自分を信じて進めば、「あの嵐だって乗り越えた」という経験値になる。安西先生が山王工業に対して「去年、トーナメントを最後まで闘った経験がある」と評価していたように、「経験済み」というのは大きなステップになのだ。

 

 

たとえ他人から不正解だと思われても、一般的には避けるべき道だと考えられていても、それに従う必要はない。自分たちの行動次第で、どの選択肢も正解にもなり得るし、不正解にもなり得る。細谷功さんの言っているように、自分たちがどれだけそれを信じられるか次第である。

 

 

そんな、「正解はないし、どれも正解になりえる。責任を負う人間次第」であることがわかっているからこそ「ボン・ヴォヤージュ」なのだろう。余計なことを言わず、操舵を握っている人間、責任を負っている人間をリスペクトするからこその「ボン・ヴォヤージュ」。

 

 

僕たちは、ついつい他人に対してマウンティングしたがる。「あいつの判断は間違っている」とか「自分の方が優れている」と、自分と他人とを比べて値踏みする。だから他人を「指導」したくなるし、指導に従わない人間にはイライラする。これは、自分が選んだ道が正解で、相手が選んだ道が不正解だということを内心、思っているからに他ならない。

 

 

他人に対する指導なんて無意味だし、アドバイスなんて余計なことはしない方がいい。一般的には不正解だと思われる選択肢を、正解に変える力が相手にあることを信じてれば、ただただ「ボン・ヴォヤージュ」というしかない。

 

 

 


 

 

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