警察官をやっていた僕が、どうして哲学関係の本を読むにようになったのか

2020.04.21 (火)

「センスに見えて実は論理」

 

 

これは国語のテストで好成績を狙う上での鉄則と言われている。国語の参考書や「国語の成績をいかに上げるか」なんて本を読むと、一番最初に書かれている、もしくは全体を通しての主張が、この「センスに見えて実は論理」である。

 

 

「国語の問題を解こうとする際、一般的には『それまで読んできた本の積み重ねが物をいうのであり、センスが問われる』と言われているが、そうではない。問題文の各所に埋まっているヒントを頼りに、論理的に詰めていけば、自然と答えは導き出せるのであり、論理力の教科だ」

 

 

なんてことを、国語の参考書などでは言っているのだが、僕としては「それも含めてセンスだろう」という気がしなくもない。

 

 

国語の授業で先生が言っていたのが、「心情変化に注意しなさい」だ。国語の問題文としてだされる文章には物語もあり、登場人物の心情変化と自分の感想をごっちゃにしてしまうことが、国語の成績を取れない人の特徴だという。

 

 

いかに論理的に登場人物の心情変化をつかむかが、物語克服への道のようである。

 

 

 

 

 

 

「オレが護ろうとしたものさえクズだった」

 

 

これは、1990年代の人気漫画「幽遊白書」に登場する悪役、仙水忍のセリフである。

 

(幽遊白書17巻より引用)

 

 

仙水忍は確かに悪者だった。彼は人間であるにも関わらず、人間に害をなす妖怪の側であった。しかも、元々は人間を妖怪から守る霊界探偵でもあった。

 

 

どうして彼は人間を守る側から、人間に害をなす側になったのだろうか。そのターニングポイント(心情変化)として、彼の心情をよく表したセリフが、この「オレが護ろうとしたものさえクズだった」である。

 

 

 

 

僕が哲学関係の本を読むようになったきっかけも、これと同じである。「護ろうとしたものさえクズだった」のだ。

 

 

警察官になれば、見えないものが見えると思っていた。確かに警察にもアンチがいるし、政治家と同じで人の上に立ったり、人の前に立ったりする職業には批判がつきものだと思っていた。警察の世界が勧善懲悪でないことは想像がついた。

 

 

けれど、警察になって始めて警察がこんなに苦しいものだとわかった。なるほど、勧善懲悪ではない。そう簡単に正義と悪が分かれるものではない。

 

 

たとえば職務質問。僕は職務質問をすることが、未然に犯罪を防ぐいいきっかけになっていると思っている。なぜか。職務質問をすることによって、警察の姿を犯罪者に意識させることができるからだ。

 

 

職質は犯罪者に対して行うものではない。職質は、犯罪者に対して声を掛けたり所持品検査をするものではない。たしかに理想としては犯罪者に対して職質をすることが理想ではあるのだが、外から見てどれが犯罪者でどれが犯罪者でないかを見極めることは、警察官でも難しい。

 

 

その見極めを100パーセントの確立で行うことは不可能である。犯罪者にも声を掛けるし、犯罪者でない者にも声を掛ける。そうやって数をこなしているうちに、少なからず悪い考えを持っている者にも声を掛けていて、犯罪の抑止に繋がっているだろうと思っている。

 

 

犯罪者でないのに声を掛けられた人には申し訳ないが、それが治安のある社会だと思っている。投資と同じで、リスクがなければリターンは無い。犯罪とは関係のない人にとっては、職質というリスクがあるから、治安というリターンがあるのである。

 

 

車の取締りも、僕は絶対に必要なことだと思っている。交通社会における治安は、取締りにかかっている。故に隠れて取締するのも当たり前だ。なぜなら、その方が効率が良いからだ。違反者が警察を先に見つければ、違反をしないだろう。けれどそれでは、潜在的な違反が取り除かれないことになる。

 

 

潜在的な違反を暴き出し、社会から違反をなくすのが、取締りである。取り締まられた違反者はよく思考停止で「卑怯だ」なんていうが、取締りはただのゲーム(遊び)ではない。警察とドライバーのゲームではなく、交通社会の治安という目的のためのもので、警察官とドライバーでは見ているものが違うのだ。

 

 

「どっちが先か」のようなゲームではなく、警察官が見ている目的はもっと遠く、意識は高いのだ。

 

 

なのに、職質にしても車の取締りにしても、警察に対する批判はひどい。おそらく「警察になら悪態をついても良い」の様な意識があるのだろう。ちょっとした批判でも、受ける方としては重大である。世間の批判に敏感な組織体質だから、ちょっとした批判でも消すにはかなりの労力を使う。

 

 

そんな批判にさらされながら日々「治安」のために仕事に出る警察官の忍耐やいかなるものか。

 

 

確かに彼ら警察官も、なりたての頃は、守るべき対象である市民と、それに悪をなす犯罪者という二元論に疑いを持っていなかっただろう。けれど、市民と犯罪者は紙一重なのである。市民は警察官を批判しやすい立場にあり、容易に治安を乱す存在になりやすい。

 

 

職質をすれば「関係ねーだろ!」と拒絶され、車の取締りをすれば「こんなくだらねーことしてんなよ!」とヤジられ、これでは守ろうとしてる市民がクズに見えても仕方がないだろう。「護ろうとしたものさえクズだった」のだ。

 

 

 

 

 

 

大乗仏教の経典である維摩経の第8章では「不ニの法門に入る」とはいかなることかについての議論が展開されている。

 

 

二項対立では、対になっている二項そのものが、同じ部類に入りやすい。自由と不自由は紙一重だし、成功と失敗も紙一重だし、正義と悪も紙一重なのだ。市民と犯罪者も紙一重であり、その境界は霧である。

 

 

法律でもって単純に割り切れるものではない。悪とは何か、正義とは何か、もう一度考え直す必要がる。そんな心情変化を経験して、僕は哲学に興味を持ったのである。

 

 

 

 

 


 

 

 

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