子供の非行を防ぐ抽象化思考、その注意点とは
物事には必ずと言っていいほど裏と表があります。メリットはデメリットになり得るし、デメリットはメリットになり得るのです。
昭和の時代は、物を買う時代でした。新しい製品が発明され、それを手に入れるためにみんな働いてお金を稼いで手に入れたのです。家電製品、車、家など。物を持つこと、高級なものを持つこと、数多くものを持つことで、ステータスを感じる事ができたのです。
対して今は、そんな価値観に行き詰まりが見られる時代です。どんなに物を持っても、高級品を買っても、物の数を増やしても、幸せには繋がらない事が分かってきたのです。今では身軽さが売りになる時代です。物をもたず、その分身軽になり、いつでもどこにでも自由に行き来する事に対する価値観に、多くの人が気づき始めました。いまの時代、物を持っていると束縛が増えて自由がなくなる分、デメリットだと感じる人が多いのです。
このように、メリットは見方を変えるとデメリットに転換します。今まで散々長所ばかりを強調してきましたが、抽象化思考を扱う際のデメリットを紹介します。
人から嫌われる
抽象化思考を身につけると、人から嫌われる言動をする可能性があります。それは、相手を一般化してしまう可能性があるからです。人は、自分を特殊視する傾向がある割に、他人を一般化したがります。誰にとっても「自分」というものは、他人よりも優れた者、特別な者でありたいと潜在的に考えているのでしょう。
抽象化思考を身につけて視野が広がり、遠くの世界を自分の世界と結びつける事ができると、驚きが少なくなります。人から聞いた特別な話も、特別でなくなります。「驚くような話」「とびきり面白い話」を聞かせようとして話をされているにも関わらず、「ああ、あの話か」「こんな感じのよくある話かな」と、よくある話だと解釈してしまいます。
さらに抽象化思考は「見えない繋がり」を意識させる思考なので、抽象化思考を身につけると裏を読むようになります。人に対して疑いやすくなるのです。人の好意に対して「何か裏があるんじゃないか」「こんなことを考えているんじゃないか」と背後を気にするようになるのです。
あなたの周りにも、何かと「なぜですか?」と聞くひとがいるかもしれません。例えば、何か指示を出すと「なんでですか?」と聞く部下。もしかしたらその部下は、言われた事にプラスして何か付加価値をつけたくて、その支持の理由を聞こうとしているのかもしれません。
が、実際に「なぜ?」と聞かれると面白くないのが人間です。どんなに小さなことでも、疑われれば反発したくなります。疑われるとムッとしてしまうのが人心なのです。
争いで負ける
抽象化思考ができるようになると、優しさが身につきます。「間違っているのは自分かもしれない」と思えるようになります。自分との繋がりが感じられるため、相手の気持ちを想像できるようになります。ルーズになり、寛容的にもなります。
ですがこれらが、争い事で負ける要因になるのです。ひたすら「正しいのは自分だ」と思っていれば攻撃の手を緩めることもないのですが、「間違っているのは自分かもしれない」と思えるようになると、相手を攻撃するだけのエネルギーがなくなります。
負けない事の要因は、自分に対する絶対的な自信だからです。子どものケンカでも、「自分は正しい」と思っている子供は強いです。「後ろめたさがない」「間違っているのは相手だ」という認識は、後ずさりしない強さを与えてくれるものです。
抽象化思考はその逆になります。「間違っているのは自分かもしれない」なので、まさしく一歩引いてしまうのです。たとえ相手を攻撃していても、攻撃の源泉である自信がなくなるので、どこかで攻撃を緩めなければならないのです。
さらに、自分と断絶しないで考えられる故に、相手を傷つけることもできなくなります。優しさと弱さは紙一重の違いです。優しいとは、見方を変えれば弱い、という事でもあるのです。
自分が相手に対して優しさを発揮したからといって、相手が自分にも優しくしてくれるかというと、それは別問題です。相手が自分に優しくしてくれるかどうかは、相手次第なのです。しかも、争っている相手であればなおさらです。非行に走らないためのメリットである優しさが、争いごとにおいてはデメリットになるのです。
しかも、寛容的であれば相手を許してしまう可能性もあります。情け深い人間は、たとえ自分が傷ついても相手に慈悲を与えます。懐の大きさ、心の大きさ、器の大きさのある人間は、必ずしも勝ちを狙おうとしないのです。
勝ち負けにこだわらず、勝っても負けても「どっちでもいい」のが、寛容的な人間の本音です。寛容さの本懐は、勝ち負けを越えた部分にあるのです。ですから、本人としては「勝っても負けてもどっちでもいい」のですが、側からみていると、やはり負けている事に変わりはないのです。
行動できなくなる
抽象化思考できるようになると、行動ができなくなります。行動に直接繋がるような思考ができなくなるのです。具体は、わかりやすく現実的です。それに対して抽象はモヤモヤとしていて現実味がないのです。モヤモヤとして現実味がない抽象化思考は、具体とセットで考えなければなりません。
抽象的な目標というのがあります。例えば漠然と「グローバルな人間になりたい」という思いがあり、「グローバルな人間になろう」と思ったからといって、これではあまりにも抽象的すぎて何をやったらいいのかわかりません。モヤモヤとしすぎているのです。
具体と抽象は、両方あって初めてその威力を発揮します。グローバルな人間になりたい。その為に、半年後に、世界を知る為に長期留学する。その為に、来週から英会話を習って英語力とコミュニケーション能力を身につける。その為に、今から英会話スクールをリサーチする。といった具合です。
目標を具体化していくと、より現実的になり、行動につながりやすくなります。「グローバルな人間になりたい」と「今から英会話スクールをリサーチする」では、抽象度(具体度)が全く違います。「グローバルな人間になりたい」は抽象的で、「今から英会話スクールをリサーチする」は具体的です。
ですがだからと言って、具体的な目標だけがあってもうまくいきません。「今から英会話スクールをリサーチする」という目標では、方向性や理由が全くわからないからです。具体と抽象は相互補完の役割を果たすのです。
抽象というのは漠然としていて、いろいろな解釈ができます。応用が効くのです。ですので、たとえ行動できなくてサボっていても、言い訳には困りません。例えば「いつかサッカー選手になる」という抽象的な目標は、色々な解釈が可能です。一日中寝ている日があったとしても「体を休めている」という理由をつければ、寝ている事も目標達成のための手段になりえます。
ですが「いつかサッカー選手になる」の後に「毎日サッカーの練習する」という具体的な目標を立てれば、一日中寝ている日はありえません。具体的な目標を立てる事によって、強制的に行動させることが可能になるのです。
具体と抽象は両輪です。具体だけがあっても方向が定まらず、抽象だけがあっても行動ができません。うまく両方を活かすことで、自分が望む方向に向かって行動することができるのです。
プレゼントの無料小冊子を更新しました。「子どもの非行を防ぐための素直な頭のつくり方」です。
非行に走る子どもは自己中が多いです。頭が固く、自分の価値観に固執しています。周りの人間の価値観や考えを受け入れられず、自分を通そうとします。自分以外の価値観や考えがあること自体が、見えていないのです。自分が正しくて、自分以外の考えは間違いだという先入観から抜けられない状態です。
子どもは周りから吸収する度合いが強いので、子どもの成長は周りの大人次第の側面があります。「周りの大人が自己中から脱し、素直な頭を持つ事で、接する子どもにも好影響を与えよう」というのが、この小冊子の狙いになります。
頭の柔軟性があり、状況や相手に応じて変化できる事。自分だけでなく、相手の考えも認める事ができる事。一つ上から全体を俯瞰できる事。そんな「素直な頭」をつくるための気づきを、この小冊子から得ていただければと思います。
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