犯罪を引き起こす要因、犯罪を減らす方法
「入門 犯罪心理学」という本を読んだ。
世の中には、犯罪の原因を「これだ」と何か1つに決めるような発言や記事が多いけれど、ことはそう単純ではない。確かに、なにか1つに原因を求めようとすることは物事を理解する上で 当然だろう。新しい物を理解するにはとっ掛かりのようなものが必要である。けれど、それはあくまで部分である事を忘れてはならない。全体の中の一部が単純な取っ掛かりなのであって、全体は変わらず難解なのだ。
犯罪とは難解なもので、いくつもの影響が合わさった結果である。
「家庭が悪いから」「遺伝だから」「子どものときの体験から」「社会が悪いから」という風に1つに求めがちな犯罪の原因も、あくまでも多の中の個である。多くの原因が複雑に絡まりあったうちの1つに過ぎない。
犯罪を起こしうる原因を、リスク・ファクター(危険因子)と呼ぶ。リスク・ファクターが積み重なり、影響し合った結果、発芽するのが犯罪なのだ。
本書でリスク・ファクターは、8つ紹介されている。
・過去の犯罪
・交友関係
・反社会的認知
・反社会的パーソナリティ
・家庭
・教育や職業
・物質使用
・余暇活動
の8つである。
そのうち、過去の犯罪、交友関係、反社会的認知、反社会的パーソナリティの4つは、他の4つよりも影響力の大きいリスク・ファクターであるとしている。
さらに、8つのリスク・ファクターのうち過去の犯罪にあっては、どうしようもないものである。過去の犯罪は、犯罪を起こす引き金、リスク・ファクターになりうる。以前犯した犯罪で美味しい思いをしていればまた犯したくなる。過去に犯罪を犯したということは、その人間になにか遺伝的に犯罪を誘発するものがあるのかもしれない。
けれど過去はどうしようもないものだ。過去の犯歴があるからといって、その犯歴を消せるものではない。
つまり、影響力の大きい危険因子を除外しようと思えば交友関係、反社会的認知、反社会的パーソナリティの3つをどうにかするしかないのである。
この本では特に、反社会的認知と反社会的パーソナリティについて多くの紙面が割かれている。
僕としては、反社会的認知に影響を与えるのがいい方法ではないかと思う。というのも、犯罪のみならず、その人を形作っているものはパーソナリティだけれど、パーソナリティは認知から生まれるからだ。
影響力の大きいリスク・ファクターの中でも、核は反社会的認知と反社会的パーソナリティの2つだと思われる。認知とパーソナリティを僕なりに解釈すると、認知とは外界からの信号の受け取り方で、受け取った上で形作られていくのがパーソナリティである。
パーソナリティとは認知の結果である。認知がインプット、パーソナリティがアウトプットとも言える。なので、その人を変えようと思ったらインプットを変えるのが一番だろう。その人を犯罪から遠ざけようとすれば、反社会的な認知をどうにかするしかない。
そう言えばこの本では反社会的パーソナリティをもっと細かく分けていて、生得要因と環境とに分けている。生まれ持ってのパーソナリティと、生まれた後で身につけたパーソナリティがあるのだ。パーソナリティには3つあって、情緒的特性(共感性、冷酷性、残忍性)と思考的特性(自己中心性、遅延価値割引傾向)と行動的特性(自己統制力欠如、行動性、リスクテイキング傾向)である。
反社会的認知も細かく分けていて、
・中和の技術、反社会的な合理化、言い訳
・犯罪的他者への同一化、犯罪者としての認知
・慣習の拒絶、規範無視
が挙げられている。
どうすれば認知を変えらるのか。世の中の見方を変えるには、本を読むのがいいのではないかと思うがどうだろう。僕自身、本を読むことによって見方を変えることができた。インプットの方法には本だけでなく色々ある。動画、セミナー、マンガ、雑誌、映画。どれも世の中の見方を変える可能性を秘めている。どれを採用してもいい。
ただ、その中心には常に本があるべきだと思う。本が中心にあって、その周りに動画や映画やマンガなどがある感じだ。
というのも、本は深い。文章にするという行為はよくできている。作りやすいというのが、よくできている理由ではないか。作文は誰にでもできる。マンガは絵を書かなければならない。映画は撮影しなければならない。けど文章は文字を書いていくだけだ。簡単にできる。
「文章を書くのは簡単だ」というと、「話すのはもっと簡単だろう」と反論されるかもしれないけれど、話すのは残らない。文章であれば作りながら考え、再考して作り直すことができる。その中で考えが深くなる。けど話すのは1回限りの技だ。ここが話すのと書くのとの違いで、深い考えが伴うのが、文章である。書く方も深く考えられるし、読む方も深く考えられる。インプットの中心にあるのべきなは本なのだ。
で、インプットを強化しようとすると、アウトプットをしなければならない。読書という行為の力を最大限に引き出そうとすると、書くことをしなければならない。書くことで読むことも強化される。文章を書いているときの気付きが、文章を読むときにも生かされる。
文章を書いているときの「自分にはこんなことが足りないな」とか「文章を書くってのはこういう気持なのか」という気付きが、読書の時間を濃密なものにする。文章を書かないで本を読むだけというのは、スポーツを観戦するだけの行為のようなもの。そのスポーツをより理解し体感するには、自分でもそのスポーツをやった方がいいだろう。
ピッチャーの体験があれば、野球を見ていても「ああいう時は疲れるんだよな」などとピッチャーの気持がわかって、より観戦が深くなって楽しめるだろう。読書もそれと同じである。読むには書くことが必要なのだ。
というわけで、犯罪を減らすにはどうすればいいかは、文章を書く、という結論に行き着いた。
犯罪のリスク・ファクターのうち、反社会的認知を変えなければならない。認知を変えるには、インプットを変えることであるが、その中心にあるのは本だ。本を読むことだ。ただし、本を読むことは文章を書くことで強化される。文章を書くことで読書の時間が濃くなる。文章を書くことが、犯罪を減らすことに繋がるのだ。
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