虐待や貧困など、個々の例を原因の全体でなく一部と考える〜入門犯罪心理学

2020.11.17 (火)

 

理想はいい、けれど現実という壁に阻まれているかのような本だった。

 

 

・少年事件の凶悪化が進んでいる

・日本の治安は悪化している

・性犯罪の再犯率は高い

・厳罰化は犯罪の抑制に効果がある

・貧困や精神障害は犯罪の原因である

・虐待をされた子どもは非行に走りやすい

・薬物がやめられないのは、意志が弱いからだ

 

 

 

これらは、日本で一般的に思われている犯罪へのイメージである。著者は、これらの命題はいずれも偽であると言う。

 

 

・少年事件、特に凶悪事件や粗暴事件は減少が目立っている

・日本は依然として世界一安全な国である

・性犯罪は、窃盗や薬物よりもはるかに再犯率が低い

・厳罰に犯罪抑制効果はない

・貧困や精神障害と犯罪の関連性は低い

・被虐待児が非行に走りやすいというのは偏見である

・薬物がやめられないのは意志ではなく、依存症だからだ

 

 

霧のように社会に蔓延しているこれらの犯罪への間違ったイメージを払拭し、新しいそして正しい命題を示す。それが本書の狙いだったのだろう。確かに社会には犯罪への間違ったイメージが蔓延している。あたかも「鬼滅の刃は面白い」というイメージが先行して芸能人がコスプレに励むなど、独り歩きしているのと同じである。

 

 

少年事件が増えているとか、日本では犯罪が凶悪化しているとか、犯罪を抑制するためにもっと刑罰を厳しくしなければとか。確かに僕もこれらは間違ったイメージだと思っている。統計を見ればわかることだ。

 

 

厳罰化が犯罪抑制に効果があるのかどうかはわからないけれど、少年事件は減っているし、日本の犯罪だって凶悪化していない。これらの間違った命題を信じていては、政治家の安っぽいプロパガンダに乗せられているのと一緒だ。

 

 

だから著者は、安易にプロパガンダに乗せられないように、正しい意見をいいたかったのであろう。ただそれはあまりにも難しい。本書ではうまく示せていなかった。あたかも相手は犯罪である。これまでの間違った犯罪の原因を拭い去って最新の理論を示したかったのであろうが、本書を読んでいると、ウヤムヤにして終わってしまった感がある。

 

 

著者の主張はこうだ。

 

 

家庭が悪いとか、社会が悪いとか、本人に原因があるとか。犯罪の原因とは何か1つに帰せられるようなものではない。様々な原因の寄せ集め、広範囲のいろいろな要素が少しづつ寄せ集められて形成されて至ったのが犯罪である。家庭や社会など、なにか特定のものに原因を求めるのはあまりにも安易である。

 

 

そこで著者が示したのが、最新の犯罪心理学に基づくという研究結果である。それが何かというと、価値観(態度や判断とも言う)なのだ。反社会的な価値観を作り上げる物を危険因子といい、それらが犯罪や非行に走る原因になるというのだ。

 

 

危険因子は8つ挙げられていて、犯罪歴、反社会的交友関係、反社会的認知、反社会的パーソナリティ、家庭内の問題、教育・職業上の問題、物質使用、余暇活用である。

 

 

これらが複雑に絡み合って、犯罪が生まれるのだという。

 

 

だから、著者のメッセージとしては、何か1つに原因を求めるのではなく、もっと広く間口を設けなければならない、ということだろう。先天的な要因もあるし、後天的な要因もある、家庭内に問題があることもあるし、生まれ持っての病気が原因であることもある。それらの1つだけを原因として認定するのではなく、生活しているあるいは生まれる前からの一瞬一瞬が、その人間が犯罪に走るかどうかの分かれ道だというのである。

 

 

確かにそのとおりなのだろう。これまでの犯罪学は、何か1つに原因を絞りすぎた。生物的な原因とか、社会に原因を求める見方とか。たしかに個々の犯罪者一人ひとりを別個に見ればそういう帰結になるのかもしれないけれど現実はそう簡単ではない。同じような状況でも、犯罪に走る人間もいれば犯罪に走らない人間もいるのだ。

 

 

「親の子どもに対する愛情がなければ非行に走りやすい」とはいうけれど、実際に愛情のない家庭に生まれて非行に走る子どもがいる一方、逆境をバネにして世の中で成功した偉人も山程いる。

 

 

この違いは何なのか、この違いは何なのか、というのがこの本の著者の攻めたかったところだったのだろう。

 

 

答えはハッキリしない。原因は1つではなく、いろいろな要因が積み重なってできている、というのが本書の行き着いた場所だった。確かにそれはそうなのだ。現実は簡単ではなく、複雑だ。何億人といる地球の人口、その中で生まれる社会。その社会の特徴を解明してわかりやすく說明するには、具体的なわかりやすさが必要だ。

 

 

具体とはわかりやすい一方、決して世の中を言い表しているわけではない。なぜなら世の中は複雑だからだ。世の中が複雑であるにも関わらず、僕たちの頭は複雑なものを理解するようにはできていない。複雑なものと簡単なもの、両方を見せられれば簡単な方が頭に残るに違いない。

 

 

僕たちが人間である以上、物事を理解するには、複雑な社会を具体化するしかないのだ。この複雑から具体に移行する過程で、歪みが生まれるのだ。具体とは、あくまで部分である。あくまでただ1つの例である。それがすべてだと思っていはいけない。

 

 

僕たち人間の犯しがちな過ちは、部分を全体だと勘違いすることにある。具体を本質だと取り違えることにある。けれど悲しいかな、本質のまま表現されたのでは頭に入ってこない。全体のままで示されたのでは、理解できない。具体例が必要なのである。全体を理解するために、部分が必要なのである。

 

 

部分を示しつつ、決してそれが全体ではないことを常に頭に置いておくことが、物事を理解する上では重要なのだろう。

 

 

犯罪の原因にも、いろいろな「部分」がある。愛情が少ない家庭で生まれた凶悪少年もいる。薬物に走った犯罪者で、意志の弱い者もいる。貧乏だからドロボーをする、という人間もいる。あくまでこれらは例なので、決してこれを原因のすべてだと思わないことだ。

 

 

あくまで原因は幅広い、いろいろな角度からやってくる。何か1つに帰結することほど危険なこともない。レンガ造りの家のように、たくさんの要素が積み重なった結果の犯罪なのだ。そこには遺伝子もあるだろうし、友達の影響もあるだろうし、とある政権下に置かれた社会という影響もあるだろう。特定の原因ではなく、総合の結果なのだ。

 

 


 

 

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