常識がない人、本質を見抜けない人、口喧嘩に弱い人
細谷功さんの本が好きで、おそらく著書はすべて読んでいる。細谷功さんとはビジネスコンサルタントであり、著者である。「問題解決のジレンマ」「考える練習帳」「アナロジー思考」など、思考力に関する本を書かれており、どれも世の中を斜め上から見たような切り口だ。ユーモアを感じる、けれど気づきのある文章が読んでいて心地いい。
そんな細谷さんの著書に、「やわらかい頭の作り方」というのがある。
細谷本の中でも、一二を争う面白さだと思っている。ヨシタケシンスケさんのイラストが描かれた本でもあり、ヨシタケさんのファンの方にもおすすめだ。
この本の第3章に、「常識は非常識、非常識は常識」という項がある。
「私たちが『常識』という言葉を使うときは、『暗黙裏に当然と思っている自分の価値観』をあたかも世の中の正義であるかのように正当化したい場合である、ことがわかります」(本文より引用)
これはどういうことだろうか。常識という言葉を使う場面や、あるいは使ったことがある場面や聞いたことがある場面を思い出してほしい。こんな風に使われてはいないだろうか。
「こんなの常識だろ?」
「なんて非常識な奴だ」
「常識もわからないのか?」
これは往々にして相手にマウンティングしようとする言葉であり、口喧嘩の道具だ。これを言われた相手はどうなるだろう。「なるほど、たしかにオレは非常識だ」とか「これからは常識を身に着けよう」なんて心を改めるだろうか。そんなことはない。ただただ不快感やイライラが残るだけである。
本来「常識」という言葉は、自分と相手との間に共通理解がある時、あるいは数人の間で共有しているルールがある時に用いられるのだが、現実にははそうではない。「常識」という言葉が出てきたときは、その場に常識なんかなく、ただ一方的な正義の押し付けがある時だと思ったほうがいい。
同じように、「本質という言葉の本質」というのもある。これは細谷本の「具体抽象トレーニング」の第5章である。
「『本質という言葉の本質』は、『自分にとって都合が良い性質を抜き出したもの』であると言えるでしょう」(本文より引用)
どういうことか。ユーチューブを開くとオーディオブックの広告が出てきて「考えることの本質は、本を読むことにある」なんていう台詞が流れるが、「本質ですら人それぞれ」あということだ。辞書によると、本質とは「物事の根本的な性質・要素。そのものの、 本来の姿」とあるが、何が根本の性質なのかすら、見方や立場によって変わるのである。
包丁を見た時、子どもを持つ母親であれば「こんな危ないもの‥」と思うだろうし。料理人であれば「この包丁であればどんな食材を切れるか」と考えるだろうし。犯罪者であれば「これで人殺しや強盗ができるか」なんてことを考えるかもしれない。あるいは化学者であれば、「ただの鉄だ」なんて目で見るだろう。何が本質かすら、人によって違う。
世の中は嫌なことだらけである。普段生活していると、攻撃してくる人なんかごまんといる。歩けば棒に当たるように、生きていれば嫌な人に出会う。
「お前はこんな常識も知らないのか。頭の悪い奴め」とか「それが物事の本質だ。お前には見えていないのかもしれないが」なんて、あからさまに言われることはないかもしれないが、こんなニュアンスをほのめかされたことはあるだろう。
けれど安心してほしい。これら「常識」とか「本質」は、使った方が負けだ。これらの言葉は攻撃する時に使いやすい。相手を自分より下位に位置づけ、自分の立場を有利にランク付けしやすい。自分の得意な領域、自分が相手よりも知っている分野に話を持ち込めばいいからである。
だれでも得意な分野と不得意な分野があり、だれでも優れている面とそうでない面を持っている。ただそれだけなのだ。世の中に天才はいるのだろうが、それらの人は同時に欠点をも持っている人のことだ。振れ幅が大きいのだろう。
アイフォーンで世の中を変えたスティーブ・ジョブズは、人間性という面では優れた人物とは言えなかった。世の中に笑いを届ける芸人だって、女癖のせいで謝罪を余儀なくさせられている。「人は良いところもあれば悪いところもある」という結論に行き着く。
ただ、常識とか本質という言葉を一歩引いて冷静に見ることができる人は、これらの言葉を無闇矢鱈に、特にマウンティングの道具としてなど使わないだろうということは確実に言える。細谷功さんはそこにも言及していて、自分の頭で考えられる人は、口喧嘩に負ける運命になるらしい。
盲目的な人ほど強い。視野が広い人や物事に裏があることを知っている人は、世界を多角的に見られるし、ウラノウラまで読めるので、それ故に疑問を持ち、ただ単純な口撃ができなくなるのだ。見えすぎて不利になる。不利な状況に陥っている人、相手から攻撃されてばかりで受け身になりがちな人には、そういう人が多いのかもしれない。口喧嘩が強い人には、単純な人が多いのかもしれない。
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