子どもが家の財布からお金を取るのを、言い訳理論で防ぐ

2020.06.02 (火)

犯罪論という分野があって、研究者が犯罪はどうやって発生するのかとか、どうやったら防げるのか、なんてことを色々と研究しているらしい。

 

 

もともと犯罪論が始まったのは、ヨーロッパだという。比較的新しくて、18世紀。王政で自分勝手に何でもやってしまう権力者に対する手段として、犯罪論が出るのは必然だったようだ。自分が気に入らない者や自分にとって都合が悪い者を悪人と認定し、ペナルティーを課す。ペナルティーを決める時も自分勝手である。痛めつけたり自由を奪ったり。

 

 

人権という考えが社会に広まっていく中、犯罪に対する研究も、民衆が自分たちを守るために考え出したようである。

 

 

今は犯罪の原因を社会にあると考える犯罪社会学がメジャーなようであるが、もともとは犯罪の原因が個人にあるとする犯罪者学が、犯罪研究であった。

 

 

犯罪人とはどういった人間なのか。どういう身体的特徴があって、どういう性癖をもった人間なのか。遺伝的にはどうなのか、人種的にはどうなのか。そんなことを調べていったらしい。当然、現代の僕たちから考えると「倫理的にどうなの?」と思ってしまう。

 

 

というわけで、犯罪学と聞くと、僕たちは犯罪社会学を思い浮かべるわけだ。どういう環境にいる人間が犯罪を犯してしまうのかとか、環境が住人に与える影響はどうだとかを調べる。

 

 

犯罪社会学の一つに、言い訳理論というのがある。これは、もともと人間というのは犯罪を犯す可能性を秘めている、という考えに立脚している。言い訳理論では「漂流」という言葉を使っていて、「犯罪を犯したい」「ダメだと言われていることをやりたい」と思いつつ、「悪いことをすれば親に申し訳ない」「ダメだと言われたことをやると怒られてしまう」「神様が見ている」なんてことも考える。キッカケさえそろえば犯罪を犯してしまうのが、もともとの人間という生き物なのだ。

 

 

犯罪を正当化することを言い訳理論では「中和」と呼ぶらしく、黒を言い訳によって灰色にするイメージだ。「悪いことをしてしまったが、これはしょうがないことだ」「自分には責任がないんだ」という自己暗示しやすい状況がそろったときに、中和が可能になる。

 

 

中和は5つに分類できる。責任の否定、傷害の否定、被害者の否定、避難する者への非難、より高い忠誠心の誇示である。子どもが家庭の財布からお金を抜くのを例にして説明する。

 

 

まずは責任の否定。これは自分のコントロールが及ばない、何かの力によって生じたといういい訳である。たとえば、「あんな親に育てられたから、財布からお金を盗むようになった」とか「親の愛が足りていないから、心がまずしくなった」とか。

 

 

次に傷害の否定。これは、「大して被害が大きくは無いのではないか」あるいは「そもそも被害者なんていないのではないか」といういい訳である。家庭の財布からお金を抜くのを例にすると、「大した金額ではない」とか「自分の家の財布だからいいんじゃないか」といういい訳である。

 

 

被害者の否定。これは、「そっちが悪いんじゃないか」といういい訳である。「盗まれる場所に置いておくのが悪い」とか「お小遣いだってくれなかったくせに」とか「欲しい物をくれなかったじゃないか」というのが考えられる。

 

 

避難する者への非難。これは、一般的には警察や教師に対しての非難になる。「警察だっていつも悪いことばっかりしているくせに、身内に甘い」とか「先生だって生徒に対して乱暴しているじゃないか」というもの。家庭で言えば、「お父さんお母さんだってケンカしているじゃないか。悪いことをしているじゃないか」というものである。

 

 

より高い忠誠心の誇示。これはあんまり家庭においては馴染まないかもしれないが、「自分は〇〇に所属しているんだぞ」「うちのお父さんは偉いんだぞ」なんていういい訳である。

 

 

なので基本的には、子ども財布からお金を盗むのを防ぐには、これらの言い訳を反転させればいいことになる。言い訳しやすい環境をなくせばいいことになる。当てはめやすいのは、責任の否定の「あんなおやにそだてられたから」や、被害者の否定の「取られるところに置いておくのが悪いんじゃないか」や、避難するものへの非難の「お父さんやお母さんだってけんかしているくせに」であろう。

 

 

普段から家庭内を円満にして、親自信が逸脱行為をすることなく生活し、お金を取られない場所においてしっかり管理することが、子どもが財布からお金を盗むのを防ぐ方法になる。

 

 

「お金を取られない場所に置いてしっかり管理すること」に関してであるが、この防止方法について「それは根本的な解決にならないんじゃないか」と思う人がいるのではないか。「表面的な解決方法であって、子どもの心を入れ替えなければ本当の解決にはならない」のような考えである。

 

 

けれど、もともと子どもというのは漂流する生き物であって、チャンスさえあれば逸脱行為をする生き物なのだ。子どもに限らず、人間は常に正義と不正の間を漂っており、中和の機会を狙っている性質を内在しているものなのだ。

 

 

だから、「お金を取られない場所に置いてしっかり管理すること」という防止方法に関しては、「表面的だ」とか「根本解決にはならない」なんて考えなくていい。人間から不正の心を取り除くことなんてできないので、そういう意味では、そもそも犯罪や非行は根本解決を目指すものではないのだ。

 

 

 


 

 

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