女の子キャラが哲学への門を開く〜てつがくフレンズ
哲学者たちを女の子の萌え風キャラにしてしまった本。面白いですね。で、分かりやすい。印象に残ってしまうので、大雑把に広く浅く哲学の歴史を通すにはもってこいなのではないでしょうか。今まで印象に残りもしなかったものや、一度は聞いたけれどすぐに右から左だった言葉が、キャラの顔やその時のストーリーと一緒に頭の中に沈殿しています。
例えば、アナクサゴラスなんて知っている人はあまりいないのではないでしょうか。彼は、ソクラテスの先生だったそうです。で、彼がなんて言ったのかというと、「万物は回転だ」だそうです。で、読後にこれがどんな感じで頭に残るのかというと、「考えもせずに無為に学園生活を過ごす生徒は、まわします!」です。
それと「アルケー四姉妹」ってのがなんとなく印象に残っています。アルケーは根元のこと。この、根元は何か、万物は何からできているのか、ってのを突き止めようと独自の見解を言った四人を、四姉妹として登場させています。タレス、アナクシマンドロス、アナクシメネス、ヘラクレイトス。
四人は万物の根元について、タレスは水、アナクシマンドロスは無限定な何か、アナクシメネスは空気、ヘラクレイトスは火であると、それぞれ言っています。これだけ覚えられても凄いんでしょうけれど、さらにはそれぞれのバックグラウンドまで、読後は頭に残るんです。例えば、タレスはオオリーブの先物取引で一儲けしたそうです。そんな、ちょっとした背景とか、ミニ知識なんてのも、散りばめてある本です。素直に面白いので、これらのミニ知識が残るんですね。
残念なのは、古代組の話がメインだったことです。他の年代のキャラも出てきてほしいですね。ニーチェはちょろっと出てきていましたが、まだまだ足りないです。古代組の勢いで、近現代の哲学のストーリーを展開してほしいです。
哲学は面白いですね。ハマるまで若干、時間とエネルギーが必要でしたが、うまく面白さの波に乗ることができました。こんなにも散々、我々が考えたものが、古代の時代にもうすでに考えられていたものってのが、まずは悠久さを感じさせます。しかも我々の考えよりも、深くて体系化されている。どうして2500年ほど前のギリシャでこんな頭のいい人が揃ったのか。考えることが盛んになったのか。都市国家が発達したのか、不思議です。「銃・病原菌・鉄」風にいうと、余剰食糧が大量にあったからなのでしょう。考えることができる人を十分に食べさせていけるだけの余裕があったことが、食糧生産以外のことに人のエネルギーを費やすことができたから発達したのでしょう。考えることが。
何事も結局は「遅すぎる」ところから始めるしかないのかもしれませんが、それでもやっぱり悔やまれますね、。この年齢まで哲学に対して馴染みが感じられないでいたことが。「もしもっと早くて哲学に目覚めていれば」なんて思ってしまいます。これからバリバリ読みますよ。哲学関係の本。今までの分も取り戻すくらい。語れるようになるくらい。その土台になる本です。しかし、ラファエロの「アテネの学堂」って、いろいろな意味で素晴らしですね。当時の哲学者や科学者が一同に会する様子を描くなんて。しかもギリシャらしい荘厳な雰囲気の中で。私も哲学のファンになりました。
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