子どもの非行を防ぐため、いかに2つの世界を繋げるか(後編)

2019.09.01 (日)

例えば静かなカフェで、子どもが騒いでいると、非常にイライラします。せっかくの空いている時間を静かに過ごしたいのに、そんな中に子どもが割り込んできて「ぎゃー!」と騒ごうものなら、「親は何をやっているんだ!」と怒鳴りたくなると思います。この感情がイライラであり、全ての非行や犯罪に通じる感情です。この感情を対処しなければなりません。

 

 

その際に、子どもの親に対してただ「何をやっているんだ!」と思うのではなく、「自分も子どもがいたらこうなるだろうな」や「自分の親もこんな感じだったのかな」とか「自分もあの時はこうだったな」と思うことができれば、イライラする感情も途端になくなるのではないでしょうか。あるいは、「このお母さんは自分に似ているな」でもいいですし、「あの子どもは、親戚のあの子に似ているな」でもいいでしょう。そうすると、途端に親近感が湧いてくるのではないでしょうか。

 

 

子どもにイライラしていたり、親にイライラしていたりする自分が、急にしぼんでいくのではないかと思います。怒りのボルテージ、イライラのパラメーターが、ヒューンと下がってくのを体感できると思います。つまりはそう言うことなのです。

 

 

共通点を見つけてどうすればいいのか。似ている部分を見つけることで、どうやってイライラが収まるのかと言うと、この「親近感を感じること」が、非常に大きな部分を占めると思います。なぜなら、親近感を感じると、それだけでイライラが収まるからです。これは、相手と自分を重ね合わせることができる、と言ってもいいでしょう。自分と相手の輪郭をボヤけていた像が合わさっていくように、自分と相手が合わさっていくのです。

 

 

それは、仲良くなったからであって、共通点を見つけたからに他なりません。するとどうでしょうか。イライラしていた自分が、滑稽に思えて来ないでしょうか。相手に対して「静かにしろよ!」「何をやっているんだ!」と思っていた自分が、どこか馬鹿らしく思えてくるのではないでしょうか。

 

 

それこそが、2つの世界を繋げる理由なのです。子どもの非行を防ぐために繋げるべき2つの世界とは、相手と自分の世界です。相手の価値観を自分の価値観を繋げることであり、相手の境遇と自分の境遇に共通点を見つけることです。相手と自分を同一視できること。イライラさせる相手に対して「どこか自分と同じだな」と思えること。それが、2つの世界を繋げることの理由なのです。

 

 

イライラは、世の中にはびこっています。子どもの教育には子どもに対して直接「こうしなさい」「ああしなさい」と言うことではなく、暗に伝えることが大事だと言われています。直接に指示をしたところで、反発するだけなのは想像できますし、指示に従っているだけでは指示待ち人間です。それでは子育てのゴールとして、あまりにも魅力がないものではないでしょうか。

 

 

なので、子どもに対して非行に走って欲しくないとすれば、子どもの周りからイライラを取り除くのが効果的な方です。非行はイライラの末にあるのだから、子どもの周囲に存在するイライラを取り除いてやるのです。具体的には、子どもの周りにいる親が、イライラしないのがいいでしょう。相手と仲良くなることです。そうすれば、非行や犯罪に通じる負の感情を抑えることができるでしょう。

 

 

子どもの非行、世の中にはびこる犯罪、事件や事故。その根本には、イライラがあります。イライラを抑える方法は、相手と仲良くなることであり、そのためには共通点を見つけることが近道です。相手と親近感を持てるようになり、相手と自分を重ね合わせることができるようになるのです。これは、相手の身になって考えるとか、自分ごととして考えるということであり、思いやりと呼ばれるものなのではないでしょうか。

 

 

「思いやり」と聞くと道徳的で、どこか抽象的なモラルの問題で対処のしようがないように思えます。が、その解決策は、思ったよりも身近にあるはずです。共通点を見つけること。「どこか同じだな」「自分と似ているな」と思えることが、相手と仲良くなる方法であって、それが世の中から子どもの非行を防ぐ方法なのです。

 

 

ちなみに、「どこか同じだな」「自分と似ているな」と思えるには、抽象化思考という頭の使い方をしなければなりません。物事を薄くぼんやりと見る方法です。細部の具体にこだわらず、「要するに何なのか」という漠然とした芯で物事を見る方法です。抽象化思考については、また他のコラムで話ができればと思います。

 

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