非行と犯罪の違い。子どもはどうしてダメだと言われたことほどやってしまうのか

2020.09.03 (木)

非行というのは犯罪とは違う面を持っている。

 

 

簡単に言ってしまえば、非行と犯罪の違いは年齢であって、19歳未満の者が犯したものを非行、20歳以上の者が犯したものを犯罪と呼ぶのだけれど、そこには実は、年齢以外のものも横たわっている。警察官として非行や犯罪と接していると、犯罪を犯す者と非行を犯す者の違いに気づく。

 

 

確かに一番の違いは年齢なのだけれど、それでも年齢の違いは、その性質の違いにも及んでくる。非行というのは未成年が犯す行為だけに、成人が犯した行為とは違う性質を有しているのだ。

 

 

犯罪とは、どこかやむにやまれずやっている側面がある。「本当はやりたくないんだけど仕方なく」というもの。たとえばドロボー。仕事につけず、収入がなく、お金をくれる家族や知り合いもいないので生活のために仕方なく、他人の家に入って金品を盗む。確かに「やむにやまれず」ばかりで片付けられはしないのだけれど、「仕方がなく」の側面は見て取れると思う。

 

 

それに対して非行とは、「そんなことしなくてもいいのに、どうしてそんなことするの?」と聞きたくいなるものだ。やらなくていいものばかりだ。それをしなければならない、のっぴきならない理由があるわけではない。僕ら大人から見ればバカな行為なのだ。

 

 

10代というのは、バカなことをして楽しむのがスタンダードではあるのだが、そうしてバカなことをしてしまうのか。「ダメだ」と言われたことをしたくなるし、「普通はやらない」ようなことをしたくなる。危険だと思うことほどしたくなる。

 

 

度胸試しで橋の上から川に飛び込むとか、車が走っている道路脇でたむろするとか、強そうな相手にケンカをふっかけるとか。そんな、傍から見ると迷惑でバカな行為でしか無いことをどうしてしてしまうのか。

 

 

答えを言うと、それは余裕を見せたいからだ。自分にはリスキーなことをしても余裕がある、ということを、周りにアピールしたい。僕たち人間は、そういう習性を持っているのだ。

 

 

たとえばガゼルという生き物を知っているだろうか。サバンナにいる草食動物である。ガゼルの生活は、僕ら人間とは異質で凄まじいもので、少しでも気を抜くと捕食者であるライオンなどから食べられてしまう。

 

 

これは想像するだけで恐ろしいもので、いつどこでライオンが襲ってくるかわからない中で過ごしている。夜に突然噛みつかれて体が引きちぎられて死んでしまう。そんな極限の状況で暮らしいるのがガゼルだ。

 

 

このガゼル、時々奇妙な行動をするらしい。ライオンなどの捕食者から狙われているとわかると、その場でピョンピョンと空中に高く飛び跳ねるのだ。ライオンから距離を置くでもなく、その場で、である。

 

 

普通に考えれば、この行動はおかしい。というのも、ライオンから食べられてしまうようなことを自らしているからだ。生物であれば生存したいと思うし死にたくない。ライオンから食べられたくないのなら、すぐさま逃げれば良い。一目散に逃げて距離を取ればいい。それなのに、その場でピョンピョンと飛び跳ねるのである。

 

 

これはストッティングと呼ばれる行動で、空中に飛び跳ねることで、自分には余裕があることを捕食者にアピールする行動なのだ。「自分はこんなにも跳躍力がある。脚力がある。自分を襲ってもすぐに逃げられるから無駄だ」と、ライオンに示しているのだ。

 

 

これをすることによって、省エネルギーで自分の力を相手に示すことができる。実際に走って逃げては、エネルギーを消費してしまう。野生動物は無駄を嫌うので、意味のない無駄なことはしない。無駄にエネルギーを消費するようなことはしたくない。

 

 

エネルギーを消費せずに、自分の力を相手に示す方法。それが、相手に余裕を見せることなのだ。「自分は狙われても、危険が身に迫っても余裕でいられるぜ」という誇示は動物の常套手段であって、そんな行動をとることは、僕たちヒトも含めた動物にあらかじめ備えられた本能なのだ。

 

 

迷惑行為などの非行に走る未成年も、ガゼルと同じである。「自分はこんなリスキーなことをできるんだぜ」「危険が身に迫っても自分は余裕でいられるんだぜ」というアピールなのだ。体が悪いと言われるタバコを吸い、怒られるとわかっていながら規律違反をし、車にひかれるかもしれない道路脇でたむろをする。

 

 

僕たち大人から見れば「何をバカなことをやっているんだ」と思ってしまうけど、理性よりも感情や本能が勝る未成年にはしょうがない行動なのかもしれない。

 

 

犯罪と違って非行にはある種の匂いがあり、それは「どうしてやらなくても良いことをするのか」「どうしてわざわざバカなことをするのか」「どうして悪ぶって目立とうとするのか」というものだ。犯罪は「やむにやまれず」の側面があるが、非行の多くは必要性が無いものだ。

 

 

それは、わざとリスキーなことをして、自分の余裕ぶりをアピールする動物の習性から来ている。ダメだと言われている危険なことをして目立とうとするのは、その為だ。目立たなければ、周りにアピールすることにならない。自分の余裕ぶりを誇示することにならない。

 

 

いくら文明を花咲かせようと、僕たちはヒトという種であって、生命の樹形図に組み込まれた存在である。バカなことをするのは、僕たちヒトが動物の一種であることの証明である。ヒトになるよりもはるか昔から、僕たちは余裕を誇示することで生きながらえてきた。ガゼルのストッティングと、未成年のバカで迷惑な行動は一緒なのである。

 

 

 


 

 

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