母という病 〜 非行防止の子育てや原因・家庭環境、少年の心理を探る
この本は、母という病と向き合い、その人の身に何が起きるのかを理解し、そこから回復するための手がかりを提供してくれる本です。
母親とその子どもの関係にとどまらず、その子どもの人生そのものを根底から変えてしまうほど大きな影響力を持つ母という病。それは不安定な母親のもとに生まれ育てられた子どもが、いかに人生に苦しむか。子どもの人生に、母という病がいかに根ざしているか。そしてどうやったら母という病を克服できるかが書かれた本です。
この本の構成は以下のとおりです。
序章 母親という十字架に苦しんでいる人へ
第1章 「母という病」に苦しむ人たち
第2章 生きづらさの根っこには
第3章 残された傷痕
第4章 不安定な母親に振り回されて
第5章 自分しか愛せない母親とその人形たち
第6章 生真面目な母親の落とし穴
第7章 「母という病」を克服する
著者は精神科医であり、パーソナリティ障害や発達障害と向き合っている方です。
まず本書では、いかに母親と子どもの関係が本来、濃いものであるかを説いています。「親子関係」という言葉では言い表せないほど、人間的、生物的に濃く繋がった関係が、母親と子どもの関係です。
それから、子どもとはいかに母親を求める存在であるかが、本書全体を通して説明されています。子どもが親から愛されたいという気持ちは、どんなものより純粋であると著者は説きます。母親からの愛を満たされずに子ども時代を過ごした人ほど、親へのこだわりを持ち続けてしまうのです。
そして、多くの「母という病」の例が記載されています。著者独自の経験の例や、有名人を例えに出している箇所もあります。ヘルマンヘッセ、ジョンレノン、宮崎駿などです。
母という病を抱えて人には、基本的安心感が不足しています。それ故、ネガティブだったり完璧にこだわったりと、自己否定型が多いといいます。ADHDを発症してしまったり、うつだったり、自分の感情をコントロールできないのも、母親との関係に問題があると著者は言います。
本来、母親が子どもに無条件の愛を注げば母という病は発症しませんが、母という病が侵され、苦しんでいるとしたら、どうやって克服すればいいか。著者は自覚し、苦しみを吐き出すことから克服が始まると言います。また、自分も相手の安全基地になるよう努力することが大事だと言います。それから誰かを愛すること。自分の子どもでも他人の子どもでも、動物でも愛情を注ぐ体験が支えになります。
母という病に多くの人が苦しんでおり、多くの苦しみを母という病で説明できるという著者の主張には説得力があります。
全国の子ども、非行や子育てに関わる方々の一助になる一冊です。
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