イライラの原因とは
「イライラは、自己中ゆえに起きる」ということを最近、言っているので、そのことについて書いてみます。
イライラというのは、「自分の意図と違うことが起きる」という意味です。「悩み」とも言えます。悩みがあった時、人は落ち込んだり、あえて明るく振舞ったり、と選択肢をどれか選択することになりますが、その中で「イライラする」というのは、一番、やってはいけない(人間的な)選択肢ではないでしょうか。
このイライラ、人間関係が原因でおきます。というのも、世界に自分一人しかいなかったら、イライラが起きようがないからです。世界がただの島だったとして、そこに自分一人がいます。何も悩みは起きないでしょう。「自分以外の人」という選択肢が初めから頭にない状態なのです。何をするにも、相談すらしないし、相手の意図を推し量ろうとすることすらないし。すべて自分一人で完結します。
人間関係がうまくいかないから、イライラします。人間関係がうまくいくようにすれば、イライラは起きません。「人間関係がうまくいかない」というのを、「コミュニケーションにズレが生じる」と言い換えましょう。どうしてコミュニケーションにズレが生じるのか。それは、コミュニケーションをとるお互いが、自分が自己中である(ことに気づいていない)からです。
人間は、悲しいほどに、自分中心で物事を考える生き物です。他人の頭の中は見えないので、想像するしかないからです。そのことを分かってはいても、ついつい「他人も自分と同じ目線である」という前提で物事を進めてしまうときがあります。これは、防ぎようのない人間の性(さが)です。
他人がうまくいったことは「運がいいからだ」と思うわりに、自分がうまくいった事は「実力があるからだ」と考えがちです。人からお金を借りてもすぐに忘れるわりに、人にお金を貸すといつまでも覚えています。いじめた方は覚えていなくても、いじめられた方は忘れることはありません。「男性の8割は、『自分は周りよりも運転がうまい』と考えている」と言われています。ビジネスマンの8割は、「自分は他の人より上司に恵まれていない」や「自分は他の人より忙しい」と考えているでしょう。居酒屋では、仕事環境にしろ家庭環境にしろ、飲んでいるそれぞれが「自分の方がもっとひどい」というグチをこぼし合っています。
野村監督の「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という名言は、そんな人間の性への戒めでしょう。「うまくいった事は『実力のうちだ』と考えがちなので、『運が良かっただけだ』と思いなさい。うまくいかなかった事は『運が悪かっただけだ』と考えがちなので、『実力がないだけだ』と思いなさい」という戒めです。世の中の皆が皆、自分中心に物事を考えて生きているので、コミュニケーションにズレが生じるのです。
どうして私たちは自分中心に物事を考えてしまうのか。それは、立場とフィルターがあるからです。交通事故が分かりやすいと思います。交通事故の処理は、警察官が取り扱う仕事の代表的なものです。交通事故の当事者(関係者)どうしは言い争いをしていることが多いのですが、これは絶対に話が交わることはありません。ずっと平行線のままです。というのも、立場とフィルターが違うからです。
交通事故の場合、車という下界から遮られた鉄の塊の中に、当事者はいるわけです。外側が見えるとはいえ、見える範囲はフロントガラスや横のガラスの部分のみです。そんな、制限された視界の中で運転しているわけです。しかも、その鉄の塊は時速何十キロというスピードで動いているので、中からはっきりと外側を見ることなどできません。視界は横にブレ、輪郭はずれます。見ていないものも出てくるでしょう。時速何十キロというスピードで動いているので、視界はさらに制限されます。フロントガラスの一部分しかよく見ていないでしょう。これが立場ということです。もしも車の中に乗っているのが二人だったとしたら、二人同じような立場にいる、といえます。立場は環境ともいえます。一人だけでなく、複数人が同じ状況になる可能性のあるもの、それが立ち位置となります。
それに対してフィルターとは、もっと個人的なものです。個人レベルで持っている色眼鏡、とも言えるでしょう。同じ車に複数人が載っていたとしても、それぞれで考え方が異なります。それぞれの経験が固有であるがゆえです。コップに8割注がれた水を見ても、それを「多い」と感じるか「小さい」と感じるかは、人それぞれ違います。井戸の水は温度が変わりにくく、それが「冬に飲めば暖かく感じる」「夏に飲めば冷たく感じる」と感じるだけです。
こんな立場とフィルターが異なった者どうしが話し合っているので、永久に話し合いは平行線のままです。お互いに話が合わず、コミュニケーションのズレは埋まらず、イライラが生じるです。
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