一勝九敗 〜 子どもの非行を防ぐためのブックレビュー
ユニクロの社長の回想録です。ユニクロの柳井社長が、創業から本書が執筆された2003年までの主な出来事をつづった本です。
本書は、負けることに対して背中を押してくれる内容になっています。全体を通した印象は「あの柳井社長でもそうだったんだぁ」という感じなので、負けに対してある種の親近感を持てるのです。
ユニクロというと、ずっと勝ち続けているかのようなイメージです。99年のフリースの大ヒット、時代を先取りした経営スタイル、動きやすくて合わせやすいファッションなど、勝ち企業の印象があります。
しかし本書を通して柳井社長は「負け」の必要性をときます。ファーストリテイリングがここまで成長できたのは、果敢に挑戦して失敗して、その度に学んできたからだと言っています。柳井社長が率いている会社が数々の転機にさしかかってきたとき、柳井社長がどんな風に思ってどんな風に行動してきたのか。そこから自身のこれからに活かせるものが見られます。
「勝ちよりも負けから学ぶ」とはよく聞く言葉ですが、実際に負けるのはとても嫌な事です。「できれば負けずに成功したい」とも思ってしまいます。ですが、こうして柳井社長が負けた過去をつづってくれると、負けに対して親しみを持つことができます。
社会には、負けることや失敗することへの「不寛容」が充満しています。多くの人が「失敗の学びの大きさ」に気づき、そのために「失敗に寛容にならねば」と思っていると思います。ですが、なかなか私たちの中の失敗への恐怖心は小さくなりません。年とともに膨れるばかりです。
せめて子どもの世代には、私たちよりも失敗に対して寛容的な社会であってほしいです。
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