日本の暗い危機を明るい未来へ変えるには痛みが必要〜未来の年表 人口減少日本でこれから起きること

2018.07.22 (日)

 

非常にわかりやすく、理解しやすいように書かれてあります。日本の危機と、それを変えるべく明るい未来が。特に危機の方は、生々しいくらいです。この生々しい危機の描写が初めにあるからこそ、後の方で語られる対策が光るのだと思います。

 

日本の危機

 

第一部の「人口減少カレンダー」では、年代ごとに日本に迫り来る危機がわかりやすく記載されています。「2021年 介護離職が大量発生」「2035年 未婚大国が誕生」「2050 世界的な食料不足に巻き込まれる」など。

 

 

その中で私が特に興味を持ったのは、「2042年 高齢者人口が約4000万人とピークに」と「2045年 東京都民の3人に1人が高齢者に」です。この二つは私が危機感を大きく感じると共に、今まで知らなかった新しい知見を見た感じです。

 

 

まず「2042年 高齢者人口が約4000万人とピークに」です。著者はこの本を通して、この2040年代はじめが、人口減少問題の一つのピークだと言っています。団塊ジュニア世代が高齢者になるのがこの頃なのです。

 

しかも団塊ジュニアの親である団塊の世代は、後期高齢者です。団塊プラス団塊ジュニアという、多くの高齢者を数少ない働き手が支えるという、いびつな人口構造となるのです。ちなみに、

 

2015年

人口     :1億2710万人

65歳以上  :  3387万人

15歳〜64歳:  7728万人

 

2040年

人口     :1億1092万人

65歳以上  :3921万人

15歳〜64歳:5978万人

 

という数字です。

 

 

団塊ジュニアは、多くの子どもを生みませんでした。第三次ベビーブームは来なかったのです。多くの団塊ジュニアを支える、その下の世代が極端に少ないのす。

 

 

しかも団塊ジュニアの世代は、就職氷河期の世代です。就職する時期とバブル後が重なり、うまく人生を描けない人間が多いと言われています。経済的に厳しい環境の人が多いという事です。その世代が高齢者になるということは、医療費や生活保護など、支えるだけのお金が余計にかかるということです。

 

 

次に「2045年 東京都民の3人に1人が高齢者に」です。これは「人口減少問題は地方ほど深刻」「東京にいればまだ安心」という単純な話ではない、ということです。確かにこれまで東京は、地方の若者を吸い上げることで潤ってきました。ですが、その源泉である地方は枯渇します。吸い上げるだけの若者がいないのです。

 

 

東京の若者も、いずれは高齢化します。しかも、そのショックは地方よりも深刻と言えるでしょう。短期間に急激に恒例化するからです。地方では、すでに高齢化率は高まっています。しぼり取られるだけの余裕はありません。

 

 

対して東京は、全国平均よりも若いいまの状態から、高齢化が始まるのです。2035年には、高齢者率40パーセント以上の自治体がずらりと22区の周りに並ぶそうです。東京は若者の街として発展してきました。「今更高齢者が住みよい街に変わるには、莫大のコストが掛かる」と本書では紹介されています。

変えるべき明るい未来

 

暗い危機を、明るい未来へと変えるための対策も、本書では紹介されています。その中から、私が「これは」と思った3つを紹介します。

 

 

「24時間社会からの脱却」「非居住エリアを明確化」、「中高年の地方移住推進」、「第3子以降に1000万円給付」です。

 

 

まず「24時間社会からの脱却」と「非居住エリアを明確化」は、私はコアの部分で同じだと考えます。というのも、どちらも「不便・不満を受け入れること」が、いまの世代に求められるからです。

 

 

過剰サービスを見直すのです。何でも24時間開けていなくてはならないことはないでしょう。休みの日も作ってはどうでしょうか。無理を強いるお客目線から、「不便もまた良し」とする寛容的な社会へシフトすることで、労働にかかるコストを抑制します。

 

 

「非居住エリアを明確化」とは、住みなれた地域から引っ越すことを、強いるものでもあります。日本には先祖代々の土地を神聖視したり、住み慣れた土地に愛着を持ちすぎる傾向があります。ですが、そこを柔軟に捉えるのです。「今まで住んできたから」という謎のバイアスから脱し、住みやすい場所に気軽に越せるように、意識を改革しなければなりません。

 

 

次に「中高年の地方移住推進」とは、東京一極集中を是正するためです。その手段の一つとして著者が提唱しているのが、大学連携型CCRCというものです。リタイア後のまだ元気なうちに地方の大学キャンパスで学生生活を楽しみ、体が弱ってきたら、同一敷地内にある施設で最後まで暮らせる、というアイディアです。

 

 

私がこれに共感するのは、知的好奇心を満たすものが、特に高齢者には必要だと考えるからです。高齢になれば、若かった頃と同じようなものに魅力は感じなくなると思うのです。若かった頃は、形がはっきりしていて激しいもの(具体的なもの)を求めますが、おそらく人生の後の方では、知財ような抽象的なものを求めるのではないかと思うのです。

 

 

人間はデメリットばかりでは、なかなか動きません。勉強できる環境、講義を通して仲間と集える環境などがあれば、東京から地方に移るきっかけになるのではないか、というコンセプトに私は共感します。

 

 

最後に「第3子以降に1000万円給付」ですが、「このくらいインパクトがないと、なかなか少子化の流れは止まらない」ということです。今の社会では、政府が子どもを産むことを推進していることは理解できるのですが、なかなか「第3子を産もう」という気にはなりません。それは、リスクの方が目に見えているからです。

 

 

経済的な問題、健康の問題、何かと第3子以降には考え事が付きまといます。そこで、起爆剤として1000万円の給付金です。著者はこの財源の出所を、高齢者が使い切らずに残した財産を当ててはどうかという立場です。相続税を根本から変えて、国が優先的に徴収できる仕組みにしては、との事です。

 

 

というわけで

 

「高齢化して疲弊していく日本」という未来を変えるには、私たち一人一人が当事者意識を持たなければなりません。人口問題は長い目・世代をまたいで見る視点が必要です。そのくらい長いスパンが解決には必要なのです。私たちには影響が少なくとも、私たちの子孫にとっては深刻な問題です。

 

 

解決には、痛みが必要です。まだ見ぬ子どもたちのために、今社会を生きている現役の世代が、痛みを受け入れなくてはなりません。痛みと言っても、私は意識の問題だと思います。痛みの正体は、おそらく「変化」です。「変化」を痛みと捉えるか、はたまた前向きに捉えるかの違いです。

 

 

将来、日本で生活している次の世代のため、変化を前向きに捉えられる、気持ちのいい世代でありたいですね。

 


 

 

 

 

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