警察の上司から見る、素直さや優しさとは
昔、私にはこんな二入の上司がいました。
一人は数字にこだわる上司。甲上司。「俺は目に見えるものでしか評価しない。結果が全てなんだよ。どんなに頑張ったって、実績っていう結果が伴わなければ何の意味もないんだよ。君らは今月、何件検挙した? 何件交通切符切った? 決められた目標は達成できたか? 署長だって『数字にこだわって活動しなさい』って通達を出してるんだから。目標達成できない者には、俺はしかるべき措置をとろうと思ってる。」
もう一人は努力をくみ取る上司。乙上司。「私は、そんなに結果にはこだわらないですから。どんなにやったって結果がついてこない場合もあるんですから。大事なのはそこじゃないんですよ。1日が終わった時に満足感とか、『一生懸命やった』っていう気持ちが得られるかどうかだと思うんです。『悪いやつを捕まえる』っていうのが我々の本懐だと思うんでね。そこからブレなきゃ結果がついてこなくても、まぁいいとは言いませんんけど、ある程度は、ね。」
この二人の違いから、どんなものが読み取れるでしょうか? 具体と抽象、表面的なものと本質的なもの、分かりやすさと分かりにくさ、厳しさと優しさ、ハッキリしたものとモヤモヤしたもの。そんなところではないでしょうか。
具体と抽象
甲上司の支持は、数字を使うものなので具体的ですよね。逆に乙上司の指示は抽象的です。数字っていうのは具体的です。解釈の幅は一つなので、はっきりしています。ですがこの様な人にありがちなのが、「具体が善で抽象が悪」という勘違いです。もし「具体的っていうのは良い事で、それに対して抽象的っていうのは悪いこと」と考えているのならば、世界を半分しか見ていないのと同じです。万物にメリットとデメリットがある様に、具体と抽象それぞれにメリットとデメリットがあります。
おそらく世界の全ては、具体と抽象で繋がっています。これは物理的につながっているのではありません。人間の、思考とか認識というフィルターを通すことで、つながるのです。一見、物理的には何のつながりもないノートとボールペンも、文房具という抽象概念で一括りにできます。一見、何のつながりもない様に思える私とあなたも、いかようにも繋がることができます。人間という抽象概念でも繋がることができますし、もっと抽象的に生物という概念でつながることもできます。具体と抽象という世の中の見方は、非常に便利で、多くのものを説明することができます。
解釈の幅の狭さと広さ
甲上司の指示は具体的なので、人によって違った捉え方をする心配がなくなります。一ヶ月の間に切った切符の件数や、一ヶ月の間に何件検挙したかで評価しようとしているので、一律の評価が可能になり、ある意味、公平な評価が可能になります。そこに感情が入り込む余地はありません。
それに対して乙上司の指示は抽象的なので、人によっていろいろな捉え方が可能になります。解釈の幅が広いとも言えます。「一生懸命やればいい」というところをだけを捉えれば、楽なことを一生懸命やってもいいし、大変なことを一生懸命やってもいい、という事になります。一見、評価としては公平性に欠けるのですが、指示された方としては自由が効くので、発想を広げられるという機会に恵まれます。
具体的に「これをしろ」というものではないので、指示者のキャパを越えたアイディアを出すことが可能になるのです。そもそも複雑な人間社会において、人を簡単に公平に評価しようとすること自体が間違っているのかもしれません。評価には感情が入るのが普通だし、誰が見ても納得の行く評価、というのが理に背いたものなのでしょう。
分かりやすさと分かりにくさ
具体の最大のメリットは、分かりやすい事です。受けて側の考える余地がなくなるので、自動的に行動に移すことができます。ワンクッション置く必要がありません。行動を促しやすいとも言えます。よく頭で考えるばかりで、なかなか行動に移せない人がいますが、そんな人にはこの様な具体的な指示が効きます。「期日までにこれをして来なさい」と言えば、行動するしかありません。
分かりやすい甲上司の指示に対して、乙上司の指示は分かりにくいです。言っていることが曖昧です。心の中、内面を表現しようとしての結果なのでしょうが、モヤモヤして、色々な捉え方が可能です。この様な指示をされると、「自分の頭で考える」というワンクッションを置かざるを得ません。何をしべきなのか、何をするとNGなのか。抽象的な指示とは、分かりにくいのです。
表面的と本質的
甲上司の指示は、表面的です。ここが具体のデメリットとも言えます。一方向からしか表現できていないのです。警察の仕事は決して、切符を何件切ったとか、何件検挙した、とかその様な数字で表せるものではありません。それは警察活動のごくごく一部分でしかないのです。人は、夜にパトカーがゆっくり走っていれば安心感を覚えます。交番に警察官が立っていても、同様に安心感を感じます。決して目で見えるものばかりが、警察の仕事ではないのです。
それに対して乙上司の指示は本質を突いています。抽象的なので、決して分かりやすいものではないのですが、警察活動の何たるかとは、おそらくこの様なことを言うのでしょう。「悪い奴を捕まえる」と言うことです。それに対する評価といのも、いかに一生懸命やったかが重要なのであり、目に見える結果ばかりで市民県民が安心しているわけではないのです。
物事の本質とは抽象的なものです。決して具体的にはっきりと述べられるものではありません。もし具体的に本質を述べるとしたら、いくつもの事例をあげるしか方法は無いでしょう。具体的にはいくつも述べなくてはならない事例を、うまく包括的に述べる方法が、抽象的な言い方なのです。
厳しさと優しさ
具体的な指示は、相手を縛る事になるので、厳しくなります。許されるのは一本の線のみで、あとは全てNGなのです。焦点は一本の線に注がれるので、当然視野は狭くなります。本質的には許容されることでも、「具体的な甲上司の指示にそぐわない」という理由でアウトになることさえあります。これは、自己中とか頭が硬い、とも言い換えることができます。他人に自分の価値観を押し付けることです。視野が狭く、他人の価値観まで考えが及ぶことはありません。
それに対して乙上司の指示には優しさを感じます。相手に対する暖かさ、謙遜です。これは視野の広さでもあります。「いろいろな考えがある」と言う前提に立った考えなので、相手の立場も認める考えです。抽象的とは解釈の幅が広いことを意味するので、抽象的な指示をした場合、それに対する返しは、指示を受ける側の考えも多少なりとも含まれます。相手を認める、と言う考えに立脚しているのです。
抽象的に包括的に考えると、結果的に相手を許容する事になります。寛容さが、抽象的な視点には必要なのです。優しさを備えるには、「抽象的」というのがキーワードになります。
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