子どもの非行を防ぐ方法とは、ジャンプ力のようなものである(その2)

2019.09.14 (土)

目の前のリアリティのある怒りの感情にとらわれずに、冷静に相手の気持ちを想像しようとすること。それは、目に見えないものを見ようとすることだ。手で触れないものを手で触ろうとすることだ。無いものを想像することだ。「自分に対してイラつくことをした」という事実から、相手が何を考えてそのようなことをしたのか、想像するのだ。目には見えない関係性を想像することであり、繋がっていない現実と空想の世界を繋げることなのだ。

 

 

例えば、交通事故の場面。車を走らせていたら、運転していたら、突然にドスンという音がして、衝撃が車に走った。気づいたら、自分は道路を向いておらず、空中を向いていた。車がひっくり返ったのだ。よく周りを見てみると、同じようにひっくりかえている車がある。交通事故にあったのだ。

 

 

交通事故というのは、ケンカやトラブルの原因になることがよくある。交通事故とケンカやトラブルとは、つきものなのだ。というのも、交通事故とは、自己中になりやすいものなのだ。目に見えているのは自分の車の中から見える視界であるにも関わらず、あたかも空から自己全体を俯瞰していたような考えになってしまう。見えているのは自分の視界だけであるにも関わらず、相手が見えているであろうものも、分かった気になってしまう。あるいは、相手も自分と同じ世界を見ているだろうという前提で話を進めてしまう。

 

 

そんな時に必要なのが、見えない世界を想像することなのだ。自分の見えている、リアリティのある世界と、相手にしか見えていない自分にとってはリアリティのない世界を繋げることなのだ。

 

 

相手の気持ちを想像するのだ。想像するための踏み台は、目の前にある自分が見た現実である。目の前にある現実から、相手が何を思っているのかを想像することが、相手の身になって考えることであり、それを優しさというのだ。

 

 

これは、抽象的な世界に対する意識がなければ、できるものではない。具体的なものばかりを見て、具体的な世界だけに生きている人には難しいことであろう。目の前で起きていることの裏に、何があるのか。目の前で起きていることを、目の前で起きていることそのままに受け取るのではなく、その向こうに何かじぶんでは認識していないことがあるだろう、という想像。それが優しさなのだ。

 

 

「この裏には何かあるに違いない」と思ってしまっては、攻撃ができなくなるだろう。うかつな行動が取れなくなるだろう。とらわれやすい怒りに身をまかせることが怖くなってしまうだろう。ドラクエやファイナルファンタジーで遊んだことがあるが、「敵キャラがどんな攻撃をしてくるか分からない」「この行動の裏には、もっと強力な攻撃を用意しているのかもしれない」と思ってしまうと、感情的な選択をするわけにはいかなくなる。

 

 

それが優しさなのだ。感情的に動いては、失敗するのがわかっている。感情に任せた行動では間違いに発展するのが見えているから、慎重に考えて行動せざるを得なくなる。相手の手の内を想像することになる。相手の頭の中を考えるようになる。これはまさに、相手の身になって考えることであろう。

 

 

このように、優しさとは、目の前にあるリアリティのある出来事と、その裏にある概念的なことを繋げることなのだ。リアリティのある世界と、リアリティのない世界を繋げること。現実的な世界と非現実的な世界のつながりが見えるようになること。

 

 

主観的な世界から、客観的な世界へのジャンプ。目の前の怒りが湧いてくる出来事から、いかにその向こう側にジャンプすることができるのか。それが優しさなのだ。想像力のジャンプともいえるだろう。具体的な世界と抽象的な世界を繋げること。その繋がりが見えるようになること。具体的な世界から抽象的な世界へジャンプすること。それが「相手に身になって考えること」であり、優しさなのだ。優しさが社会に溢れれば、今よりもよっぽど非行や犯罪のない世界が実現するだろう。

 

 

子どもの非行を防ぐには、そんな想像力のジャンプが必要なのだ。目の前の出来事にとらわれてはいけない。足を掴まれてはいけない。自分の頭から相手の頭にジャンプして、相手の頭の中を想像する必要があるのだ。このジャンプ力を社会全体で育まなければならない。子どもの非行を防ぐとは、ジャンプ力のようなものなのだ。想像力を鍛えて、相手の頭という抽象の世界を想像できるようになることが、優しさであり、それが子どもの非行を防ぐことなのだ。

 

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