紙の本は、ホントウにマンガやYou Tubeより格上なのか

2020.10.06 (火)

僕は本が好きだ。

 

 

本を読むのが好きだし、電子書籍ではなく、できればすべて紙の本で読みたいと思う。

 

 

紙の本と電子書籍ではたしかに電子書籍の方が便利だ。端末事態の重さもさほどでもないし、一つの端末の中に膨大な数の本をしまっておける。たとえば僕はアイフォーンのKindleアプリを利用しているのだけれど、本を読むのにこれほど便利なものはない。

 

 

あらかじめ持っておくことがないからだ。どこかへ旅行なり出かける時に、旅行先で本を読みたいのならばあらかじめ本を用意してカバンに入れておかなければならない。紙の本であれば、前もって「何の本を読むか」「どのくらいの量を読むか」想定して準備しなければならない。

 

 

そのときに悩みが出てくるのだ。「この類いの本は最近いつも読んでいるな」とか「こんな時間のあるときこそ難しい本の読みたいな」とか「読みやすい本も必要だよな」とか。面倒で時間がかかる。本を読むのはその時の気分で読むのが一番気持ちの良いものなのだけれど、前もって準備しようとすると、「その時の気分で読む」ことにはならない。「あらかじめの想定で読む」ことになるので、これでは本来の読書の快楽を歪曲している。

 

 

電子書籍だとこの心配がなくて、あらかじめ「何の本をどのくらい読もうか」という準備をしなくて済む。Kindleアプリがアイフォーンに入って入れば、気分が乗ったときに読みたい本をダウンロードできる。「気乗り」が重要な読書において、「気まま」に読書体験を提供してくれるのだ。

 

 

けれど、実際に読む段階になって便利なのは紙の本だ。実際に手で触れられる紙のページをめくる現実感は、アイフォーンのディスプレイをスワイプする心もとない動作ではとても追いつかないほどの快楽を読み手に提供してくれる。

 

 

リアル会議かオンライン会議かのようなもので、いくら「オンラインで十分」とは言っても、それでも相手の息遣いが聞こえないオンラインでは、相手から受け取る情報が制限されるのと同じ。確かにオンラインは便利だし、オンラインだからこその稀有感が効率性を高めてくれる。オンラインだと余計な気遣いをする必要ない。

 

 

けれどリアルの会議では、幅広く相手の情報を受け取ることができる。おそらく相手に幅広くこちらの情報を提供できてもいるだろう。結局、オンラインがディスプレイを通した視覚だけの情報のやり取りしかできないのに対して、リアルだと五感で体験できるのだ。確かに「そこまで必要ない」かもしれないし、必要最小限であればオンラインでも良いのかもしれない。

 

 

けど現実に目の前に人がいるリアル感は、相手をよりよく知る上でオンラインの比ではない。

 

 

リアルの紙と電子書籍もこの関係に似ていて、電子書籍はたしかに便利だけれど、「本」という現実の厚みのある冊子は、ディスプレイに投影された厚みのない光加減には敵わない。車レースのゲームと、実際のレースでは勝手が違うように、紙の本と電子書籍も違う。読書も視覚だけでなく、五感で体感するものだったのかもしれない。

 

 

ところで本というのは、ホントウに特別なものなのだろうか。数ある娯楽の中でも、特に読書というのは「格別のもの」という地位を得ている。情報を得るタイプの娯楽には、読書の他にもマンガ、You Tube、インターネット、映画などがあるけれど、その中でも読書にはどこか「特別」という風潮がある。

 

著名人や博識な人には「人生で成功したいなら本を読め」とか「大事なことはすべて本が教えてくれた」のような言い方をしていて、趣味が読書の人が多いけれど、ホントウに本は格別なのだろうか。

 

 

たとえば僕は今、マンガの弱虫ペダルを読んでいる。これがまた面白い。まだ主人公の小野田が一年で、インターハイに出場しているところまでしか読んでいないけれど、ハマっている。御堂筋が面白い。初めは嫌なキャラだと思っていたけれど、御堂筋の内面が描かれるにしたがって彼も応援したく鳴ってくる。

 

 

もともと弱虫ペダルは、アニメを見て好きになった。スポ根ど真ん中で、金城の自転車に対する思いとかハコガクとのやり取りなんかは、僕に自転車競技という枠を提供してくれた。弱虫ペダルを見て、世の中のロードレーサーの多さに気づいた。

 

 

「妊婦になると妊婦が増える」のと同じようなもので、弱虫ペダルを見て自転車に興味をもってはじめて、世の中にこれほどロードレーサーが普及していることに気づいたのだ。自転車はどれもママチャリだと思っていたのだけれど、そうでもなかった。

 

 

そんな、自転車という新しい視界の枠を僕に提供してくれた弱虫ペダルは、本ではない。アニメでありマンガだ。この弱虫ペダルのマンガを読む、あるいはアニメを見るという行為は、読書よりも劣る行為なのだろうか。

 

 

マンガやアニメやYou Tubeや映画と比べて、読書というものは格上なのだろうか。読書は、マンガやアニメよりも知的な情報を与えてくれるものなのだろうか。同じ情報を得るのなら、ハードルの低いマンガやアニメの方で良質なのではないだろうか。

 

 

おそらく世の中に読書好きはたくさんいると思うけれど、「ホントウに読書は他の情報提供の娯楽よりも格上なのか」「それはどうしてか」に対する明確な理由は言えていない。

 

 

「マンガやアニメを見るより読書しなよ」「電子書籍よりも紙の本を読みなよ」というポリシーを持っ智者は多くいるけれど、いまいちそれらの「なるほど」といえるような理由はまだ誰も言えていないような気がする。

 

 

「本は情報量が深くて、ネット記事のように断片的でない」とは言われるけれど、これだけではまだ納得できない。「アニメやYou Tubeより読書、電子書籍より紙の本」の理由としてイマイチだ。果たして紙の本は、知的な趣味として最上なのかどうか。理由を探る旅はまだ続く。

 

 


 

 

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