警察組織が求める人材はどんなものだったのか
そもそも私が起業への道を歩き始めたのは、警察組織が求めるものと、私がやりたかったことが一致しなかったからでした。警察組織が求める人材に、私はなれないと思ったのです。始めは小さな違和感だったのですが、次第に危機感を抱くほど大きくなっていきました。
警察組織が求める人材とはどのようなものか。
まず、歯を食いしばってでもプレッシャーに耐える根性です。警察は色々なプレッシャーと闘いながら日々仕事をしています。
国民の公務員を見る社会のプレッシャー。「やれ警察だ。また警察だ。」という目に見えないモノです。ネットの投稿や、新聞の記事や、テレビのコメンテーターなど、直接警察個人に対するものではなく、漠然とした警察組織に向けられたものです。
現場で直接、警察官やその仕事ぶりを監視する目のプレッシャー。野次馬ともいいます。時にはスマートフォンで撮影したり、喧嘩腰に迫ってくるものもいます。目に見えないところから大雑把に警察組織を批判するのではなく、現場で警察官個人に対してプレッシャーをかけてくるのです。警察の言動を注視して揚げ足をとってきます。
仕事相手のプレッシャー。おそらく警察本来の相手のはずです。交通違反の取締りをしたり、ドロボーや粗暴な輩を捕まえたり、警察は相手から嫌われる仕事です。これらの犯人も、警察から捕まえられたくないので、あの手この手で必死で逃げます。車で逃走したり、論理的(?)にまくしたてたり、喧嘩腰にせまったり。それら犯人から警察にたいするプレッシャーです。
上司のプレッシャー。昭和の戦後まもない時代の雰囲気を今に残す職場です。終身雇用が当たり前で、年配者の指示命令には従わねばらなない雰囲気がいまだに強く残っている職場です。年配者のほとんどが、「世間ではパワハラ問題とか言っているけど、うち(警察)には関係ないよ」といまだに思っている組織です。そんな昭和の時代の先輩は、後輩や新人や浮いている人間に容赦なく厳しいのです。
これらのプレッシャーに耐え、歯を食いしばりながらも仕事を進められる、根性のある人間を、組織は求めているのです。
次に、家庭よりも仕事に全てを捧げられる人間です。
警察組織は休みがとれません。有給休暇を誰も取ろうとしません。「休みを取らないで仕事に没頭することがかっこいいし、それが警察である。」という変なプライドがあるのだと思います。幹部は公然と「私的な理由で休みを取ることはあり得ない」といまだに言っているので、ワークライフバランスもくそもありません。
当然、家庭を持っている人は、不満がたまるのだと思います。警察官の妻は、子供が病気になっても、世間が夏季休暇やゴールデンウィークの時期になっても、平然と仕事に向かう夫を見送ることになります。ですので、「警察官の妻に求められるのは理解力」だとよく言われています。どんなに家庭が忙しくても、旦那だけは常に仕事に没頭できる状態を作ること。「いいよ。行って来なよ。」「しょうがないね。」と仕事に向かう背中を押してくれる警察に忠誠心のある女性です。
ちなみに、休みなく仕事をしていて、警察官が得られるメリットは何かというと、警察官としての高揚感です。恐らく「警察官」というものには、ブランドがあって、かっこいいと感じるものなのだと思います。「悪を倒して正義を貫く。」様な。実際、「悪を倒して正義を貫く」だけの単純なものではないことは、組織にいれば誰もがわかっっているけれど、それでもそのかっこいい「警察官」をやっているという高揚感が、警察官の根底にあるメリットなのです。
最後に、階級社会に溶け込める人です。すぐに溶け込む事は無理でも、いずれは溶け込まなければ仕事になりません。
自分の役割を認識しなければなりません。私が上司からよく言われていたのは、「てめぇで勝手に判断してんじゃねえよ。」です。判断の良し悪しよりも、誰が判断したかが重要になります。仕事の中で、「それ誰の判断?」となったときに「私の判断です。」では誰も納得しませんし、「まだ最終的な判断じゃないのかな」と思われます。エライ人の役職や名前を出す事が暗黙の了解なのです。
根回しも必要になります。「聞いてねぇぞ。」と言われるのを避けなければなりません。遠回りに言うことから始めます。「悪い事ほど早く」とは言われていても、本当に急に言われる事は望まれていません。本当の事を言う前に、「今、こんな事が発生してます。まずは取り急ぎお電話で失礼します。」のような前段階が必要になります。
このような、警察の求める人材に「違うなぁ」という違和感を感じ、起業への道を歩き始めたのです。
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