鬼滅の刃のチケットとった。あのアニメの魅力は距離感の妙だろう
映画「鬼滅の刃」のチケットをとった。
僕が見に行くのは17日の土曜日。明々後日である。週末に楽しみができたことで、今週の仕事も今から頑張れる。
「鬼滅の刃」を僕はアニメでしか見ていない。原作のマンガは実は、1ページも読んでいない。初めはただただマンガを読む機会がなかったからだった。けれど今では、意識して鬼滅のストーリーを受け付けないようにしている。頑としてマンガは読まず、あくまでアニメで楽しむつもりだ。
電車とか職場とか、ときどき近くで鬼滅の話を始める人がいるんだけれど、それが気を使うところだ。そんな時は席を外す。あるいはその場を離れて、ストーリーを聞かないようにしている。少し人間関係が悪いように思われるかもしれないけれど、これもアニメを楽しむための方法。大目に見てほしい。
アニメしか知らないので、これから炭治郎がどうなるのか、僕にはまだわからない。アニメの進み具合が、そのまま鬼滅の進み具合になる。禰豆子は人間に戻るのか。鬼舞辻無惨はどうなるのか。上弦の月にはどんな鬼がいるのか。柱の面々は、どんなキャラクターでどんな技を持っていてどれほどの強さなのか。僕はまだ何も知らない。
鬼滅をはじめて知ったのは近所のTUTAYAだった。TUTAYAに置いてあるディスプレイに炭治郎や伊之助の戦闘シーンが流れていた。たしか鼓屋敷でのシーンだったけど。引き込まれてアマゾンで見るようになった。
僕は、「大正時代」というのが鬼滅の一つの魅力だと思う。大正時代というのが、いわゆるブルーオーシャンなのではないかと思う。現代と昔、日本式と西洋式がうまく混じっていて、視聴者にとってリアル感と非リアル感が絶妙な味付けなのだ。
今と同じような時代だけれど、完全に今と同じではない。現代のようなところもあるし、そうでない部分もある。見覚えのあるシーンもあるし、ないシーンもある。
禰豆子は着物を着ているし、待ちゆく人たちが着ているものも多くは着物だ。ということは「現代」ではない。今の時代、着物を普段着として着ている人はいないので、着ている服を見れば日常でないことがわかる。けれど、それほど昔というものでもない。鬼舞辻はスーツを着ているし、帽子もかぶっている。鬼殺隊は学生服のような格好をしているので、江戸時代のようなはっきりとわかるほど、今と時代が離れているわけでもない。
この「隙間を縫った」ような時代感が、僕には新鮮に感じられたのだ。近代という絶妙な時代背景。今でもない、過去でもない。「ちょっとだけ過去」という妙。
面白さのためには非日常性を出したいけれど、あんまりにも日常からかけ離れていたらリアル感がでない。視聴者にとって、自分たちのリアルと陸続きになっているから、没入感がでてくる。キャラクターや出来事に共感もしやすくなる。
ツイッターやフェイスブックでの投稿と同じだ。基本的にうまくいっている人の投稿を見ると悔しさを感じるし、うまくいっていない人の投稿を見ると心地よさを感じる。けれど、自分とかけ離れた人、たとえば名の知られた実業家が自分の成功例を投稿したとして、それを見た僕に悔しさはない。あまりにも自分と距離があるので、現実感がないのだ。
けれど、自分と同じような境遇の人間。少なくとも僕から見てそう見える人や、あるいはこれまでそう思っていた人。そんな人に「こんなに良いことが最近、ありましたぁ」とか「こんなにうまくいきましたぁ」と投稿をされると素直に悔しい。
共感を呼ぶには現実感が必要なのだ。自分たちの住んでいる場所の延長にあり、自分たちにも十分に関係する出来事だ、というリアル感があるからこそ「入れる」。
けれど同時に、完全に自分たちと同じでは、今度は面白みがない。SNSでも本でも映画でも、自分とは立場の違う遠くにいる人のことを知ることができるから、情報を得ることは面白い。身内の日常を見ても面白くないけれど、芸能人の日常を垣間見ることには面白みを感じるもの。
リアルとアン・リアルの絶妙な際(きわ)。それが大正時代を舞台に設定した鬼滅の魅力だと思う。有りそうで無い。見ていそうで見てない。同じなようで同じでない。鮮やかな距離感なのだ。
さて、今週末に公開される映画では「夢」というのがキーワードのようだ。「下弦の壱」は悪夢を使う能力のようだし。炭治郎の過去にも触れてストーリーが進行していくように、予告を見える限り思える。
アニメ版の最終話で、鬼舞辻主催のパワハラ会議でこてんぱんにのされていた下弦の鬼たち。下弦の鬼たちと鬼舞辻のやり取りは、アニメの中での一番面白かったところだ。その中で唯一「見込みのある奴だ」と認められ、パワハラの異次元から殺されずに解放された下弦の壱。原作のマンガを1ページも読んでいない僕としてはせっかく十二鬼月を見られたのに、下弦の鬼たちが描かれずに消されていったのは残念だった。ぜひ彼(彼女?)には活躍してほしい。
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