シェイクスピアのリア王を読んで老害について考えた〜リア王
「老害」という言葉がある。
これは周囲に迷惑をかける老人を指す言葉であるが、警察官をやっていると、老害に出会うことが本当に多い。警察官とはトラブルを解決するのが仕事であるので、トラブルのあるところに呼ばれる。トラブルのある現場に行くと、よくいるのが、老人の姿なのである。
老害の特徴にはおそらく3つあって、「怒りっぽい」「自分が正しいと思っている」「自分の考えを曲げない」である。
この3つの中で一番先頭に来るのは、怒りっぽいことだ。これがあるから老害と呼ばれる。別に怒りっぽくもなく、ただ単に自分が間違えているのに自分が正しいと思っているだけの老人であれば、それほど多くの害はない。近寄らばければいいだけだし、哀れみの眼差しを向けることもできる。
けれど、老害は怒りっぽいから始末におけない。怒りっぽいから老「害」となる。老害の特徴である3つの特徴は密接に関わり合っていて、自分が正しいと思っているのに現実と合わないから、怒りっぽくなってしまうのだろう。
世の中の流れは早く、最近は昔よりもさらに早くなってきたとも言われている。老人ともなれば、世の中の流れについて来ていない人もいるのかもしれない。世の中が変わっているにもかかわらず、未だに昔の価値観のまま生活しているかのような人だ。
自分が古い価値観を有しているにもかかわらず、それを周りが理解してくれないから、当人は怒りっぽくなる。周りの人から言わせれば、「そんなのは古い価値観ですよ」と言えるものなのだが、本人にとっては古い価値観でもなんでもなく、現役バリバリの価値観なので、それを理解してくれないことに苛立ちを覚える。
たとえば、「お客様は神様です」なんて価値観は、古き良き昭和の時代の価値観だという見方が定着してきている。確かに昭和のまだ経済が元気だった頃は、客に買ってもらえれば売上が上がって、それが直で幸福に繋がったのかもしれない。が、今は「お金があっても、それが直で幸福に繋がらないのでは?」という疑問がついてまわる時代である。お金以外のところに幸福を求める人が多くなった。
経済至上主義ではなくなったので、買ってくれる人よりもわかってくれる人を、世の中の人は求める様になった。故に、小売店なんかのお客に対する態度も変わってきている。「頭を下げてまで買ってもらわなくたって良い」という人が増えている。
それなのに、老人はいまだに「お客様は神様だろう」という態度でスーパーやファミレスにお客として来店するから厄介だ。思うに、スーパーやファミレスで店員に対して敬語を使わないのはどうかと思う。「このメニュー今日ある?」とか「〇〇してもらえない?」とか。
対して仲良くもないのに、というか初対面なのに「『お客と店員』という立場なら当たり前だろう」と言わんばかりに敬語を使わないのは、それだけで古い価値観を持っているように思われる。
「スーパーやファミレスで店員に対して敬語を使わないで話しかけるのは年配者の方が多い」と思うのは、僕の偏見だろうか。こういう人は、未だに「お客様は神様です」の精神を引きずっていて、だから平気で初対面の人に敬語を使わずに話しかけられるのだ。
こういう人がよくトラブルになりやすい。小売店なんてのは、店員とお客との間でよくトラブルになる場所であるが、その最たる原因は、客として来店した老人が若い店員に対して「態度が悪い」と指摘することである。(警察をやっていると、この手のトラブルが本当に多い)
僕はたとえ客と店員であったとしてもフラットな関係だと思っているし、どちらが偉いとか偉くないとか、そんなことはないと思っている。おそらく多くの人が僕と同じように思っているとは思うが、それでもそうでない考えの人もいるのだ。
いまだに「客は店員より偉い」と思っている人はいるし、そんな人の多くは店員に対して敬語を使わないし、その多くが昭和の時代の価値観を引きずっている老人なのだ。
自分の価値観の古さ、自分の考えの甘さを指摘されても、「自分の方が年上だ」という意識があるので、老人の方は簡単に折れるわけにはいかない。「あんたは年のせいで判断が鈍っている」というニュアンスの事を言われるのが、老人は得に嫌なので、余計に自分の考えを曲げなくなる。
頭の回転も弱っており、筋道立てて考えることができなくなるので、その場で間違いを指摘されても、すぐには頭を切り替えることが出来ない。
プライドも高く、もしかしたら自分が間違えていることには気づいてはいるのかもしれない。気づいてはいても、それを認めるのも癪(しゃく)に障るので折れないのだ。
「リア王」を読んで、そんな老害の事を考えた。「リア王」という作品は、リア王の老害っぷりを皮肉のネタにしている作品である。リア王とコーディリアの関係なんて、現代の日本にも未だに見られる関係だろう。
古い価値観をもっていて「年配者には当然経緯を払うべき」という父親と、育ててくれたことに感謝はすれど「それ以上でもそれ以下でもない」という娘。
「世の中は厳しい上下関係が崩れて、人間関係はフラットになってきている」とは言われているが、作品が作られた16世紀にも古い上下関係を皮肉るネタがあったことを考えてみると、もしかしたら「厳しい上限関係が崩れてフラットになってきている」というのも絶えず繰り返しているものなのかもしれない。「最近の若者は‥」が何千年も繰り返し得しているように。
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