絶対に抑えておきたい! 「非行の兆し」の鉄則
非行とは14才以下の少年(女の子でも「少年」という)がやる犯罪のことで、非行の兆しとは、非行に走る兆候のことだ。実際には非行に走っていないが、実際に非行に走る前に気づけるものはないか、ということである。「14才以下の少年がやる犯罪」とは言っても、これは教義である。厳密な意味で、である広義で言えば、犯罪にならないようなものも含まれるだろう。「生意気な態度」なんかも広義で言えば非行になるだろうし、「深夜に街に遊びに行く」というのも広義で言えば非行に入るだろう。子どもを可愛がっている親からすれば、それまで素直だった子どもが「生意気な態度」をとるようになったり、「深夜に街に遊びに行く」ようになってしまえば、それはもう、立派な非行だろう。
というわけで、ここでは広義の非行を想定することとする。広義の非行の兆しとはどんなものなのか。あえて1つ、具体的な物を選ぶとすれば、これになるのではないか。
「家の中が汚い」
これである。家の中が汚くなるということは、崩壊の兆しでもあるのだ。非行に限らず、家庭不和、犯罪、トラブル……。そんなものの兆しなのではないか。というのも、おそらく空間と人間関係というものは繋がっているのだ。すなわち、「キレイかどうか」だ。人間関係がキレイであれば、部屋もきれいになるだろうし。部屋がキレイであれば、人間関係もキレイになるのだ。人間関係がグチャグチャであれば、部屋もグチャグチャであろうし。部屋がグチャグチャであれば、人間関係もグチャグチャなのだ。
警察官をしていると、他人の部屋の中に入ることが何度もある。「夫の暴力」とか、「夫婦げんか」とか、「近所でケンカしている」とか、「息子が暴れて手に負えない」とか。そんな110番通報を受けるのだ。110番通報を受けて部屋に入ると、というか部屋に入る前から、そんな家は大抵、家がグチャグチャしている。まず、玄関の扉が開かない。どういうことか。物が引っかかって、玄関ドアが開かないのだ。ドアを開ける際には、弧のスペースが必要なるが、そのスペースに余計な物が置かれているのだ。靴とか、ダンボールとか、自転車とか。そんな物が置かれているのを見ると、予感がする。「あ、家が汚い。なるほど、人間関係も決してキレイはなさそうだな」と。
玄関ドアを開けられたとしても、そこにあるのは、積み上がったダンボールであったりする。玄関から奥の部屋へ続く通路に、棚なりダンボールなりが置かれている。さらにはその上にも色々置かれている。ダンボールが積み上がっていたり、棚の上にガラクタが山の様に積み上がっていたり。で、そんなジャングルのような玄関とその周辺をかき分けて奥の部屋、110番通報をした当人たちがいる居間に行ってみると、そこはもう、カオス状態である。私が行ったことがある部屋で、今思い出せる中で結構カオスだったのは、動物のフンと、毛と、引っかき傷だらけの部屋だ。
この家ではネコを飼っていたのだが、そのネコのフンと毛と引っかき傷が、部屋中、というか家中にあるのだ。おそらくこのネコだって、ちゃんとしたペットショップから買ってきたネコではあるまい。その辺にいるノラネコを拾ってきただけだと思われる。そんなネコが、2〜3匹、家の中を徘徊してるのである。床のいたるところに黒いフン、床を埋め尽くすかのような白い毛、壁という壁につけられた引っかき傷。こんな環境に家族が住んでいるのだから、心が荒廃しているのも分かる気がする。
それで当の本人たちは、110番通報をしたトラブルやケンカの原因については話そうとするが、このネコのフン、毛、引っかき傷については、「あって当たり前」のように気にならないようなのだ。目に入っていないのだ。認識の外側なのだ。話を聞く私としては、「いやいや、ケンカやトラブルもヒドかったんだろうけど、まずはこのネコのフンとか毛だよね」という心境である。なんか、当人たちには、目の前にある大事なものが見えていない感じ。目の前に一等当選の宝くじがあるにも関わらず、その紙切れが宝くじの当選券で、それさえあれば大金持ちになれることがわかっていない感じ。シャツのポケットにメガネを引っ掛けておきながら、「めがね〜、めがね〜」って探す高齢者のような感じ。目の前に大事なことがあるのにわかっていない。すぐそこに対処しなければならないことがあるのに認識できない。そんな感じなのだ。
で、110番通報で他人の家に行くと、よくよくこんなことがあるわけだ。大なり小なりはあるけれど、部屋の中が汚いことは「あるある」だ。だから、非行や犯罪、ケンカやトラブル。そんなものから距離をとりたいのであれば、家の中をキレイにすること。きっと人間関係もキレイになるだろう。家の中が汚くなってきたら、それは兆し。子どもがいるのであれば、それは「非行の兆し」と大きくとらえて、家を片付けるようにしてみてはどうだろうか。といっても、本当に人間関係が崩れようとしているのであれば、その家の汚さは「認識」すらできないのかもしれない。自分ではわからないから、周りの人が代わりに認識して注意するしかない。注意されてわかってくれることも少ないのかもしれないが。
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