志高く 〜 非行や子育てについて考えるためのブックレビュー
ソフトバンクの孫正義社長の半生をつづった伝記です。
伝記や歴史本はほとんど読んだことがなく、もっぱらビジネス本ばかりを読んでいましたが、この本を読んで伝記や歴史本には多くのファンがいることがわかった気がします。
その手の本を読む意義として、「今生きている人たちの悩みは、昔の多くの人がすでに体験したもの。先人の悩みやその時の心情や決断を本で追体験することで、自分の悩みを解決するヒントを得る」と言われていますが、私もこの本で悩みをいくつか解決するヒントが得られました。
その一つは孫社長が高校時代、アメリカに留学しに行く時のことです。日本には父親がおり病気だったそうです。その時の孫社長の心情です。
「病気の父親を置いて、お前は自分のことを考えていいのか」
「母親がさびしがるのはわかっているじゃないか」
「家族がこんなに苦労しているときに、ひとりでアメリカに行くつもりか」
そして、それでもアメリカ留学を決意したときの孫社長の心情です。
「坂本龍馬の心境だった。」
「自分にはやらなければならないことがある。」
「いまアメリカ行きを躊躇したら、道は拓けない。大きな義を取るためには、ときとして人を泣かすこともある。」
「父を気遣いながらも、正義の眼ははるか遠くを見つめていた。」
私は自分の状況に重ね合わせて読むことができ、自分の悩みを解決する方向が見つかりました。自分の悩みを解決する言葉を発見することができました。家族や周りの人の幸せと自分の目標と、どちらをどの程度、優先させるべきなのか。どのような言葉で自分を納得させたのか。非常に共感することができました。
自分にも目標があります。もちろん孫社長に比べたら小さい目標かもしれません。しかし、私にとっては人生をかけた目標であり、「志」とも言えると思っています。この目標を実現できれば、人生が変わるかもしれません。
しかし、いかんせん家族を不幸にするリスクがあります。この目標の実現には、収入の減少など、家族に多大な迷惑をかけてしまう可能性があるのです。
「所帯を持っている身で、このような目標を掲げることは、自分勝手ではないのか。」
「ただのワガママではないのか。」
「責任放棄、現実逃避ではないのか。」
とも思います。
しかし私の人生は、この目標でなければ道は拓けないのです。考えられる選択肢はこれだけではありません。色々な選択肢はあるのです。その中でベストな選択肢が、この目標なのです。
もちろん痛みは伴います。いいことばかりではありません。どのような道筋でその目標を達成できるのかもハッキリしません。道程があるのかないのかすらわかりません。
私自身「何バカなことをやってるんだろう」という気も起こります。毎日が「自分は本当に、この目標に突き進んでいていいのか」と悩みます。
が、この先に未来があると思うのです。「バカなこと」だと人から言われるこの先に、拓けた土地が存在していると私は思うのです。私にとって「はるか遠く」は、この目標を介した向こうに見えるのです。
この本を読んで、別世界を生きている孫社長から人生のヒントと大きな勇気をもらいました。この本を通して貫かれている「志高く」という言葉が、まさに私が得られたヒントであり、もらった勇気の本質です。
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