「あるある」に必要なのは、樹形図の根本まで掘れるシャベルだ〜賃貸か購入か判断基準はこの3つ(ちきりんブックス)
僕は賃貸派
「家は購入でなく賃貸だ!」
それが僕の持論である。理由はたくさんある。まず家の値段は高すぎる。多くの人が平気で、月収の100倍ほどの家を買ってしまう。その結果どうなるかというと、普段の生活のスリム化だ。食生活を切り詰めて、買いたいものを我慢して、子どもにも「贅沢するな」と悟らせて。それでいて値段の高い家を買うのである。まるで貧乏人が見栄のために似合わない洋服を着るようなものだ。
身の丈に合わないことをしようとするから、日頃の暮らしをケチケチしなければなくなる。これには極端な新築信仰が原因としてある。家は新築で買うのが日本社会のスタンダードだ。確かに中古物件を買う人もいるし、中古物件を売り出しているチラシも見るけれど、誰もが「できれば新築」と思っている。中古を買うことに多くの人が後ろめたさを感じている。まるで中古を買う人が「わけあり」であるかのような雰囲気。
おそらく大抵の人が、よく考えないで家を買っているのだろう。「一生で一番大きな買い物だし、どうせ買うなら新築だよね」くらいにしか思っていないのだろう。そもそも誰が「一生で一番大きな買い物だ」などと決めたのか。家などにそれほど大きな金額を与えなくてもいいだろう。
所詮は住む場所である。学問のように頭を良くしてくれるわけでもない。スポーツのように健康と運動神経を与えてくれるものでもない。早い話が、「良い家に住む」とは自己満足でしか無いのだ。たとえ安くても住めるところはいくらでもある。生活環境なぞは安価でも構わないのに、わざわざ値段の高いものを選ぶのだ。
確かに「良い家に住めば、それだけ生活の質が上がる」という人もいる。自分の家を買って、「好きなものや趣味に囲まれる生活はこれ以上無いほど癒やされる」とか「一国一城の主になれるのは何事にも代えがたい」などという人もいる。
けれど、それらはわざわざ高価な家を買わなくても得られるものだ。人間には「慣れ」という伝家の宝刀がある。何事も時間が経過すればストレスを感じなくなるのだ。服が着ているうちに体に馴染むが如く。たまたま知り合った人間と一緒にいるうちに性格が似てくるが如く。環境も、長時間ともにするうちに自分との距離が近くなっていくのだ。
それなのに、取ってつけたような理由をつけて高価な家を買うことを正当化しようとする。愚の骨頂と言える。テストで赤点をとった言い訳をしているようなもの。聞き苦しい。
だいたい、家を買ったらそれだけで終わるはずがない。ねずみ算式に出費は増えていく。「せっかくだから洗濯機も合うものを」「壁が壊れたから修理しなきゃ」「保険や共益費も払わなきゃ」と、賃貸とは比べ物にならないほど支払いが増える。オリンピック開催国の事情と同じで、当初の計算よりも出費は増えるのが当たり前だ。
売り側である営業マンも、住宅や不動産業界では怪しい者が多い。平気で嘘を付く。「家は妥協して買うもの」と言って妥協させたり、良くもない立地を「良いですねえ」と褒めて騙したり。買う側の知識が乏しいのを良いことに、自分たちが得することばかりを考えている。「売れれば後はどうにでもなれ」とでも言わんばかりに。
なにより、家を買って同じ場所に縛られるのはリスクではないだろうか。毎年のように日本は災害に襲われている。台風、地震、津波……。一生のうちで一番高い買い物である家を買ったは良いが、そこが家たるものでなくなる可能性は十分にあるのだ。「なにもかも壊れてしまって残ったのは家とローンだけ……」という状況は十分にあるのだ。家庭崩壊も災害に加えられるだろうし。
それなのに、住む場所も縛られ、生活費も縛られる。人生が縛られているているようなもので自由が無くなってしまう。
それであれば、賃貸で過ごした方がよっぽど良い。災害に襲われて住める場所でなくなったり、自分に合わなくなれば変えればいい。引っ越せばいい。「簡単に引っ越せる」のが賃貸の良いところ。職場の平社員と同じで、最後まで責任をとらなくていい。「いつ何が起こるか」とビクビクしている必要はない。住居が賃貸であれば、全てはオーナーがなんとかしてくれるのだから。
老後になって賃貸を借りれなくなったら、安価な家を買うのもいい。60歳代なり70歳代になれば、若い時とは違って、見栄で家を買うこともなくなるだろう。若い時に家を買おうとすると、年取ったときの事も考えなければなくなる。今現在と遠い未来、両方に合う家を探さねばならなくなる。予見しなければならない未来は、近ければ近いほど予見がしやすくなる。夜空の星と同じで、距離が近ければ誤差が少なくなる。「今は賃貸で過ごし、老後になったら購入」で十分なのでは。というかそっちの方が良いだろう。
クオリティ・オブ・ライフが、賃貸派の方が高いのだ。
購入か賃貸かの判断基準
……というのが賃貸派の僕の意見なわけだけど、購入派には購入派の意見があるとは思う。理念も価値観も人生も人それぞれだ。僕が購入派をバカにする理由が、すべての購入派に当てはまるわけでも無いだろう。たとえば極端に所得が高い人は、購入することの多くのリスクを回避できるだろうし。
で、この本は僕のような「賃貸派VS購入派」でしか家を見られていなかった人よりも一歩高い視点から「賃貸or購入」を論じている。すなわち、「判断基準はどこにあるのか」である。
賃貸派も購入派も世の中にはたくさんいる。それぞれが自分の論を発している。価値観が人それぞれであれば、一般的に言われている「購入すべきか、賃貸にすべきか」が、自分に当てはまるかどうかも人それぞれだ。では、その「人それぞれ」の境界線はどこにあるのか。自分には購入が合っているのか、それとも賃貸が合っているのか。その別れ際とはどこなのか。それがこの本の主張である。
思考の言語化能力
僕はこの著者が好きで、著者として出版された本はすべて読んでいる。ブログやツイッターもチェックしている。この著者の文章はわかりやすく、読んでいて問題を自分ごととして考えることができる。それはおそらく、著者がうまく考えていることを文章にすることができているからだと思う。
僕たちは文章を書く時に妥協していて、考えていることを隅々まできっちりと言語化できているわけではない。言語化には限界がある。たとえば、「キレイな絵を見た時の感動を文章にしろ」と言われたって、できるわけではない。同じように、「恋に落ちた時の感情を文字に……」「懐かしい景色に会ったときの気持ちを言葉に……」などと言われたって、完全な具現化は不可能だ。
「完全な具現化はできない」という前提から、「いかに具現化できるか」「どうすればできるだけ言語化できるか」が、文章を書く際の課題になる。永遠のテーマだ。円周率と同じで完全なものはない。だから、いかに近づけられるか、いかに言語化できるかが文章を書く上では問題なのだ。
僕は、この著者の本を読んでいる際の「自分ごととして考えられる問題意識」は、著者の言語化能力が優れているからだと思う。深いところまで突き詰めれば、おそらく人間誰もが似たようなことで悩んでいる。生活している環境は違えど、結構皆んなが思っていることは同じなのではないかと思う。表面には別々の穴があるように見えても土中で穴どうしが繋がっているようなものだ。
この著者は、思考の深い所までうまく言語化できるため、根本を問題提起することに成功しているのだと思う。表面だけをすくうようなことをせず、気持ちの底まで言語化のシャベルを入れることができる。だから、多くの人にとって共通して持っているような「あるある!」と思える問題までたどり着けるのだ。
動物の樹形図のようなもので、動物には多種多様なものがいるけれど、その根本は一つに修練される。気の遠くなるような年月をかけて進化してきた動物も元は一つだったであろう。人間の思考も多種多様に見えるけれど、根本の所では一緒。その根本まで掘れる言語化能力があるから、僕なんかが読んでも「それそれ! わかるわぁ!」と共感できる文章なのだ。
極めて言語化能力が高い著者である。
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