3歳女児が放置され死亡。母親は男性と鹿児島旅行。ネグレクトは理解できない事件なのか

2020.07.08 (水)

 

大田区の女性が、保護責任者遺棄致死容疑で警視庁に逮捕された。この女性は3歳女児と二人で暮らしていたが、ネグレクトだった。女児を自宅に残し自分は8日間、知人男性と鹿児島に旅行していたという。

 

 

この記事に対しては、当たり前だけれど否定的なコメントが多く投稿されている。「自分のお腹を痛めて生んだ子どもだろうに、理解できない」とか「小学生の兄弟を留守番させるのにも気が引けるのに3歳児を一人って‥」とか「この行為は許しがたい。母親失格だ」とか。

 

 

けれどよく考えてほしい。本当にこの母親の行動は理解できないものだろうか。本当にネグレクトは理解できない行動だろうか。

 

 

確かに子どもを死なせてしまったことは罪だ。許されるものではない。

 

 

だけど、たとえ自分のお腹を痛めて産んだ子どもだとしても、子どもに対して腹が立つことなんて親であれば日常茶飯事なのではないだろうか。

 

 

生物学の視点で見るとこの母親の行動は、極めて理にかなった行動をしている。「理解できる」し、「わかる」ものなのだ。

 

 

この母親も我々も、みんな動物である。動物の行動はどれも自然淘汰という言葉で表現することができる。自分の遺伝子をより多く残そうとするのだ。

 

 

交尾をして子どもをつくった後、僕たちは選択を迫られることになる。「この子どもをどこまで育てるか」という選択だ。

 

 

というのも、僕たちはより多くの遺伝子を残したいので、自然とできれば次の交尾のチャンスを伺いたいと考える。子どもは一人よりも二人の方が良い。より多く作ろうとするのが本能だ。けれど、これに「待った」をかける要素もあって、もしも作った子どもがキチンと成長しないのあれば、次々と子どもを作るよりも、作った子どもに対して投資する道を選ぼうとする。

 

 

子どもを外敵から守り、食料を与え、成長を促す。そうしないと、子どもを多く作ったとしても、それらの子どもが成長しないのであれば、自分の遺伝子は受け継がれない。我々が持っているエネルギーには限りがある。限りあるエネルギーの中でやりくりするしかない。次々に子どもをつくるか。それとも作った子どもに対して投資するかの選択である。

 

 

僕が言いたいのは、この大田区の女性にしろ他のネグレクトをする親にしろ、ネグレクトは「理解できない」ものでもなんでもなく、極めて動物的で、理解のできる行動だということだ。

 

 

子どもにイラついたことがない親なんていない。親だって一人の人間である。自分の幸福を求めたい。自然淘汰だって個体どうしの闘争だ。親子間の争いでもあり、配偶者間の争いでもある。

 

 

人間は易きに流される生き物である。簡単に環境に慣れてしまうし、自分が置かれている状況が当たり前だと考える。ほとんどの親が、子どもを持ったその時は「大事に育てよう」と心に誓う。自分が苦労をしてでも子どもがまっとうな人間になるように教育しよと神様に約束する。

 

 

不妊治療が話題になっている。「妊活」という言葉もある。赤ちゃんがなかなかできない夫婦もあり、不妊治療の末にできた子どもであれば、なおさら可愛く思うだろう。自分よりも自分の子どもに投資しようと思うに違いない。

 

 

けれど、人間は慣れるものだ。自分がその状況から抜け出せば、すぐに過去のことなんて忘れてしまう。今いる自分の状況が当然だと思ってしまう。苦労して赤ん坊を手に入れたとしても、赤ん坊と一緒にドタバタと生活していれば、不妊治療をして「赤ん坊がほしい。自分だったら子どもにツライ思いなどさせない」と思っていたときの感情を忘れてしまう。

 

 

「この子どもがいなかったら自分はもっと自由なのではないか」と考えるだろう。「子育てに時間とエネルギーを忙殺されなかったら、自分にはもっと交尾のチャンスがあるのではないか」「本当はもっと自分は幸福になれるのではないか」と考えるだろう。

 

 

それは生き物として当然の思考なのだ。動物として、哺乳類として、理にかなった考えなのだ。なぜなら、より多くの遺伝子を残したいと考えるからだ。作った子どもをしっかりと育てるか、それとも子どもを放って他に交尾のチャンスを求めるか。どちらがより多く自分の遺伝子を残せるかの選択を迫られる。それは生物として避けて通れない道なのだ。

 

 

「選択」とか「考える」という言葉を使っているが、なにもテスト問題のように、我々人間は考えて選んでいる訳ではない。これは本能に組み込まれているものなので、遺伝子レベルでの話。自分が考えて選んでいるように思わせて、実は自分で考えて選んでいるわけではない。僕たちは自分たちが思っているほど自主的に、自由に物事を考えてはいない。考えさせられているし、選ばされている。

 

 

このような極めて動物的な思考を認めて、むしろ「誰しもネグレクトをしてしまいそう」という思いを正直に表に出せる社会の方が、極めてまっとうな社会なのではないかと思う。「子どもを放っておいて自由になりたい」という願望は、至極当然である。「より多くの遺伝子を残したい」と願う欲求は、普通である。

 

 

こういう自分のホンネを表に出さず、聖人君子ぶりばかりを良しとする社会だから、誰にも打ち明けられず、悩んだ末に取り返しのつかない事件になってしまっているのだ。タテマエではなく、ホンネを表に出せる社会を願う。

 

 

 


 

 

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