子どもが非行に走るのを防ぐ鉄則は、「どれだけ◯◯を広げられるか」だ!
子どもが非行に走るのを防ぐには、余裕をもつことである。「子育てに余裕なんか持っていられない!」と思っているのであれば、それだけで視野が狭くなっている証拠だし、余裕がないからこその「余裕なんか持っていられいない!」という意見なのであろう。
ではどうやって余裕を作ったら良いのか。どうすれば子育てにおいて余裕なんか作れるのか。それは、セーフティネット次第だと思っている。「どれだけセーフティネットを広げられるか」なのだ。セーフティネットとは、子どもの預け先である。主たるその先は保育園や幼稚園、ということになるだろう。保育園や幼稚園に預けて、自分は仕事をしてお金を稼いだり、好きなことに時間を使うことで、余裕が生まれたり、幸福感を感じて余裕を感じるようになるだろう。
セーフティネットを広げる際に一番の障害となるのが、「子育ては自分ですべき」という意識である。「自分の子どもなんだから、できるだけ子どもと一緒にいることが子どものため」と思っていはないだろうか。子どもを預けることに抵抗を感じてはいないだろうか。子どもを他人や施設に預けている間に、自分が好きなことをして楽しむことに罪悪感を感じてはいないだろうか。
その罪悪感が、子育てに余裕を持てない一番の原因なのだ。「子育てには実の親が一番関わるべき」と思っているから、いつまでたっても子育てに余裕が持てないのだ。子育てに余裕をもてるかどうかは、スタンスの問題である。認識の問題。気持ち次第である。おそらく、お父さんよりもお母さんの方が余裕を感じないと思うのだが、それはなんでもかんでも「しっかりしよう」と思っているからなのではないか。時間通りに子どもにご飯をあげ、しっかりと手をつないで外出して、テレビは何時間以内……などと具体的なことに囚われているから、余裕がないのではないか。
確かに子どもが可愛いのはわかる。生物学的に、女性は男性よりも子どもに対する愛情が多いのだろう。自分が子どもに対して近い位置にいたいのもわかる。子どもを自分に対して近い位置に置きたいのもわかる。が、当たり前のことではあるが、近くによると余計に見えなくなるのだ。映画館では、スクリーンに対して近くの席よりも、遠くの席の方から埋まっていく。近すぎるとスクリーン全体を見るのが疲れるのだ。そんな余裕のない状態で映画を見ても面白くないだろう。遠くから、余裕を持って全体を見られる位置から見るから、映画も面白いのだ。
これは対人関係、子育てにも言えることで、子どもに近づけば近づくほど、子ども全体を見るのが大変になる。視野に占める子どもの範囲が広くなるので、疲れるのだ。ひと目に全体を見られなくなる。首を振らなけれが、子どもの姿を全て見ることが難しくなるのだ。
子どもは可愛いのだが、だからといって子どもとの距離が近すぎると、自分のためにならない(余裕がなくなる)し、子どものためにもならない。全体を見られなくなるとは、まともな判断ができなくなる、ということだ。一部分のみを見て判断してしまうことになる。見えやすい子どもの一部分のみしか視野に入らなくなるので、そんな狭い範囲のみを見て生活することになる。一例のみを見ていては、全体を見れない。
たとえば、柴犬しか知らない人が「イヌとは何か」と考えると、茶色くて、耳が三角形で立っていて、しっぽが丸まっていて……という判断をしてしまう。だがイヌは柴犬だけではない。シェパードもいるし、ドーベルマンもいるし、シベリアンハスキーもいる。茶色だけではなく、黒いイヌも白いイヌもいる。耳が三角形で立っているイヌだけでなく、丸耳のイヌもいるし、垂れ耳のイヌもいる。しっぽが丸まっているイヌだけでなく、長いしっぽのイヌもいるし、短いしっぽのイヌもいる。
柴犬しか知らない人と、もっと多くのイヌを知っている人。どちらがイヌに詳しいのかといえば、多くのイヌを知っている人だろう。どちらがイヌに対してまともな判断をするのかといえば、多くのイヌを知っている人だろう。視野の広さが重要なのだ。そして、視野を広くするとは、離れることである。物理的にもそうだし、心理的にもそうである。
「子どもが大事だ」「子どもが一番だ」「子どもが全てだ」と思っていては、心理的に離して見ることができない。まともな判断を子どもに対してすることができなくなるのである。
子どもの非行を防ぐには余裕が必要なのだが、余裕を作るにはセーフティネットが必要だ。セーフティネットを作るのに一番必要なのは、心理的な距離である。「いつも一緒にいることが大切だ」とか「しっかりと子育てをしなければならない」と考えていると、作れるはずのセーフティネットを、作れなくなってしまう。見逃してしまうのだ。
どれだけセーフティネットを広げられるか、ではあるのだが、その要は「距離を置いて見られるか」である。自分のため(余裕を作る)にも、子どものため(広い視野)にも、心理的に離れることが重要なのだ。
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