相手を読書沼に引っ張り込むための必要悪。本を紹介する際のネタバレはオッケーなのか

2020.11.08 (日)

僕は本が好きでよく読んでいる。

 

 

最近読んだ本だと、遠藤周作の「沈黙」は逸品だった。近頃どことなくキリスト教に憧れていて、そんな僕の気持とうまくマッチしたのかもしれない。僕のキリスト教に対する興味というのは、「死への恐怖を打ち消してくれるのではないか」という期待だ。

 

 

昔、マンガ「聖闘士星矢」を読んでいたときに、こんなシーンがあった。病床にて死への恐怖で苦しんでいる老人に対して教皇「何も恐れることはありません。これからは神との生活が待っているのです」と諭すシーンだ。

 

 

老人は死ぬ間際だったのだけれど、死への恐怖から苦しんでいた。どうにかしてその苦しみを拭い去ってやりたいと周囲の人は考えていて、そこへ丁度、教皇が現れたのだ。教皇は優しく老人へ語りかけ、死への恐怖を拭い去ってやる。結果、先程まで怯えて苦悶の表情を浮かべていた老人が、満足したような顔で眠っていく。その時に僕は、「宗教は死への恐怖を拭い去る方法なのか」と思った。

 

 

最近、そんな「聖闘士星夜」のワンシーンを思い出す。段々と僕も年をとってきて、死を意識することが多くなってきたのかもしれない。二度と目を開けることのない永遠の無。再び戻ることのない意識。どのくらい戻ることのないのかというと、百億年の百億倍の百億倍でもまだまだ始まりに過ぎないくらい。

 

 

そのくらい永遠に意識が戻ることのない死を考えると、これまで死んでいった、つまり死を乗り越えて向こう側へ行った先人たちがすごいと思う。僕は最近、死に対する恐怖が積み重なってくるので、「もしかしたらキリスト教の教えなら、死への恐怖を和らげてくれるのでは?」と期待してしまう。キリスト教に対する間違った見解かもしれないけれど。

 

 

そんなことを考えていたから、遠藤周作の「沈黙」が僕には刺さったのだ。キリスト教は遠藤周作の人生のテーマにもなっていて、他にもキリスト教関連の作品を彼は残している。他の作品も読みたい衝動に駆られる。

 

 

で、「沈黙」があまりにも面白かったものだから、人との雑談の中でその人に勧めようとしたのだ。けど同時に、「はて、どこまでストーリーを話せばよいものやら」と迷ってしまった。

 

 

江戸時代に宣教師が日本にやってきて切支丹の農民たちを救おうとする。宣教師も農民たちも役人に捕まってしまって踏絵を強要される。さてどうなるのか。というのが大まかなストーリーである。当然、これだけ話しても相手には興味を持たれないから、もう少し話すことにする。

 

 

タイトルの「沈黙」とは、実は神の沈黙のことだったのだ。はじめは「切支丹たちが隠れるように生活する」という意味での沈黙かと思ったけどそうではない。

 

 

貧乏だけれど敬虔な切支丹たち。そんな彼らが踏絵を拒否して、拷問されて、そして死んでいく。であるにも関わらず、いつまで立っても神は黙ったまま、という意味での沈黙なのだ。

 

 

熱い信仰心を持って来日した宣教師のロドリゴも、あまりにも酷い光景に心が変わっていってしまう。「主よ、どうしてあなたはいつまでも黙ったままなのですか」というロドリゴの嘆き。そういう意味での「沈黙」なのだ。

 

 

とまあここまでストーリーを暴露してしまえば、相手にも興味を持ってもらえるかもしれない。本当は、もっと話したいことがある。もっとこの「沈黙」には、僕的には刺さった内容が含まれている。そこを熱く話したいところだけれど、それだと本の内容を全て暴露することになるので控えて話した。

 

 

本好きな人が他人に本を薦める時、「どこまで内容を話したらいいのか」というのは、永遠のテーマのように思える。内容を完全に伏せては、本の魅力を伝えられない。かといって内容を暴露してしまっては、その本を読む際の面白みが無くなってしまう。読む意味が無くなってしまう。前門の虎、後門の狼。いったいどちらが優れた勧め方なのか。

 

 

僕の考えとしては、全て暴露してしまった方がいいと思っている。内容をすべて明かして、ネタバレも含めて。その本の魅力を伝えるため、相手に本に対して興味を持ってもらうためであれば、できる限りのことは話しても構わないと思っている。

 

 

確かに、相手に読んでほしいと思っている「その本」1冊のことを考えれば、内容を全て話しては読む楽しみが無くなってしまう。たとえ本の魅力を伝えるためとは言え、ネタバレしてしまっては、明かされた方は「そういうネタだったんだ」とわかるので、実際には勧められたその本をわざわざ読むことは無いのではないか。

 

 

けれど、1冊本の内容をすべて話してしまったからといって、「本」というカテゴリーそのもの魅力がなくなるわけではないだろう。「読書」という広い視点で見た場合、本1冊の内容をすべて話してしまうという犠牲はあってもいいのではと思っている。

 

 

推し本1冊のネタバレを囮にして、相手を本の世界に引っ張るのだ。結果、相手が本の魅力に気づいてくれれば、あるいは読書の魅力を再発見してくれれば、それに越したことはないのではないかと。

 

 

だいたい、本の魅力というのは自分で見つけるものだと思っている。人から勧められた本が、そのまま自分の人生を変える一番の本になることはほとんどない。自分にとって本当に為になる本とは、自分で見つけた本だ。自分の人生を変える本というのは、誰からの勧めでもなく、自分で発見した本がなることが多い。

 

 

ネタバレされることによって、1冊の本が面白い本のリストから消えることがあったとしても、読書全体から見れば、それは大した犠牲ではないのではないだろうか。1冊の本をネタバレされたからといって、その人がネタバレによって活字沼にさらに深く入りこんでくれたとすれば、1冊のネタバレくらい、想定範囲内なのではないだろうか。

 

 

本の世界はとてつもなく広い。最古の文字は、メソポタミアの楔形文字、あるいは中国の甲骨文字だと言われている。これらが発明されて約5千年。これまで数多くの本が世に出回ってきた。それを思うと、僕らの人生を変えることになるべく一冊というのは、いくつもあるのだろう。本は星の数ほどあるのだから、本とのいい出合いは他にもあるよ、ということだ。

 

 

というわけで、相手を読書の世界に引っ張り込むためなら、ネタバレ覚悟で推し本を紹介するのは構わない、というのが僕の考えである。他人に本を勧める際の参考にしてほしい。

 

 


 

 

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