老いる家 崩れる街 〜 子どもの非行を防ぐためのブックレビュー

2017.09.06 (水)

 

 

「このまま住宅を大量につくり続けて大丈夫なのか・・」

 

 

湾岸エリアに次々に立てられるマンション群、古い建物を壊しては立てられる住宅街の戸建て住居。これらを見て「人口減少の社会なのに」と、あなたも不思議に思ったことがあると思います。

 

 

本書は、その疑問に明確に答えてくれます。読んだ後には「やっぱりな」という感想とともに、過剰住宅社会の進行を止めなければならないと考えるはずです。

 

 

なぜ次々に建てられるのか

 

 

高層マンション戸建て住居が次々に立てられるのは、「売れている」からです。

 

 

住宅の供給側である住宅・建設業界が、特に分譲タイプを大量に立て続けている理由は、初期投資が短期間で回収できるために事業性を確保しやすく、住宅を引渡しは後の維持管理費の責任も購入者に移るために事業リスクが低いのです。

 

 

住宅・建設業界は、基本的には、常に建物をつくり続けないと収益を確保しにくいビジネススタイルなのです。

 

 

高層マンション

 

 

湾岸エリアは高層マンションの乱立で、住みにくいエリアになっている。人口の過密で公共施設が足りない。たとえ展望を目当てに高層マンションを買ったとしても結局は陣取合戦なので、後から立てられる他のマンションに展望を阻害される。

 

 

高層マンションゆえに災害に弱い。高層階は消火活動ができない。電気が止まればエレベーターや給排水施設が動かない。資産価値が下落するリスクもある。管理が難しい。住民同士の関係が稀有。

 

 

郊外の新築住宅

 

 

郊外の新築住宅も生活しにくいものです。「車とネットがあれば大丈夫」という声もありますが、本当でしょうか。住民が歳をとって車が運転できないようになった途端、ネットではまかなえない生活の部分に様々な支障が出てくるのです。

 

 

ロードサイドの大型ショッピングモールも、いつなくなるかわかりません。生活の基盤とはいえビジネスなので、採算が合わなくなればいつでも閉鎖されてしまいます。

 

 

もし分譲や新築を買ったばかりの人や、これから買おうとしている人には特に頭の痛い問題ですが、過剰な住宅供給は喫緊の問題です。不動産という観点から社会を見る目を養うことのできる一冊です。

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