オレオレ詐欺対策。どうすれば不審な電話に注意できるのか
オレオレ詐欺による被害が続いている。全国的にまだまだ発生しているし、今後も決定的な打開策は出てこないだろうと言われている。というのも、オレオレ詐欺が「だますか、だまされないか」という極めてシンプルかつ原始的な方法だからだ。
インターネットを使ったテクノロジーありきの犯罪ではない。どこかの組織の内部情報を知らなければ実行できないような特殊性をもつ犯罪ではない。
犯罪に使うのは電話だけ、である。日本全国に普及していて、昭和の時代から僕たちが身近に、当たり前に存在しているもの。それでいて、今なお生活の必需品である。なくては困る。情報の伝達手段として安価で、素早くて、誰でも使いこなせる。電話の手軽さとオレオレ詐欺は、お互いに頼りにしている相棒のようなものかもしれない。
「だますか、だまされないか」でしかないので、警察がやるべきことは「だまされない」ように注意を促している。警察はしきりに一人ひとりの高齢者に訴えかけている。テレビで、新聞や雑誌の広告で、拡声器で。「不審電話に騙されていはいけません」「『あれ?』と思ったら110番」のようなことを繰り返し訴えかけている。
思うに、警察のこれらの言葉はなかなか高齢者に届かない。というのも、だまされる人というのは、オレオレ詐欺犯から不審な電話が掛かってきても、それを「不審な電話」と認識しないからだ。詐欺グループから怪しい電話が掛かってきても、それを「あれ?」と思わないからだ。
怪しいと思えば誰だって110番通報をするに違いない。不審に思えば、誰だってキャッシュカードを手渡したり現金を振り込んだりしない。なぜオレオレ詐欺犯罪が成立するのか。どうして被害者はキャッシュカードを手渡したり、現金を振り込んだりしてしまうのか。
それは、不審な電話を「不審」と思わないからだ。怪しい電話を「怪しい」と思わないからだ。
たとえばこれは、仕事でよく使われる「わからないことがあったら先輩に聞け」に似ている。
僕は以前、警察官をやっていた時に、とある空港の警備をしていたことがる。空港内に立番ポイントをいくつもつくり、それらのポイントに警察官を配置して警備するのだ。立番の警備は24時間なので、警察官は1時間から2時間で交代をしながら警備をしていた。
僕はそこの空港の警備にあたって間もない頃に失敗をしたことがある。交代時間になっても立番のポイントにたどり着けなかったのだ。というのも、その時に僕が立番するのは夜中だった。昼間、空港内では多くの扉やドアが開放していて出入りが自由なのに対し、夜間、それらの扉やドアは閉まって鍵をかけられてしまう。自由に出入りできなくなるのだ。
空港内は広くて、初めて行った人には迷路のように目に映る。僕もそうだった。だから、「これは空港内の道順を覚えないと、道に迷って立番ポイントまで時間内にたどり着けなくなるぞ」と思った。だから、昼間の内に道順を覚えた。先輩にくっついて歩いて、空港内のだいたいの地図を頭に入れた。最低限、待機場所から立番ポイントまでは行って帰って来れるようにはしたつもりだった。
ところが盲点だったのは、「夜間は扉やドアが閉められて施錠される」ということ。そんなことは思いもしなかった。だから夜間、立番ポイントに行こうとして、開けようとしたドアが開かなかった時はあせった。遅れたら、先に警備についている先輩にこっぴどく怒られる。けれど扉が施錠されていて、向こう側にいけない。結局はいろいろと回り道をして、夜間の道順を探して、20分ほど遅れて立番ポイントについた。
案の定、こっぴどく怒られ、そのときに言われたのが、「わからなかったら聞け」だった。
この言葉には、聞いた瞬間から違和感を持った。というのも、僕は「わかっているつもり」だったからだ。昼間に道順を覚え、ポイントまでたどり着けるという自身があった。夜間は道順が変わっているなど露にも思わず、自分は知っているものだと思っていた。夜間に道順が変わるのなら、先輩がそう教えてくれればよかったのだ。
「わからないから聞け」という言葉を使ったこの時の先輩は、僕がわからないのをそのままにしていて、周囲の人に聞けないでいて、そのまま勤務していたと思っていたのであろうか。先輩のこの認識は間違いで、僕は自分がわからない事をわからなかったのだ。
この事例と同じで、オレオレ詐欺に引っかかる被害者は、不審な電話に対して、それを不審と思わないから引っかかるのだ。怪しい電話に対して、それを怪しいと思わないから引っかかるのだ。
「不審」とか「怪しい」という言葉を使ったアドバイスでは抽象的すぎて、役立つ情報になっていない。「怪しかったら110番」も、「不審に思ったら110番」も当たり前すぎるのだ。
これを改善するにはアドバイスを具体に落とす必要がある。「不審」とはどういうことか。「怪しい」とはどんなことか。被害者が認識可能な範囲内に収まるように、言葉を変える必要がある。
例えば、「電話でキャッシュカードの話題を出されたら110番」とか。「市役所職員から電話が掛かってきたら110番」という風にである。「家族以外から電話が掛かってきたら110番」でもいい。
何が不審なのか。何が怪しいのか。被害にあう人は、その注意点が認識の外にあるから、不審電話を不審と思わないし、怪しい電話を怪しいと思わない。結果、詐欺犯に現金を振り込んだり、キャッシュカードを手渡したりしてしまう。
認識内の言葉で伝えなければならない。具体的な言葉で伝えなければならない。わかる言葉で伝えなければならない。それが、警察が全国のオレオレ詐欺被害者予備軍に伝える際の、オレオレ詐欺犯罪を撲滅するための注意点なのだ。
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