子どもの非行を防ぐのに、おすすめの哲学入門とは
子どもの非行を防ぐのであれば、哲学を読むのが良いのではないか。哲学である。どうして哲学なのか。というのも、哲学は面白くて簡単だからである。まずどうして簡単なのか、から説明する。哲学というと「とっつきにくい」というイメージがあると思うが、そうではない。というのも、哲学に関する入門書が山のように本屋にはあるからだ。
確かに哲学は幅が広く、哲学の世界にいる人は、モンスターのような人もいるだろう。モンスターとは、難しい言葉をしゃべって、難しい文章を書いて、人に気を使ったり(読みやすい文章を書いたり)、それでいてとびきり頭のいい人たちである。だが、それと同時に、「そうしたハードルの高さをどうにかしたい!」と思っている人たちもたくさんいるのだ。私もそうだ。こうやって、「とっつきにくい」と思われている哲学について発信することで、多くの人が哲学の優位性と手軽さに気づいてもらえればと思っている。それと、とてつもなく読みやすい哲学の本を書いている著者もいるのだ。私のオススメはこの人である。
この本を書いている飲茶さんだ。この著者の良さは、なんといっても文章がフランクで読みやすいことだ。本というのにはジレンマがある。読みやすい文章にすればするほど内容が薄くなるし、内容をこくすればするほど読みにくい文章になってしまうのだ。というのも難解な言葉を丁寧に説明していったら、とてつもない膨大な量の本ができてしまう。だから、あんまり深入りせずに、海辺の浅いところでピチャピチャと水遊びするだけのような哲学入門の多いわけだが、そのなかでこの本、この著者の本は、異色である。海辺の浅いところでピチャピチャするような感じに見えて、実は深い海のそこまで見せてくれるのだ。「海に入らずに遊んでいても、深い海の底の様子までも体感させてくれるような本」なのである。
おそらくこれは、著者が自分独自の切り口を全面にだした文章だからだと思う。著者が哲学に精通していることは間違いない。そうでなければ、そもそもこれほどの文書をかけないからだ。それなのに、「読みやすい」のはどうしてか。それは、おそらく著者が、著者独自の切り口を大切にしているからだろう。「自分はココが大事」とか「自分はこんな風に解釈した」というものを前面にだした文章だから、読みやすく仕上がっているのだと思う。だから、もしかしたら、他に哲学に精通している人に言わせると、「この著者の切り口は間違っている」とか「勘違いしている」とか「説明が不十分だ」という評価になるのかもしれない。
けれど、である。私は、この著者のとったアンバイが抜群であると思っている。読みやすさと、内容の濃さ、これを、とてもいい感じでブレンドしていると思うのだ。海辺にいながら、深海を泳いでいる魚を、要所要所でとって来る感じである。読みやすい文章でありながら、哲学の要所要所を抑えているのだ。そういう意味では、抜群の「入門書」である。繋がりやすいのだ。読みやすいことで、哲学に対するハードルを下げている。要所要所をおさえることで、他の哲学本を読む際に、ステップにすることができる。他の突っ込んだ内容の哲学本を読んだ際に、「これは飲茶さんの入門書で触れていた内容だな」と既視感んを持つことができるのだ。
一回読んだことがある内容と、初めて読む内容では、頭に入る大きさも違ってくるだろう。初めてだと、なかなか頭に入らない内容でも、一回読んだことがあるないようであれば、よりスッと頭に入ってくるはずだ。それに、一回、飲茶さんの哲学入門を読むと、頭が哲学寄りになっているのだ。頭が哲学脳になってしまうのだ。下地が十分であり、他の突っ込んだ内容の哲学本を読んでも、拒絶反応がでないようになるのだ。
で、「どうして哲学を読むことが子どもの非行防止になるのか」であるが、一歩引いて世の中を見られるようになるからだ。「ああ、非行とはそういうものなのだな」「世の中はそういうものなのだな」と、ある意味、冷めた目で社会を見られるようになるからだ。例えば新幹線の中で、「新幹線とはどんな乗り物なのだろう」と考えていても新幹線の全体像は見えてこない。駅のホームから新幹線を見て初めて、「ああ、新幹線とはこんなものか」とわかることができるのだ。哲学とは、考えについて、全体像を見させてくれる。普段、なかなか気づかない「考え」についての全体像である。「ああ、自分の考えはこれだったのか」と、気づくことができるだろう。
この客観視が大切なのである。考えに関する客観視である。一歩外側から眺めるよう視線を持つことが、それを克服するには大切なのだ。迷路の中では迷いやすいが、高い台に登って迷路を上から眺めると、出口が見つかりやすいだろう。非行という迷路を抜けるには高台に登ることが必要であり、高い台に連れて行ってくれるのが哲学なのだ。
哲学の入門として、この本、この著者はおすすめである。ぜひ読んでみてほしい。
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