警察官とは生物学者のことか。眺めているのはどちらも自然淘汰だ
警察官という仕事は、ケンカとは切っても切れない関係にある。扱う仕事のほとんどがケンカに由来しているからだ。上手く当てはまる言い方がよくわからないでいるが、ここで言うケンカとは、闘争、競争、トラブル、言い争い、対立という類のものである。
警察官は犯罪や交通事故を主に扱う仕事。犯罪では最近オレオレ詐欺の勢いがとどまらないが、これなども人間どうしの対立であって、ケンカの類である。ケンカとの違いは、暴力という直接の対立か、騙しという間接的な対立かの違いとなる。
ドロボーというのも人間どうしの対立であって、ケンカの類である。これも暴力的な直接の対立とは違うが、コソコソとした表面的には軟化させた対立である。生存競争ともとらえることができる。
他にも、あおり運転とか、家庭内暴力とか、夫婦喧嘩とか、近所トラブルとか。公務員の仕事とは社会を最低限うまく回るようにすることだし、その中でも警察官の仕事は上手く回らない原因になっている個人や集団と直接に相対する仕事である。ケンカ、闘争、競争、トラブル、言い争い、対立‥が、警察官が向き合っているものである。
このケンカというものは、良くも悪くも社会のガンである。無くそうと思っても無くせるものではない。というのも、ケンカこそが生物の極めて根本の部分だからだ。それは、自然淘汰(より優良なものだけが残っていくという競争)という言葉でうまく表現できる。
推定三千万種。これは、地球上に存在する動物の種類である。約4300種。これは、地球上に存在する哺乳類の種類である。何億年という昔に地球上では生命が生まれ、動物が出現し、ヒトの祖先は1400万年前にオランウータンの祖先から分かれた。
これだけの種類の生物が、これだけの長い期間、しのぎを削って争っているのが、生命であって、動物であって、哺乳類なのだ。我々人間も、自然淘汰という競争から逃れられるものではない。
「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」という本があって、これは身体的、思考的な男女の違いを、進化生物学の視点から読み解いた本である。
この本の第二章には「男女の利害対決」というタイトルがつけられているが、主に夫婦間の違いについて述べた章となっている。どうして夫婦間の対立が起こるのか。どうして(特に男性は)浮気をしてしまうのか。そんなことが進化生物学の視点から説明されている。
ちなみに、男が浮気をしてしまうのにも進化生物学上の理由があって、
・オスはメスほど、胚や受精卵に投資していない。
・オスはメスと違って、たくさんの交尾の機会を得た方がより多くの子孫を残せるチャンスがある。
・オスは自分の子どもに対して、メスほど「自分がこの子どもの親である」という確信を持てない。
というものだ。
この本に載っていた面白い言葉の1つに、以下のようなものがある。
「自然淘汰とは、種(あるいは個体群)同士の闘争だけでもなければ、異なる種に属する個体間の闘争だけでも、同種個体の世代間または異性間の闘争だけでもない。自然淘汰は親と子供の闘争でもあり、配偶者間の闘争でもあるのだ」
ジャレド ダイアモンド. 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか (Japanese Edition) (Kindle の位置No.320-322). Kindle 版.
一般的に「自然淘汰」というと、種を残すことを優先に考える行動のことを思い浮かべがちである。「自分の種を残すために他の種と競争する」とか「種を残すために自分は犠牲になる」とか。個人よりも種全体(社会)を考える行動をするかのように思ってしまう。
が、そんなことはない。種全体を残す‥というよりも、まずは自分という個体なのだ。自分という個体が遺伝子を残すことをまずは優先的に考えるのが、哺乳類であり動物であり生命である。自然淘汰とは、まずは個体に作用する。
こう考えると、警察官が扱う仕事も、生物学者が扱う仕事も、見ているものは同じなのではないかと思えてくる。
おそらく生物学者という人は動物を観察するのが仕事なのだと思う。ライオンがインパラを捕食したり。ヌウの群れの中で、弱いものが川の中でワニに捕まったり。ニホンザルの群れの中で、力の強いものがボスになって、さらにはボスの世代間闘争があったり。鳥の求愛表現だったり。そんなことを見るのが生物学者の仕事だと思うが、基本的には警察官もこれと変わらない。眺めているのは、自然淘汰という枠の中の出来事である。
あおったあおられたでトラブルになる運転手。「テレビの音がうるさい」「子どもの声がうるさい」と言っていがみ合うご近所どうし。相手をだまして自分が生存競争上の利を得ようとするオレオレ詐欺犯人。「自分は忙しい」「自分にはやりたいことがある」と言って、子どもの育児をお互いに押し付け合う夫婦。
これはどれも自然淘汰という枠の中の出来事と考えられる。自然淘汰とは、種全体を考えるような社会的な行動ではなく、まずは自分のことを考える極めて利己的な行動のことだったのだ。そう考えると、警察官が扱っている仕事も、生物学者の仕事も変わらない。お互いに眺めているものは同じだったのだ。
「ヒトかヒト以外の動物か」という違いはあれど、その向う側にあるのは、自然淘汰というどうしようもないほど大きくて根本的な、あらかじめプログラムされた本能なのだ。
警察官と生物学者には共通点がある。お互いに眺めているものは「自然淘汰」なのだ。
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