バキのテイストで読める思考の頂上決戦〜史上最強の哲学入門
こんな熱い哲学本があっただろうか。こんな分かりやすい哲学本があっただろうか。うまい具合にシンクロニシティしている。「分かりやすさ」とあ「熱さ」が。熱いから分かりやすい。グラップラー刃牙の男の熱さを、うまく哲学の説明に取り入れている。著者がグラップラー刃牙をリスペクトしているからこそのテイストだと思われる。
私は哲学なるものに興味を持ったのは、ここ半年くらいの間だ。本にして3冊目くらいだと思う。哲学関係のものを読むのは。今までは入門的な本を読んでいて、「これからはそろそろ個別の哲学者にスポットライトを当てた内容の本も読もう」と思っていたところである。で、この本に出会えてよかった。ざっくりとどんな哲学思想があるのか。どんな哲学者がいるのか。哲学とはどんなものを問うものなのか。そんなざっくりとした内容が、この本から読み取ることができた。
それはやはり、刃牙のテイストがあったからだろう。お互いに著者と読者、お互いに共有しているものがあると、話がスムーズに流れやすい。コミュニケーションの基本は話者の頭の中のイメージを、いかに読者にそのままのイメージで伝えることができるかだ。話者がうまく文章や言葉にできるかどうかわからないし。読者もうまく文章や言葉から話者のイメージを読み取ることができるかどうか分からない。
けれど、共通の興味があると、それを媒介にしてイメージを共有しやすい。著者と私との間に、「刃牙」というクッションがあって、そのクッションがうまくイメージ共有の角を取ってくれている様だ。お互いにゴツゴツした崖の上に立っていて、間に「刃牙」という柔らかいポイントがある。このポイントを通して、イメージを受け渡しをしている様だった。
純粋に読書が面白かった。ただ単純に、本が楽しかった。本当ならば難しい内容なのであろう。だって「哲学」である。誰もが言っているではないか。「何回なヨタ話で、結局何の役に立つのか分からない」と。確かに油断すると、何のことについて話しているのか分からない内容だ。気を抜いてしまうと、何回なごちゃごちゃとした海の底に沈んでしまいそうになる。
だけど、そこで海面まで引き上げてくれるのが、刃牙テイストである。「あれ? なんだか、何の話か分からなくなってきた」って思って、さらには「全然分からん。もうダメだ」と思って、「閉じるボタンを押してしまおうか」「本をパタンと閉じてしまおうか」という時に、刃牙テイストが出てくるのである。あっぷあっぷになっている私を、空気のあるところまで連れて行ってくれるのだ。「あっ、刃牙っぽい」というセリフや文章が出てきて、「ふーっ」っと深く息をつけるのだ。
行ったことはないが、サハラ砂漠の中を行進するようなものなのかもしれない。哲学という何回な思想の砂漠。その中を最後まで読もうと、哲学の中に興味を見出そうと、哲学を勉強しようと、行進している。だけど更新は楽ではない。日照りの中を、砂だらけの中を、歩き続けなければならない。食料も尽きた。水も尽きた。「内容がもう分からん!」って時に、なんだか昔、刃牙で読んだことがある様な言葉が出てくるのである。恵みの雨とか、そんなものをイメージしてもらえばいい。
とにかく、刃牙のテイストがあるおかげで、小難しい哲学の話を興味を持って読むことができた。漫画の勢いで哲学入門の本を駆け抜けられた。
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