「弱虫ペダル」新開隼人に見る、優しさを育む方法とは

2020.10.12 (月)

「オレが闘いにこだわり勝利をおいかけるあまり忘れてきた そこには何かがあった」

 

 

「非行や犯罪をなくすには優しさが必要で、それは物事にこだわらないことだ」と僕は常々いっている。けれど、なかなか抽象的でわかってもらえない。そこで今回はモデルを起用しようと思う。「弱虫ペダル」のキャラクター、新開隼人(しんかい はやと)だ。

 

 

弱虫ペダルの原作はマンガで、自転車競技をコンテンツにしたものだ。ただしアニメや映画にも展開されていて、アニメもスポ根ど真ん中で面白い。主人公は小野田坂道という高校生。自転車に乗って秋葉原に通う中で自転車の才能が磨かれ、見いだされ、自転車競技部に入部することになる。

 

 

小野田が通うのは千葉県の総北高校。総北高校は県予選を通過してインターハイに進み、前回優勝校である神奈川県の箱根学園と優勝を競うようになる。新開隼人は、箱根学園の3年だ。

 

 

自転車競技の選手タイプは、スプリンターとクライマーに分けることができるようだ。クライマーとは坂道を登るのが得意なタイプで、一般的には小柄で細身な選手が多い。それに対してスプリンターとは平坦な直線を得意とするタイプで、一般的には大柄で筋力のある選手が多い。新開隼人は、箱根学園のエース・スプリンターになる。

 

 

新開の魅力は、実力があるにも関わらず、それをおくびにも出さないことだ。中学の時点ですでに多くの戦績を上げており、高校入学時にはもう実力者だった。一年で競技自転車部のレギュラーに選ばれたにもかかわらず、「辞退、しちゃってもいいですか?」と言ってレギュラーを辞退している。そんな飄々(ひょうひょう)とした人物だ。

 

 

けど元々彼は、そんな飄々とした人物ではなかった。レース中は、鬼と形容されるほどの形相でペダルをこいでいた人間だ。勝利に飢え、常に優勝を目指し、そのために他のすべてを犠牲にするような性格だった。

 

 

けどそんな新開が変わる出来事があって、それは中学の自転車レースで、レース中にウサギを引いてしまったことだ。前を走る選手を追い抜く際に、道路脇の草むらから飛び出してきたウサギをよけきれなかったのだ。飛び出してきたウサギにからんで落車した彼はすぐにレースに戻り、そのレースは優勝することができた。

 

 

けれど帰り道にそのコースを通ると、引いたウサギの傍らに仔ウサギがいるのを見てしまった。自分がレースに集中するあまり、優勝にこだわりすぎたあまり、子どもと一緒にいた母ウサギをひき殺してしまった。子どもから母親を奪ってしまったのだ。それ以来、彼は鬼の形相を封印。レース中も飄々として、勝利にこだわりがないかのような態度で挑むようになった。

 

 

(「弱虫ペダル」より引用)

 

「弱虫ペダル」では、そんな新開が過去を振り切り、レース中に鬼の形相を取り戻す様が描かれている。ライバル校の実力者と競争する中で封印を説いたのだ。マンガでは勝利にこだわる気持ちを取り戻し、他選手と競う姿が、どちらかと言うと肯定的に描かれている。「それほどまでに皆んな、優勝したいんだ」「それほどの接戦なんだ」というのを前面に出す狙いがあるのだろう。

 

 

けれど僕は、この「勝利にこだわってウサギを引いてしまった」から「物事にこだわらず飄々とするようになった」の変化が面白かった。「優しさ」や「こだわらないこと」の例として、この新開の対比は使えると思った。

 

 

新開のこだわりは自転車競技の勝利だったが、何事もこだわりを持つと優しさが無くなってしまう。新開も、ウサギに対して優しさのない走りをしてしまった。出てきたのが動物だったからピンと来ないかもしれないが、「人間の子どもだったら」と考えてみよう。草むらから飛び出したのが人間の子どもだったら、よりわかりやすいのではないか。新開の勝利へのこだわりが、子どもを傷つけることになるのだ。

 

 

こだわりは、他の全てを軽視する。「弱虫ペダル」にも、「勝利以外は何もいらない」ような人間がたくさん出てくる。「僕は母親が死んだくらいでペダルゆるめたりはせんよ!?」なんていうセリフを吐く選手も出る。何かにこだわりを持つと、人間関係を崩壊させ、極めて自己中な性格になるのだ。

 

 

それが絶対的に悪いことだとは言わない。時や場所によるし、それぞれの価値観や生き方次第だ。けれど優しさという観点からすれば、間違いなく避けるべき態度である。

 

 

僕は、犯罪や非行をなくすには他人への優しさが必要だと思う。で、それには「こだわらないこと」が必要だと思っている。物事の一点だけを見て、他の一切が視界に入らないような見方でなく。十分に対象から距離をとって、他のものも一緒に視界に入れるような。崇高なものを一つ作るのではなくて、全てをフラットに見るような見方だ。

 

 

「エーススプリンターね。ププ ごめん正直ボク そういうカタガキ興味ないわ」

「ああ、オレもひけらかすつもりはないよ 御堂筋くん」

 

 

という会話が「弱虫ペダル」の中にはある。新開が箱根学園のエーススプリンターであることを、他校の選手が揶揄したのだ。けれどそんな挑発に新開は乗らなかった。彼は実力者であるのに、それをおくびにも出さない。もしも新開が勝利にこだわる性格だったらプライドが邪魔し、相手選手の挑発に乗ったとこだろう。この挑発でケンカやトラブルになっていたかもしれない。

 

 

けれど新開は挑発を受け流した。こだわりのない性格だったので、ケンカやトラブルを回避できたのだ。こだわりのない性格は、ケンカやトラブルを回避する。一年でレギュラーをとっても辞退するし、相手選手とのトラブルも回避する。新開は、競争とはまた別の価値判断で動いている。

 

 

「優しさ」や「こだわらない」の接点は、「弱虫ペダル」の新開隼人を例に見ることができる。

 

 


 

 

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