非行を防ぎ、素直な子どもへ

「タバコを異様に嫌う人って なんなんですか？　 タバコだけ叩く人がいます。 酒の方がよっぽど危険です。 車は更に危険です。 煙草だけ叩かれるのは理解できません」

 

 

私もタバコは特に嫌いです。

 

 

私の場合、タバコが嫌いな一番の理由は「生意気に見えるから」です。口にくわえる動作や仕草って、どこか生意気に見えるんですよ。たとえば私は、若い時に格闘技が好きでした。その際に気になっていたのですが、マウスピースを口にくわえて入場する選手が生意気に見えて嫌いでした。

 

 

リングに入場してくるときに、わざとマウスピースを口にくわえる選手がいたんです。今もいるのかな。入場する前にマウスピースを口の中に入れてしまえばいいものを、口にくわえて半分見せて入場するんです。本人はおそらく格好いいつもりでしょう。周りで見ていてあの行為を「格好いい」と思う人もいたのでしょう。けれど私としては、「格好いい」よりも「生意気だ」と感じた。

 

 

おそらく「口に何かをくわえる」という行為が、どこか余裕を見せているようで生意気に見えるのです。ガムを噛むのが生意気に見えるのも同じ理由だと思います。以前、メジャーリーグに挑戦した伊良部投手が、会見の際にガムを噛んでいて問題になりました。もちろん、スポーツ選手がガムを噛むのには理由があるのでしょう。「ボールに集中できる」とか「余計なことを考えなくて済む」とか「リラックスできる」とか。もしかしたら「自己暗示」とか「げんかつぎ」なんて理由もあるかもしれません。

 

 

けれど、「ガムを噛んでいない」よりかは「ガムを噛んでいる」方が生意気に見えます。さらには、噛んでいるガムを前歯にくわえる。噛んでいるガムを吐き出す。噛んでいるガムで風船を膨らませる。なんて仕草をすると、さらに生意気さが増します。

 

 

その生意気さが、私にはマウントをとっているように見えて、なんだか嫌なのです。見ていて不快なのです。近くにいて嫌悪感を感じるのです。こちらの存在を軽視されているような気分なのです。

 

 

「オレにはタバコを吸うだけの余裕があるんだぜ」のような。「まだまだ格好つけるだけの余裕があるんだぜ」のような。「お前の存在なんて、オレにはどうってことないぜ？」のような印象を受けます。

 

 

警察官をやっていた際に時々経験したことがあります。自分が不利な立場、弱い立場のときほど、喫煙者ってタバコを吸いたがりますよね。

 

 

車で交通事故を起こして、どう考えても加害者の方なのに、事故現場で事情聴取中にタバコをくわえ始めるとか。たむろしている若者に「迷惑だから」と注意していたところ、おもむろにタバコをくわえ始めるとか。警察署で犯人として聴取中に、「お巡りさん、タバコ吸ってもいい？」なんて言ってタバコを取り出したり。

 

 

そういう行為を見ていると、どこか反抗意志の象徴としてタバコを示しているように見えるんです。

 

 

自分にとって不利な状況の中、タバコを吸うことによって完全にお手上げであることに反旗を翻しているように思えます。つまり反省していないように見えるってことです。

 

 

口では「反省している」と言っている人がいるとします。でもその人が、そんなことを言っているそばからタバコを吸い始めたらどう思います？　周りで見ている人間は、「反省していないなコイツ」と思いますよね。

 

 

交通事故の原因を作った加害者が、被害者を目の前にしてタバコを吸い始めたらどう思います？　「被害者感情を逆なでしている」と思いませんか？　「被害者をバカにしている」と思いますよね？　少なくとも自分の行為を反省しているようには見えませんよね。

 

 

なので、タバコを嫌う一番の理由は「危険だから」では無いんです。もちろん「危険だから」という理由もあるでしょう。「生意気に見えるから」よりも「危険だから」という理由の方が、公共性がありそうです。「生意気に見えるから」という理由の方が多分に主観的です。それに対して「危険だから」という理由には客観性があります。タバコの危険さは広く認められていますし。

 

 

けれどタバコを吸う人やタバコをくわえる人に対する不快さは、独特なものです。酒を飲む人や車を運転する人には感じない不快さが、タバコにはあるんです。

 

 

タバコの煙も嫌なんですけどね。洋服を洗わなきゃならなくなるんですよ。煙のニオイってなかなか落ちなくて。おそらくタバコを吸う人自身は、気付かなっているでしょう。確かに焼肉屋に入っても同じようにニオイは服につきます。けれど自分が吸っているわけでもないのに、他人のせいで洋服にニオイがつくのが嫌ですし。他人のせいでわざわざクリーニングに服を出さなきゃならないのも嫌ですし。

 

 

というわけで、タバコを嫌う理由でした。危険度もありますし、ニオイの問題もあります。ですが一番の理由は、それが生意気に見えるからです。タバコが生意気に見えるのは、口に何かをくわえる仕草が生意気に見えるからです。マウスピースを口にくわえて入場する格闘家が生意気に見えるのと同じようなものです。