SUVに傷をつけたくない本末転倒ぶり。怒りは執着が生むものだ。

2020.12.03 (木)

僕は、怒りとは執着だと思っている。

 

 

先日、こんな話を聞いた。僕の友人Aが、車を傷つけられたのである。Aは駐車場に車を止めていたのだが、他の車がAの車の隣に駐車したのだ。そのときにぶつかってしまった。ドアを開けた際に、ドアがAの車のボディにぶつかってしまった。

 

 

幸い、その人は当て逃げなどせずに事故を申告したので、Aはその場で相手から謝罪されたらしい。めでたしめでたし……だとは思うが、Aはかなり怒っているようだった。

 

 

僕もAの車の傷を見せてもらってけれど、小指の爪ほどの傷だった。多少ボディが凹んでいたのかもしれないが、かすり傷ともいっていい具合だ。

 

 

僕は、車は消費財だと思っている。確かに車というのはカッコいいし、男であれば車のカッコよさを誰もが認めるところだと思う。買ったままの車はキレイだし、できればそのままの美しさで所有していたいし、走らせていたい。

 

 

けれど、「そのままの美しさで」というのはないものねだりである。車は本来、道路を走るものであり、道路を走る限りそこには予想しきれないものが存在する。飛び石だったり、歩行者だったり、対向車だったり。それらの間をすり抜けて車を綺麗なままにしておこうというのは、シワが無い肌のままで年を取りたいと望むようなもの。何より塗装なんてのは自然劣化するものだ。買った状態のままで放置しておいても、ボディ表面の美しさは剥げていく。

 

 

しかもAの車はSUVである。オフロードを走るための車なのだ。SUVは、車高を高くしたりして、悪路を走るのに都合のいい格好をしている。確かに最近では「シティよりのSUV」なるものも存在する。見てくれのカッコよさはSUVのままに、悪路走破性には優れない車だ。悪路走破性がいいということは、通常のアスファルト道路を走る上では無駄が多く、どちらかと言うと向かない。見た目だけSUVで中身は通常の車というのも存在する。

 

 

けれど、いくらシティ走行よりのSUVと言ったところで、結局はSUVなのだ。悪路を走ってなんぼの車だ。車高だって高いし、それなりのタイヤを履いている。悪路を走れば、ボディに傷だってつく。それなのに「車を綺麗なままにしておきたい」というのは、おもちゃを飾っておくようなものだ。

 

 

ディズニー映画「トイ・ストーリー」の主人公ウッディは、子どもが遊ぶように作られたカウボーイ人形だ。おもちゃは子どもと遊んでこそ幸せなのであって、棚に飾られていたり、箱にしまわれていただけでは幸せを感じられない。遊ばれてこそのおもちゃなのだ。

 

 

「トイ・ストーリー2」に登場する悪役アルはおもちゃマニアで、ウッディを綺麗なままに保存して高く売ろうとした。塗装し直したのはいいが、ガラスケースに保存しておこうとしたのだ。悪路走破性を売りにするSUVを「綺麗なまま維持しておきたい」と望んだAは、おもちゃをガラスケースに入れて保存しようとしたアルのようだ。それはSUV本来の使われ方ではない。

 

 

つまり、「SUVに乗っているのだから傷はつきものだろう。小指ほどの小さなキズでガタガタ言うな」というのが僕の意見である。

 

 

これはAも理解していた。Aは僕にこう言う。「それはわかります。確かに僕も、人からこの話を聞いたなら同じことを言うと思います」と。僕はコクンとうなずいた。でも、Aのその先がの言葉がいけなかった。続けてAはこう言ったのだ。「だけど、あの車は買ったばかりなんです。まだ愛着があるんです。だから僕は怒っているんです」と。

 

 

怒りというのは、執着があるところに生まれる。

 

 

もしも車を傷つけられたのが他人の車だったなら、Aも笑い話として応じていただろう。「SUVに乗っているのだから傷はつきものだろう。小指ほどの小さなキズでガタガタ言うな」と、僕と同じことを言っていたに違いない。

 

 

傷つけられた車が、自分の車だったから怒ったのだ。他人ごとの話でなく、自分ごとの話だから怒ったのだ。まだ傷つけられた車に執着を持っており、「大事にしたい」と思っていたから怒ったのだ。

 

 

執着とは、距離が近いという意味だ。大事に思っているとは、近くで対象を見ていることであり、それだけを見ていること。他のことは視界に入らない。自分にとって対象は2つとない存在であるから、傷つけられると怒りが湧き上がる。「替えのきかないものをこんなにしやがって」と、やられた行為が自分の中で大きくなるのだ。

 

 

怒りは執着が生むものなのだ。

 

 

僕は、犯罪も非行も怒りが生むものだと思っている。犯罪や非行のあるところには必ず怒っている人がいる。怒りがなくなれば、犯罪や非行もなくなるのだ。

 

 

では怒りどうして生まれるのか。執着が生むのだ。相手との近い距離感が、怒りを生むのだ。相手を近くで見ると視界にいっぱいに感じられて、周りが見られなくなる。相手が強大なものに見える。

 

 

怒りをなくすには、距離を開けることだ。相手を全体として見るのではなく、あくまで全体の中の一部として見る。そうすると、たとえ傷つけられたとしても「替えがきく」と考えられ、不正に対する怒りもそれほど大きくならない。

 

 

Aは自分の車に執着するのではなく、「車なんてどうだっていいよ」と冷めた目で見られていれば、怒りも湧き上がらなかったのだ。

 

 

怒りを生むのは執着である。ライフスタイルもそう、家族もそう、恋人もそう。何事も執着せず、距離を開けること。そうすれば相手が車でなくて人間であれば、束縛してしまうこともない。結果、執着しない行為は相手のためにもなる。相手のための行為であれば、それはもう「優しさ」とも言えるだろう。

 

 

怒り対策には、執着しないことだ。

 

 


 

 

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