副業家はダーウィンの実践者だし、シュールレアリスムのインスピレーションは文章にも言える〜ソフィーの世界・下巻
「なるほど、そういうことか」と。
何日か前に、「ソフィーの世界」の上巻を読んでそのコラムをアップしたけれど、早合点だったかもしれません。というのも、上巻を読んだだけでは、ソフィーの世界の表面を読んだだけにしかならないからです。
キグナス氷河風に言えば、「凍りつかせたのはたった皮一枚」でしょうか。
というのも、このストーリーの目玉は本と現実のオーバーラップにあったからです。上巻ではまだ、そのオーバーラップが表面に出てきていません。伏線は色々とあったらしいのですが、全然気づきませんでした。
哲学関係の本を読んでいると、自然と「自分も神様に作られた被造物であって、作品の登場人物程度の存在かもしれない」なんて考えると思うんですけど、その考えを手助けしている形になります。このオーバーラップは。
現実と本の世界のオーバーラップとは別で、この本の哲学史としての一面もあるんですけど、そちらは勉強になったところがいくつかあるので紹介します。
「重要なのは問うことであり、答えを急ぐことではない」
これはチャールズ・ダーウィンの言葉だそうです。この本では、珍しくチャールズ・ダーウィンを哲学者として組み入れていました。僕もはじめてダーウィンの生涯をざっくりとではありますが読みました。やはりダーウィンも葛藤があったのかもしれません。自分が結論をだした、「人間は猿から進化した」ということに。
「我々ヒトはどこから来たのか」という問いに対してのダーウィンの答えが、「猿から進化した」なのですが、この「猿から進化した」ではあまりにもキリスト教の教えからかけ離れています。僕としては、地動説以上のインパクトがあるのではないかと。
だって、地動説が問題にしているのは周りの環境です。地面が動いているかどうかであって、いかに身近にある地面の問題とはいえ、我々そのものではありません。それに対して進化論は、直に我々人間に対して、です。「自分たちは何者か」という僕らの根源に関わる問いなので、それまで「神によってつくられた」と信じようとしていたものが、「実は猿からの進化でした」となっては、キリスト教信者が「神への冒涜だ」と怒ったとして不思議はなかったのだと思います。
ダーウィンも、「重要なのは問うことであり、答えを急ぐことではない」と格好いいことを言っていますが、ホンネとしては「教会から火あぶりにでもされはしないか」とドキドキで、それゆえに発表を遅らせる、自分を納得させる口実だっのではないかと。
そういえば、最近では副業が流行っています。副業家も都合よく解釈すれば、この「重要なのは問うことであり、答えを急ぐことではない」の実践者と言えます。
副業家とは、僕の感覚では、起業家への過程です。副業家のほとんどは、「うまくいけば起業家になりたい」「今は副業してるが、軌道に乗れば起業家として一本立ちしたい」と思っていることでしょう。
けれど世の中はそんなに甘くなく、なかなか一本立ちできるまでには至っていない。だから副業家をしている。副業家とは、「起業家になれない自分」を常に見つめていなくてはならないのです。
では「副業家とは起業家よりも劣っている存在なのか」というと決してそうではなく、ものは見方次第です。なかなか一歩踏み出せない状況を「勇気がない」と見るか、「慎重だ」と見るかの違いと一緒。
副業家は、常に問うている存在だと言えるのではないでしょうか。安易に答えを急がず、向上的に上を見ている存在。出した答えに納得せず、その答えを最終的な答えとせず、なおも「さらなる良い答えはないものか」と問うている存在。
副業家は起業家を目指していて、その過程で「副業家」という立場に甘んじているのですが、その甘んじている立場が副業家としての起業家にはない強みになります。
起業家になってしまえば、「自分はこう思う」という答えを出すことになります。もちろん、起業家としては「いや、自分は起業家になって一本立ちしたけれど、自分の答えに納得せず、常に問いている」と言うかもしれませんが、その問いの深刻さは、副業家の比ではありません。
というのも、すでに答えを問題解決の方法の一つとして提示してしまっているのですから。
副業家は起業家を目指しているのですが、皮肉なことに、起業家になることで「問う」というモヤモヤから脱出してしまい、副業家ほど問うことができなくなってしまうのです。
マラソンも、走っている選手を見るのが楽しいのであって、走り終わってしまった選手にはそれほどスポットライトは当たりません。恋愛も、交際に至る過程が楽しいのであって、ゴールしてしまっては恋愛の醍醐味は終わったことになります。プラモデルも楽しいのは作る過程であって、作り終わって飾ることではありません。
重要なのは問うことであり、答えではないのです。
ダーウィンの言葉を、問題解決の答えを出してしまった起業家と、問題解決に向けてのステップの途中である副業家に応用してみました。問題を晴らすために悩むのですが、悩んでしまうと醍醐味が失われるという、なんとも言えないジレンマですね。
フロイトの無意識が、芸術家のインスピレーションに影響を与えた
本文ではフロイトの無意識という概念が、芸術に影響を与えて、シュールレアリスム(超現実主義)を生んだことが書かれています。
「芸術家は意識の検閲をぶちこわしてことばやイメージを解き放つ」のであって、それがインスピレーションです。
僕もコラムを書く時に、無意識で手が動いている時に、結構いい内容の文章が書けると思っています。論理構成をアレコレ書きながら考えて、「ああでもない、こうでもない」と悩みながら書いているよりも、オートマチックに指がキーボード上を動いているときのほうが、ペンが進みます。書いた内容にも深さを感じます。
思うに、論理構成で悩んでいると、論理をはっきりさせたいが為に浅い考察しか表現できなくなるのではないと思うんです。深い考察を文面に表現するには、論理構成がおぼつかない部分も書かなければならなく、論理構成を重要視すると、深い考察を表すことができない。深い考察は論理構成がしっかりとしていないことが多いので。
論理構成で悩まず、心のおもむくままに指が動いてくれれば、深層心理にあるものが指をとおしてキーボードを叩き、文面に表れやすいのだと思います。
ホンネを抑圧せず、「世間的にはこんな答えが良いのではないか」とか「こんなことを書いたほうが体裁がいいのではないか」なんてタテマエを考えず、できるだけ素直な心境を書くことで、深い考察が表れるし、そこで出てくるのが個性なのではないかと。体裁を気にすると、一般的な解を出さざるを得ないし、そんな一般的な解をだしたところで独自性もないので、あんまりわざわざ書いて表現する意味が無いのではないかと。
まあ、何が深層心理なのかっていうのも問題なんですけどね。結局は「何が深層心理なのか」に客観的な答えがあるわけではないので、どれがホンネなのかを決めるのも自分自身になります。そこには自分にとって都合のいい基準が存在していて、自分勝手な解釈で何がホンネかを決めるしかありません。本質とは、自分にとって都合のいい解釈でしかないので。
何が本質か、どれがホンネか、何が深層心理か、がわからないので、インスピレーションはコントロールが難しいです。いつ来るかわからず、いつ来るかわからないものに対して自分から手を伸ばそうと試行錯誤することになります。
無意識とは決してコントロールできるものではないのですが、いざそれが降りてくると、芸術にとってこれほどない見方になります。なるほど、文章を書くのとシュールレアリスムは似ているのですね。シュールレアリスムに対する見方が変わりました。
まとめ
というわけで、「ソフィーの世界」の下巻を読んだ感想でした。下巻から、現実と本の世界のオーバーラップが顕著に表れてきます。
ダーウィンの「重要なのは問うことであり、答えを急ぐことではない」は、副業家のジレンマに応用できます。
フロイトの無意識の概念が芸術に影響を与えてシュールレアリスムが生まれた、というくだりは、僕が文章を書く手前、よく理解できます。
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