「葬式ごっこ」八年後の証言 〜 子どもの非行を防ぐためのブックレビュー

2017.09.15 (金)

 

 

時代が繰り返されている部分

 

 

この本が発行されたのが1994年なので、20年以上も昔のことです。学校感や友達感など、驚くほど現代と似ていますね。やはり人間の悩みというのは、昔から大して変わっていないのでしょう。どんなに経験しても、歴史は同じように繰り返していくのでしょう。

 

 

例えば、まずはいじめの教訓がなかなか活かされない部分。鹿川くんの事件の前にも、いじめが全国的な問題になっていることがあったそうです。それなのに、現在進行形で起こっているいじめを止めることができない。

 

 

今でもいじめ事件があるたびに、「過去の教訓が活かされていない」なんて報道されていますが、昔から何回も「教訓が活かされていない」ことの繰り返しのようです。

 

 

次に、「なんで学校に行くのか、誰も考えない」という部分。これは学校教育に対する不安だと思います。「ここまま敷かれたレールを走っていいのだろうか」「どこかこの競争社会はおかしいのではないか」。

 

 

この頃から、進学を前提とする学校教育に対する猜疑心があったのだと思います。このころは日本経済がまだ順調な時で、「いい大学に入って、いい大手企業に就職して」という道が認められている時代だと思います。

 

 

ですけど、その中でもやはり敷かれたレールに対する不安や疑いがあったのでしょう。競争していい大学や就職先に進むことに対する疑いが出てきたのは、バブル以降だと私は思っていましたが、やはり私が子どもの頃から、みんなモヤモヤしたのはあったのですね。

 

 

最後に、「学校で世間を渡っていた」です。殺伐とした学校のクラスを表している言葉です。今でも報道などで「最近の学校のクラスは殺伐としている」「それはインターネットの広がりによるもの」などと報道されています。

 

 

ですが、インターネットが普及する以前から、学校のクラスはすでに殺伐としていたのです。インターネットの普及は、殺伐とした雰囲気を押し上げたものでしかありません。

 

 

結局は「最近の若者は」と同じなのです。今を生きる私たちは、今起きている問題が最近起きてきたことであり、「昔はそんな問題がなくてよかった」と、昔を懐かしみたがる傾向にあります。過去を美化しがちです。

 

 

ですがなんのことはなく、美化しがちな過去が嘘なのかもしれません。昔から日本の社会は、いじめの教訓を活かせず、学校に対する猜疑心があり、クラスには殺伐とした雰囲気があったのです。

 

 

情報化社会の広がりによって生まれた「現代の問題」ととらわれがちですが、社会に巣喰う昔からの問題なのです。

 

 

社会が前へ進んでいる部分も

 

 

本書を読んで、今と違うなと感じた部分ももちろんあります。少ないですが。まずはいじめの傍観者に対する視点です。今は、この本が書かれた時代よりも「傍観もいじめになる」という意識が強いと感じます。

 

 

「いじめを見ているだけで助けないのは、いじめられている側にとってはそれだけで辛い」という意識が、この時代よりは社会に浸透していると思います。

 

 

いじめを解決する方法

 

 

いじめる人間は少数で、ほとんどは傍観者です。いじめる人間もだって自分がのけ者にされるのは怖いので、傍観者全員を敵には回したくないわけです。ですので、「それはいじめだ」「そういうことはよくない」と、傍観者が声を大にしていうことが、問題を解決する方法になるのかと、私は考えます。

 

 

「いじめられる側」と「いじめる側」は当事者なので、自分たちの振る舞いや行動がどうなっているかは、わからなくなっているはずです。日常の範疇を超えているかどうか、遊びの範疇を超えているかどうかは、両当事者には判断がつかなくなっているのだと思います。

 

 

いじめる側はもちろん、いじめられる側にとっても、わからなくなります。「自分はいじめられている」と周りから思われたくないので、いじめる側と仲がいい瞬間だけを切り取って「自分はいじめられていない」と思おうとする傾向があるからです。

 

 

鍵を握るのは傍観者なのでしょう。いかに次のターゲットにならずに声をあげるか。次のターゲットにならないような風潮に持って行くのも傍観者次第です。いじめを止めようと声をあげるファーストペンギンがいて、それに追随するセカンドペンギンやサードペンギンがいて。

 

 

圧倒的多数の傍観者が、いかに先導するかが、いじめの解決に繋がるのだと思います。それを育むのは、リーダーシップ、それと正義感なのだと思います。うまく周囲をその気にさせるリーダーシップ、恥ずかしいことではない正義感。それが、傍観者の行動を促すのだと思います。

 

 

いじめの特徴

 

 

最後に、著者が見たいじめの特徴です。

 

 

・いじめは表面上、遊び、ふざけ、からかい、いたずらなどに見える。

・使い走りも要注意。いじめの表れであることが、しばしばある。

・いじめる側は、からかい、ふざけの対象にならず、使い走りもしない。

・中学生ではグループ内部のいじめが多い。男子では問題行動の多いグループに多いが、女子ではふつうのグループでも起こる。

・運動部の中でも、いじめは起こる。その場合、練習もいじめの手段になる。

・いじめられている子は、つらさを訴えない。本人が不名誉と思っているし、訴えたあとの報復も怖い。

・弱い子がいじめられているとは、限らない。いじめられて弱くなる。

・いじめられている子を励ましても、意味がない。それでがんばれるなら、初めから、いじめられない。

・いじめられている子に、ボクシングや空手を習わせても、解決にはならない。腕力よりシカトの方が強力だ。

・いじめられている子が、いじめを脱したら、別の子が標的になる。転校させても、同じだ。

・いじめは悪い。と説教しても効果はない。悪いことをしている意識がないからだ。

・いじめている側を指導しても、いじめは止まらない。下手をすれば、報復を生む。

 

 

 

 

 


 

 

 

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